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ことば ファッション

業界のレトリックほんま嫌い

3 years

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中垣:ちょっとさ、JINSでサングラスを買ってんけど…

みなと:へー。

松田:これでなんぼすんの?

Zoff 眼鏡 クラシック
Image: Zoff

CLASSIC (クラシック) – Zoff

中垣:5,500円にカラーレンズ代が3,300円かな。ただこれ、カラーレンズじゃない方が良かったなとは思ってて。

松田:はいはい。

中垣:なんかギーク感が欲しかって透明のフレームにしてん。それこそトム・サックスとかも着けてるけど、マッドサイエンティスト感というか…

トム・サックス
Image: 美術手帖

90年代よりブランドロゴやキャラクターといった現代の資本主義社会のアイコンを用いた、アイロニーとユーモアが共存するような彫刻作品を発表。そのなかに、「手づくりの既製品」をテーマに、プラダのシューズボックスを使用してつくった便器《Prada Toilet》(1997)や、手書きのエルメスの包装紙でマクドナルドのハンバーガーセットを再現した《Hermés Value Meal》(1997)など、ファッションをモチーフとした作品などがある。また、ナイキとのコラボレーションスニーカーでも知られるほか、近年では宇宙や茶道などをテーマに幅広い作品を手がけている。

Source: 美術手帖

トム・サックス – 美術手帖

c トム・サックスの椅子、無印で買えます

松田:てかこれ、よく見たらJINSじゃなくてZoffやねんけど笑

みなと:笑

中垣:あー、そっか。まあ個人的にはそこはどっちでもよかってん。それで透明の眼鏡ってさ、わざわざええやつ買うかって言われると…ちょっとあれやん?

松田:まあ分かるな。

EYEVAN 7285 782
Image: EYEVAN 7285

もうそろそろ誕生日なんで…はい

MODEL 782 – EYEVAN 7285

中垣:おれ、サングラスとかやとバッグの中にそのまま放り込んだりしちゃうから、おもちゃくらいの感じで使えるやつの方がいいなと思ってん

松田:うんうん。

中垣:それで昨日、「ちょっとサングラス買うわ」って言う彼女と一緒に眼鏡を見に行ったのね。彼女はとりあえずJINSとかでいいって言うからその辺を見て回ってんけど、なんかJINSはね、若い人には中途半端なデザインが多くて。

みなと:ふーん。

中垣:Zoffの方が若い人向けというか、今っぽい形が多かった気がする。

松田:まあそういうイメージはあるな。JINSってOLとかサラリーマンとかっぽいよね

JINS Airframe Hingeless
Image: JINS

これ、プラスチックのマイキータって感じで超好き

Airframe – JINS

中垣:そうそう。それでこれもZoffで見つけてんけど、これとかまさにタートのアーネルの形やんね。ザ・アメリカンヴィンテージって感じで。

松田:うんうん。

中垣:あとはキャッツアイっぽいのとかもあったね。それで彼女が買ってる横で、「そう言えばおれも透明の眼鏡欲しかったよな」って思ってこれをかけてみたら、思ったよりイケてて、しかも5,500円で、セルも結構分厚い

松田:うん、これ結構厚みあるよね。

中垣:まあリベットがリベットじゃないっていうのがね…これは買ってから気付いた笑

松田:この外側から刺さってるリベットさ、本来であれば生地を突き抜けてヒンジの金具までつながってるはずやねんけど、飾りやからセルの表面に乗ってるだけやねん。

みなと:あ、そういうことね笑

中垣:もはやリベット無しの方がモダンで良かったんじゃないかとまで思うけど、まあ作りも悪くないと思うし…それにこれ、ちゃんとしたやつ買おうと思ったら数倍するねんで?

みなと:笑

松田:しかもこれ、ヴィンテージと違って設計もなかなか絶妙でさ、レンズ間の距離がちょっとあるデザインやから、鼻パッドがその分ちょっと盛られてるよね。

みなと:ほんとだ。ちょっと内側に入ってるね。

中垣:ほんまや、なるほどね。やっぱ結構文句ないでしょ?

松田:うん。まあ強いて言えばね、キーホール周りがエッジ立ってない感じは気になるけど

中垣:まあ確かにな。でもエッジ立ってるのが良いかと言うとさ、別に元ネタ的にもこんな感じではあるやん。

松田:あー、そうなんや。おれその辺あんま知らんからな。

メタルフレームしか勝たん

中垣:元々これくらいトロッとしてる感じではあるねん。ただまあちょっと横幅が広いから、ほんまにお気に入りが欲しいなら買わないサイズではあるね。これで46□24とかなんかな。

Image: commmon

松田:確かにちょっと広いね。

みなと:僕が今かけてるので21とかだもんね。

中垣:ほんまは44□24か46□22くらいがベストやねんな。それくらいじゃないと目がレンズの中心にこないねん。

中垣:でもやっぱこれ透明のレンズの方が良かったと思わん? ちょっとヤンキーっぽくない?

松田:うん、なんか倉留みたいやね

中垣:やっぱちょっと反社っぽいよね。

別に倉留がヤンキーとか反社ってわけじゃないぜ

中垣:だからまあ、夏の間はサングラスってことでこのまま使って、冬になったら…捨てるか透明に戻すかやね。

松田:笑

中垣:でもおれね、これ買って思ったよ。「ヴィンテージのアメリカの~」とか、嫌な世界やなって

松田:まあそんなん言い出したらね、ヴィンテージなんてもっと手前で大嫌いやで。

中垣:でもそれこそタートとかだってさ…なんかね、これの元ネタはさっき言ったアメリカのヴィンテージやねんけど、これが高い上にまじで作りが悪いのね

みなと:あー、うんうん。

TART OPTICAL
Image: ポンメガネweb

TART OPTICAL – ポンメガネweb

中垣:で、それを日本生産で復刻してるやつもあるねんけど、それもたいして作りは良くなくて、それで4万円くらいはするねん。

みなと:はいはい。

TART OPTICAL ARNEL – TRIPLE

中垣:「それを買うのもなぁ…」みたいな気持ちになっちゃったね。だってZoffのこれだってさ、素材は普通にアセテートやん?

松田:うん、そうやな。

中垣:それがヴィンテージやったら“““アメリカンザイル”””やったりするわけ。なんやねんそれ。

松田そういう固有名詞を持つ、なんでもない樹脂がおるねん

みなと:へー笑

本当に長く、ネチネチと書きました。ここまで躍起になって調べたのは、分からないことへの探究心もあります。ですが、それ以上にアメリカンヴィンテージの高騰具合と、素材が良いとすることへの警鐘が出来ればという2つがあります。

Source: Bourbaki

アメリカンヴィンテージの素材 – Bourbaki

中垣:どっかで成分分析しろよとしか思われへんよな。それが本物の証っていう、よく分からん世界やねん。

みなと:笑

中垣:だから別にZoffのこれでいいわけ。まあおれ的にはサイズが合ってへんから良くないねんけど、それでも同じ仕様でフルオーダーしたら10万円もあれば作れるわけ。じゃあもうそれでいいやん?って。

みなと:うん。

中垣:フレンチヴィンテージとかもね…まあアメリカンヴィンテージよりは作りはいいねんけど、それでもこのZoffの方がもっと良いわけ。

松田眼鏡は現行の日本製が一番良い、明白過ぎる事実やね

みなと:笑

中垣まあ道楽としてならいいと思うねん。確かに物は唯一無二やし、古いセルロイドの角が取れてる感じとかも確かに魅力的なわけ。

松田:ただ、それが排他的に良いという態度を取るのはあかんよな。「おれはこれがしっくりきてる、大好き、大切」って言っとけばそれでええねん

中垣:ストーリーが欲しいのなら自分のストーリーでいいやん? 「小さい頃から使っている箸を大事にしてる」みたいな、そんなんでええねん。

松田:うんうん。

中垣:そっちの方が大事なはずなのに、値段が高いとか他人もそれがいいと思っているとか、そういうことによって価値の一般性を担保したがるやつがあまりに多過ぎる。まじでどうでもいいよな。

Source: commmon

c ヴィンテージよりカッティングエッジ

中垣:そもそもさ、ヴィンテージの眼鏡とかってファッションとは関係がないねん。目の前まで来ないと分からへんもん。

松田:あー、そうそう。そういうことやんな。身体全体が視界に入らない距離まで寄らな分からへんもんはファッションじゃないねん

60年代のシェーヌダンクル? 別にどうだっていいです

c シェーヌダンクルについて学ぼう

中垣:そうやねん、ほんまクソやんね。しかもそれについて考えてたときにさ、藪内がストーリーで、あいつの嫌いな映像作家みたいなのが出てる広告を上げてて…

松田:はいはい。

中垣:それが「My 501」みたいなノリのやつやってんけど、藪内が言ってたのは「501を履いて広告に出るっていうことは、それはキムタクってことやからな」「それを自覚しろよ」って。

松田:笑

中垣:それでその映像作家みたいな人のコメントが「僕にとっての501は、履きこなせるようで履きこなせない、お前はまだまだだと言われているような憎らしい存在」とか言ってて。

松田:あたま悪いなぁ笑

中垣:まあ黙れって感じやん? それでなんか…501なんてただの既得権益っぽいというか、「501が良い」って言うときのその501ってどれ?というか。

松田:分かる分かる笑

中垣501っていう言葉によって一意に決定されるものなんて何もないし、それはさっきのヴィンテージもそうやねん。「私にとっての501って…いや、ジーパンですけど?」って話やん。

みなと:あー…笑

中垣:一番有名なジーパン、それだけ。なのに、時代によって仕様もシルエットも全然違うそれらを全部ひっくるめて「やっぱ501だよね」って言っちゃうような業界のレトリック、ほんまに嫌い

みなと:なるほどね。

中垣:それでその501の話がね、このZoffの眼鏡と妙にリンクしてん。アメリカンザイルとかヴィンテージのタートとかね…ファッション業界のそういうところはほんまに嫌い。

松田:うん。同じ理由でおれは、時計もゴローズも嫌い…というか、それらを好きって言ってるやつを好きになれない。

中垣:確かにゴローズとかもね、まあ物はええんやろうけどね。

松田:せやねん。ゴローズって実際すごくええ見た目をしてるし、そもそもシルバーの羽っていう文脈を作って、それを今でも様々なブランドがやってるっていうのはすごいことやねんけど…

フェザーなら90年代のリンチシルバースミスか、今なら山口学のやつが好きかな

矢野 達也 – Instagram

山口学 / Manabu Yamaguchi – Instagram

中垣:うん、分かるよ。あれは山都のそばと同じというか、物的には全然愛で得るねんけど、その文脈とかはどうでもいいからね

松田:そうそう。

六本木ヒルズ 蕎麦前 山都
Image: 六本木ヒルズ

好きだから行くんだけど、場所柄もあって行くたびにイキった気持ちになりそうになるんですよね。これ分かります?

蕎麦前 山都 – 六本木ヒルズ

中垣:それでゴローズにしたってさ、例えば最初にそれを良いと思った人は、普通に物として愛でたんやと思うねん。ただそれがどんどんオーソライズされていって、いつの間にか文脈だけで「これが良いんだよ」とか言うやつが出てきちゃったっていう、まあ別によくある話ではあるねんけどね…

藤原ヒロシ ゴローズ
Image: fujiwarahiroshi/Instagram

Hiroshi Fujiwara – Instagram

次回は「エルメスもクロムハーツもなんかもう違うんだよな」です。

c 次はゴスい感じのジュエリー着けまくるわ

2021年5月16日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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