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したいこと ファッション 生きづらさ

頭で考えるだけじゃ作れないもの

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kotohayokozawa ロゴ

横澤琴葉
ファッションデザイナー

中垣が大学時代にインターンでお世話になったブランド「kotohayokozawa」のデザイナー。
かつては手を動かして物を作ることが大好きだったのに、頭でっかちになり過ぎたせいで何も作れなくなってしまった中垣や松田にとって、多くを学ぶべき相手なのである。

kotohayokozawa.com

kotohayokozawa – Instagram

kotohayokozawa – Twitter

中垣:いろいろ聞きたいねんけど…コトハさんって、かつて何者かになりたいと思ったことってあります?

コトハ:それがないんだよねー。

松田:まあなさそうな喋り方してますよね笑

コトハ:それどういう意味?笑

中垣:今のは彼的には褒め言葉です。

コトハ:あ、ほんと? 嬉しー。でも実際「この人みたいになりたい」みたいなのは…まあ顔面の話ならあるけどね笑

第14回 女性が選ぶ“なりたい顔”ランキング – ORICON NEWS

松田:“““ファッションデザイナー”””になりたいみたいな、そういうやつは…まあなさそうですよね笑

コトハ:あー、でも川久保玲とかはすごいなぁと思うよ

これ、確か川久保玲の座右の書

アゴタ・クリストフ(2001)『悪童日記』ハヤカワepi文庫
Image: Amazon.co.jp

アゴタ・クリストフ(2001)『悪童日記』ハヤカワepi文庫

川久保玲 – Wikipedia

WEB特集 コロナ 川久保玲が語ったこと – NHKニュース

中垣:笑

松田:それもたぶん違うやつなんですよね笑

コトハ:まあそうだよね。川久保玲になりたいって言ってる人って、見た目からあれになっちゃうもんね。

中垣:笑

コトハ:だから川久保玲とかTOGAの古田さんとか、あとはちょうど展覧会やってる石岡瑛子とか、そういうすごいと思える人はいて…でもそういう人になりたいというよりかは、こういう人がいるから自分も頑張れるとしか考えないかな

TOGA 古田泰子
Image: SSENSE

TOGAのボーダーレスな創作 デザイナー古田泰子が、二択を超えたハイブリッド美学を語る – SSENSE

石岡瑛子展 東京都現代美術館
Image: 東京都現代美術館

石岡瑛子 – 東京都現代美術館

松田:うんうん。

コトハ:だってもう違うじゃん、顔から別人だし。

松田:笑

コトハ私は生まれ持ったこれを最大限に活かせるものを探してるだけだから、フォーマットに従うとちょっと違うよね。はまらないというか。

松田:うんうん。シンプルに無理ですよね。

今日のライフハック
自分を他人に照らさない

コトハ:そう。で、私は芸人さんがすごく好きなんだけど彼らの何が尊いかって、自分の生まれ持った見た目とか声の高さとかでやってるわけじゃん? そこと向き合っている人達だからこそ出てくるおもしろさみたいなものはあると思うのね。

中垣:確かに、確かにな。

コトハ:私はそういう人が好き。何かになろうとしている人はおもしろくない笑

人は何か「になる」前に、既に何か「である」のです

c やっていることが「したい」こと

中垣:その話で言うと、例えば芸人は「“““芸人”””になりたい」っていうのが最初にあって、それに対して微調整を繰り返して適応をしていくとも言えると思うんですけど、コトハさんの場合、そういう「“““ファッションデザイナー”””になりたい」みたいなのがあってそれに対する適応として今があるのか、あるいは Just Do It の積み重ねというか…作っているのが好きだから半ば必然的に今があるのかという話になると、どちらかというと後者なのかなと思うんですけど、どうですか?

コトハ:必然的…まあそうだね。結局、まず最初に発表してレスポンスがこないと自分が何者なのかも分からないから、まずは作品を出して、それに対するレスポンスに「なるほど」ってなって、それを繰り返しているうちになんとなく分かってくるものがあって、それは自分にとっての持ち味の場合もあれば直すべきところの場合もあると思うけど…

松田:はいはい。

コトハ:そこで「もっとこうするべき」っていうのが出てきても、それに到達できるかは分からないから…結局はやっていくしかないよね。うーん、なんて言ったらいいのか難しいけど

松田:うんうん。

コトハ:だって、最初から自分のことが分かってて「私の持ち味はここなのでこうします」とか言われてもって感じじゃん。

中垣:「自分はこうだから」とか「お客さんはこうだから」が先にあるというよりは、まずはトライ…というか単純に Do して、そこから何かを考えるって感じですよね

コトハ:うーん、まあ基本はそうだね。

中垣:なんか、それこそkotohayokozawaでインターンしてたとき、その感じが全然分かんなかったんですよ。

コトハ:あー…

中垣:「とりあえず作ってみよう」みたいなのがどうしても分かんなくて。「これでこう作るとその先でこうなるから…いや、いったん切るのやめよう」みたいな、僕はそういうタイプなんですよ。

c 若いうちしかできない

コトハ:うんうん。

中垣:最近になってやっと、考える前にやってみることを意識してはいるんですけど、そこの苦しみは今でもやっぱりあって。

松田:分かるわぁ。

中垣:コトハさんの場合、理論から入って物事に取り組むみたいなことは今までなかったんですか?

c 視野狭窄インテリピープル

コトハ:これは能力の問題なんだけど、でも私の場合はあんまりできないね。

中垣:できないんですか?

コトハ:なんかね…諦めじゃないけど、自分の思ってたのと違うのを受け入れる広い心みたいなのが自分の中にあるんだよね

中垣:いや、それがすごいよなぁ。

コトハ:「これ思ってたのと違うじゃん…」ってなっても全然いいんだよね。仕方がないというか、むしろ違った方がいいの

松田:はいはい。

コトハ:想定したようにやって想定した通りの結果になったらそれだけの経験しか得られないけど、想定した通りにいかなくて初めて、どこでどうなったとか、それで自分がどう思ったとか、どうしたらよかったのかとかが考えられて…そっちの方がたぶんオリジナルなのよ

松田:いやー、うんうん。そういうスタンスの方が、結果としてはより生々しいリアリティが作ったものに反映されますよね。

コトハ:そう。その生々しさを追求すると、偶然性は受け入れていくしかないんだよね

中垣:そうですよね。

コトハ:もちろん偶然は受け入れつつ、それを感覚だけじゃなく知識に照らしながら賢くやっていける人が本当にすごい人なんだとは思うんだけどね。本当に感覚だけでバチーンっていっちゃうと、結局前回と今回を比べることができなくて、本当に破天荒なだけのやつみたいになっちゃうから、それはそれで響かないんだよね。

松田:うんうん。

コトハ:そういう感覚も大事にしつつ、基本的な知識とかはちゃんと持っていて、地に足着いてるって感じじゃないとね。

松田:破天荒なだけの人って、きちんと想定をすることもなしに勢いだけで変な方向に行っちゃって、でも当初の想定がないから反省もできなくて、それはそれだけで終わっちゃうって感じですよね。

コトハ:うんうん。

松田:だから理想は、偶然とかによって最終的な結果が当初の想定からずれたとき、どうしたら想定通りになったんだろうっていう反省はきちんとしながら、とは言え結果は結果として受け入れることができればいいですよね。

コトハ:そう、そうそう。

松田:で、それができないのが僕らなんです。自分の手で何かを作るのが本当にできないんです

納得できないから同じ物何回も作って素材を山ほど消費します

コトハ:うんうん。

松田:それがなんでかって…最初にゴールを描いてそのための手順をきっちり組むんですけど、そもそも想定さえできていない何かもあれば偶然起こるトラブルもあって、当初の想定通りにゴールすることはまずないわけですよ。

コトハ:うんうん。

松田:このとき、なまじ当初の想定がしっかりしてるから、そのギャップにどうしても耐えられなくて…

中垣「やーめっぴ」ってね笑

松田:そう、その結果何も作れなくなりました。

中垣:元々は手を動かして何かを作るのはすごく好きだったはずなのに…

松田:勉強し過ぎたせいでバグった笑

中垣:そこを今になって必死で取り戻そうとしてるんです。

コトハ:まあそれを取り戻すのが最適なことかは分からないけどね。私はそもそも「思ってたのと全然違うんだけど何これおもろwww」って性格だけど、「え、それはまずいでしょ」って思う人も普通にいるとは思うし。

中垣:まあまあ。

コトハ:ただ確かに、事前にちゃんと計画を立ててやるタイプの人は、最終的なアウトプットが計画からずれてるのにそれを見せるしかない場合、「ほんとは違うんですぅ…」ってなると思うんだけど、でも自分の作った物に責任を持てるのは自分だけなんだから…

松田:いや…うん、偉過ぎん?

このサイトのコードがぐちゃぐちゃなのほんと耐え難いんだけど

コトハ:誰だってプライドはあるから、自分の失敗を出すっていうのは辛いとは思うの。それが自分の全てだってその場の人に思われるのは確かに嫌なんだけど、でもやるしかないっていう。

大切なのは、他に対してプライドを持つことでなく、自分自身に対してプライドを持つことなんだ。

他に対して、プライドを見せるということは、他人に基準を置いて自分を考えていることだ。そんなものは本物のプライドじゃない。たとえ、他人にバカにされようが、けなされようが、笑われようが、自分がほんとうに生きている手ごたえを持つことが、プライドなんだ。

相対的なプライドではなくて、絶対感を持つこと、それが、ほんとうのプライドだ。このことを貫けなかったら、人間として純粋に生きてはいけない。

Source: 岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫

c 岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫

松田:いやー、もうほんまそれやねんな。

中垣屁をこいたときに「…は? 知らんし」って言うんじゃなくて、「屁こいちゃった笑」って言って周りは爆笑みたいな、そっちの方が良いよねって話ですよね。

話の抽象度と高尚さをともに下げる最悪のまとめ方である

コトハ:そうそう笑

そうなんだ…

松田:僕ね、大学一年生のときに2~3日だけYUIMA NAKAZATOでお手伝いをさせてもらったことがあるんですけど…

YUIMA NAKAZATO
Image: YUIMA NAKAZATO

YUIMA NAKAZATO

コトハ:うんうん。

松田:そこでも、僕のしてる作業も全体でやってることも、仕上がってみると「おいおい最初に言うてたのと全然ちゃうやんけ…」みたいなことが頻発するんですよ。

コトハ:笑

松田:でも、それはもうそれってことで現場は進行するんですよね。今なら分かるんだけど、当時はあれが受け入れ難過ぎて。

中垣:おれもkotohayokozawaで思ったよ。DMをデザインしたとき、ロゴの位置が微妙なまま「これでいいよ」って言って印刷し始めて、「まじかよ…」とか思ってるうちに、それがもう何百枚もプリンターから吐き出されてくるわけ

コトハ:笑

中垣:でも「そういうとこだぞ中垣」って、今なら思えますけどね。

コトハ:そういう人が世の中にいるって知られたのは、お互いによかったよね。「え、細か…」とか思ってたもん。「モンスタークレーマーじゃん…こっわ」って。

中垣:笑

コトハ:「私がいいって言ってんだからいいじゃん?」って思ってた。

松田:笑

コトハ:そんなのいちいち気にしてたら、生きていくの普通にしんどそうだし、毎回理論武装してるの大変そうだし、なんか大丈夫かなこの子…って

中垣:笑

2021年1月23日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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kotohayokozawa somebody
Image: @kotohayokozawa/Twitter

2015年にスタートした、即興的な製作による1点ものを中心に展開するウィメンズブランド「kotohayokozawa」。
2019年にデビューした写真の「somebody」は、「あるもので作る」というルールのもとサンプルやB品を再利用した素材のみを用いたラインで、ブランドのアーカイブやリサイクルアイテムを用いたトップスや、ショーで使用した背景のターポリン素材を用いたトートバッグなどを展開する。

kotohayokozawa – Twitter