みなと:物の価値の話をしたくって。例えば松田の銀のブレスレットは分かりやすいけどさ、それ原価とコストなんて大したものじゃないんでしょ?
松田:せやで。
みなと:じゃあ例えば原価とコストは1,000円で実際に売られているのが10,000円だとします、とすると、この価格ってなんなんですかって。
松田:はいはい。
みなと:そういうブレスレットだと基本的には定価が先に決められててさ、その価格で書いたい人だけが買ってるからそれはそれで別にいいけど、鉄の商売は買い手がつかないと困るから価格がフィックスされていないわけよ。
松田:はいはい。
みなと:価格が変動して需要と供給が調整されるわけだけど、そうなってくるといよいよ、物の価値ってなんなんだろうって。
松田:なるほどね。
みなと:この問題に最近になってまた直面していて…
松田とみなとは物の価値について一生悩んでいます
みなと:コストが安いのなら安く買わせろよっていうのはおかしい…でもだからと言って、この価値はこうだからって説明された上でならいくらでもいいというわけでもないし…
松田:うんうん。
みなと:鉄を考えるさ、価格は変わっても物の使用価値としては変わらないわけ。10年後とかならともかく、この一ヶ月二ヶ月では使用価値は全然変わらないのにさ、価格が100ドル違ったりするわけ。なんなのってなるじゃん。
松田:なるほど。
みなと:僕たちは何を物の価値だとみなして、日々買って、使ってるんだろうって。それが最近、ちょっとよく分かんなくなってきた。
みなと:例えばその眼鏡はさ…いくらで買った?
松田:10万円。
みなと:それが例えば今は3万円で売られていたらさ、使い続ける?
松田:それは使い続けるよ笑
みなと:でもそれは使用価値として意味があるからじゃん。じゃあ例えばそのブレスレットが今は3万円なら…?
松田:あー…いや、おれを例に挙げるのはよくない気がする。たぶん3万円でも…うーん、いや、着けると思うな。おれはアイアムレジェンドになってもジュエリー着けるつもりでおるから。
みなと:なるほどな笑 ちょっとお話が違うかもしれないな笑
松田:でも一般論としては分かるよ。
みなと:まあだから何って話ではないんだけど。とにかく物の価値が最近の個人的なテーマなんだよ。
松田:そこからスムーズに繋がる話かは分からんけどさ、さっきも言ったように例えばこのブレスレットが20万円でも3万円でも、別におれは幸せに着けていられるわけよ。
松田:そこは大丈夫やねんけど…例えば、「君の眼鏡は10万円だけど、最低限の眼鏡はJINSに行けば5,000円で買えて、残りの95,000円があればあんなことやこんなこともできたんじゃない?」って言われると、なんかだんだんよく分からなくなってくるねんな。
時間貯蓄銀行のセールストークを思い出した
ミヒャエル・エンデ『モモ』岩波書店→
みなと:あー、分かるわ。
松田:お金によって2つの独立した価値が接続されちゃって、そこで辛くなっちゃうというか、「そんなん比べられないよ🥺」ってなっちゃう。
みなと:なるほどね、確かに。
松田:最近のおれにとって物の価値が主題になるのはそういうときかな。そうやって全ての選択肢が並列になっちゃうとさ、それこそ何を選択すべきか分からなくなって硬直しちゃう感じがある。
みなと:でもそれはすげえ分かるわ。
松田:何にもお金が払えなくなる。
みなと:すげえその通りだわ。僕にとって、物を買うってそういう意味でハードルが高くて、途中でなんか分かんなくなっちゃう。
みなと:例えば、このレモネードとマキアートを比べるとレモネードの方が価値があると思えるからマキアートよりも高い値段を払ってもいいっていうのなら分かりやすいけどさ、このレモネードに600円の価値がありますかって聞かれると…
ちなみにオーバカナルではリモナードって言わないとオーダーが通らない。さすが銀座のパリ
松田:分かる、そういうことやねん。
みなと:は?みたいな。600円って言われることによって、自分にとっての価値を日本円で一律に体系づけなくちゃいけなくなるんだけど、それによってすごい苦しんでる気がする。
松田:せやねんせやねん。おれの言っていたのもまさにそれでさ、自分の見出している価値をお金による価値体系にきちんとプロットしなければいけないような強迫を感じるねんな。
みなと:そうだね。でもじゃあ逆に物々交換にしますかってなると、それはそれでしんどい世界なわけじゃん。
松田:「あ、それなら全然お金でいいです」ってなるな笑
みなと:そうなるとやっぱりお金の問題は避けられなくて…困ったことだよね、本当に。
2020年3月13日
Aux Bacchanales 銀座