中垣:アーティストの支援って必要なの?って。若林の新しいサイトで、若手音楽家の支援がロンドンでは進んでいるってあって、「へー」って読んでてんけど、なんか、そんな必要ある?って思って。
*若林さん、な。
「日本は遅れすぎ」あらゆる格差と闘い、誰もが得をするロンドンの音楽家サポート方法論 : New School of Music→
中垣:支援されなくなったからって誰も音楽を作らなくなるとは思わないし…
松田:うんうん。
中垣:「アーティストの支援は大事なんだ」って、特にアート界隈の人がよく言うけどさ、なんで必要なん? 「いい音楽を作っている人が今後も続けていけるために、彼には収入が必要なんだ」って、いや分かんねんけど、でも収入がなくなって音楽を辞めるのなら、どうぞ辞めたらいいじゃんって思う。
松田:うんうん。
中垣:絶対に、ぜーったいに、そんなんなくても音楽作るやつはおるし、絵を描くやつもおるから。何がどうなっても。
*結果に期待して何かに取り組んでいるようなやつはどうせ一流になんてなれんよ。
松田:岡本太郎な。
岡本太郎『自分の中に毒を持て』青春文庫→
中垣:そう笑 絶対おんねんって。で、例えばアートの話で、日本のアートビジネスは規模がすごく小さくて…みたいな、そういうビジネスの視点で投資をすべきだって言うのならそれはもちろん分かる。アートって結構コンテクストゲームやし、規模が大きくなればメリットがあるっていう話はあるんだけど…
松田:動機に直接介入すべきではないよね。
中垣:そうそう。だからまあ、アートはちょっと別かな。現代アートの話になるとそれは違うってツッコミがいろんな点から出てきそうだけど、個々のアーティストの動機の話をするなら、お金がなくて作らへんねんやったら辞めたらいいやんって。
松田:うんうん。
中垣:特に音楽に関しては、おれはほんまにそう思うな。支援なんていらん。ムーブメントなんていらんし。友達の友達にいい歌を歌うやつがいるらしいから今度歌ってもらおうみたいな、そういう世界で全然好きになれるし。
松田:いやーしかし、お金がなくてやらないならほんま辞めてまえばええよな。
中垣:そうやねん。いや、ほんまそうやねん。
松田:それがどうしても大事なことなら、何としてでもやればええねん。ちょっと話は違うし、様々なアレをはらむねんけど、おれがフラフラ放蕩していることに対して批判的なことを言うやつがおるのがよく分からんねんな。
松田:じゃあてめえ、実家が仕送りしてくれるって言ったら会社辞めれんの?ほんま?社会的なアイデンティティゼロになるで?みたいな。しかもなんならおれは、嘘に嘘を重ねてその支援を引き出してるしな。やりたきゃてめえもやれよって話。
中垣:そうやんな。わりとその…頑張ってるよね笑
松田:これはこれで大変だからねって。実家が特に太いとかじゃないもん。
中垣:そうやんな。程度の問題はあれど、松田が実家に余裕がなかったら今と同じことはしないかと言うと、別にそうじゃないもんな。
松田:そうそう。だから結局やりたきゃやれよって話やし、やっていない限りにおいてはその程度やでって。黙って今まで通り平凡に生きてろよって。
中垣:せやねんせやねん。金がやらない理由になるってちゃんちゃらおかしくて。金がないなら、じゃあ稼いで貯めればいい。
松田:そう、それ込みのやりたいじゃないの?って。
中垣:お金がないって言うなら、じゃあ今すごく働いて貯めてるとか、そういう話が欲しいわけ。お金がないからやーめっぴって言うなら、じゃあそれは結局やりたくなかったんでしょって。
松田:やっている限りにおいてしたいわけだし、していない限りにおいては結局やりたくなかったんだとしか言えないよな。
酒井:さっきの支援の話、別にお金を稼ぐことが簡単になるのならそれはいいことなんじゃないですか? 支援のプラットフォームがあって、そこに頼めば楽にお金が手に入るっていうのは。
中垣:うーん…例えば、まじでやりたいけどお金がないから準備せなあかんと、でもどうやらお金がもらえるらしいと、じゃあ一年後の算段やったけど明日からできるね、とかやったらええと思うねん。やねんけど、お金がなくて今はできないからそのまま諦めようっていう人が、お金がもらえるらしいからやってみようかな、みたいな、それはちょっと違うと思う。
松田:そうそう。コストとリスクを払わずに済むのならやるって、なんじゃそりゃ。
酒井:別にリスクが下がるだけで、人生において音楽とかアートを選ぶのってそれなりにリスクじゃないですか。30年前と比べてインターネットがある今はあらゆる障壁が少ないみたいな、そういうグラデーションのひとつとしては別にいいんじゃね?って思っちゃうんですけど。
中垣:まあ多様性みたいな話なら全然いいと思う。そういうのをきっかけにやってみようかなって人が出てきて、世の中の刺激が増えるならそれはいいことやと思う。ただ、そういう人が好きかと聞かれると好きではない。
中垣:どっちかというとそういう話かな。社会にとってそれが善かというよりかは、おれはそういう人とか社会を好まないって話。
松田:別に支援なんて、誰にとっての権利でも義務でもないよな。それにやっぱりインターネットの話はちょっと別ちゃう? インターネットはいずれにせよ既にそこにあるものやもん。
*インターネットは結局のところ、便利な手段ではあってもそれ自身目的ではないしな。お金が貰えるならアートやりますって、それ手段と目的がごっちゃになってるでしょ。
中垣:そうやね。だから例えば、アートの補助金がインフラと化したら別にいいと思う。個展の開催にあたっては国が一律10万円補助します、みたいな。それは別にいいと思う。
2020年2月21日
Aux Bacchanales 銀座