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思索 生きづらさ

他人に「してほしい」人達

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松田:例えばおれが彼女と同棲していて、共働きやとするやん。ほんで彼女は夜勤があって睡眠が不規則やとする。でもおれはロングスリーパーで、朝は早くに起きて夜は早くに寝たいと

なつき:うん。

松田おれは23時以降も起きているのをずっと続けるとどうしても調子が悪くなる、だから23時には寝室に行きたいねんな。23時以降は寝る以外の目的で寝室に入ってきてほしくない。

松田:これに対して例えば、「でもせっかく一緒に暮らしているんだし、私は明日夕方から夜勤だからもう少し遅くまで一緒に起きていたい」って言ったとするやん

*以上、例えばの話です。

なつき:うん。

松田この問題はどう解決されるべきかって話。そこでおれとしては、例えば24時までならまあ譲歩し得ると。すると彼女も、まあそもそも生活のサイクルが違うし仕方ないかな、でも毎回とは言わないけど週一、二回くらい夜更かしに付き合ってくれたら嬉しいな、みたいな。

松田:こういうふうにすれば、双方の当初の希望にはギャップがあったけど、お互いどこまでなら自分の効用を大きく損なわず譲歩できるかを確認して、ええ塩梅の落とし所を見出せるわけやん

松田:さらにこのプロセスの何がいいかと言うと、「おれはこう思うし、こういうことができる」っていうふうに話しているねんな。逆に彼女も、「私はこうしたいし、こういう譲歩ならできる」って話してるねん。お互いに自分とその行動について、責任を持って話しているわけ

なつき:うんうん。

松田これが不健全な形になるとどうなるか。おれは24時までなら大丈夫かなっていうのに対して、「でも私は一緒に起きていたい。私が起きててほしいって言ってるのにそれを無視するの?私の気持ちはどうなるの?」って言い出すねん

中垣:あー…

松田:つまり、自分の求めていることを所与の条件にしてしまっているねんな。で、そういう条件のもと天秤にかけるのはあなただよ、っていう態度をとるねん

なつき:いやー…なるほど笑

松田そもそもは二人の課題だったのに、自分は思考停止をすることでおれに丸投げしてまうねんな

中垣:なるほどね笑

松田:こうなると、「私がどう思うかはなんだっていいの? 自分に都合のいい方を選ぶん?」ってなる。いや、どうでもいいとかじゃないねんけど、それってそもそもフェアじゃないやん。天秤にかけて彼女の希望を切ったっていう見方はおかしいわけ

*物事を天秤にかけるときは、目的地に車で行くか電車で行くかというように、2つの選択肢が背反になっていないといけません。

松田しかも彼女は自分の希望を所与の条件として固定化してしまっているから、all or nothingで自分の希望を提示するしかないねんな。こうなると、おれがその希望をかなえるのはほぼ不可能やねん。

なつき:うーん。

松田これがおれの言う、他人に「してほしい」人達やねんな。本来なら「私はこうしたい」に始まっている自分の課題を、相手の行動に転嫁することで自分の課題ではないかのように装って、自分の望みを他人が叶えてくれるものとしてしか認識できない人達

Image: Amazon.co.jp

岸見一郎『嫌われる勇気』ダイヤモンド社→

今回のおすすめブックは間違いなくこの一冊です。ざっくり言うと、他人の期待を満たすために生きていてはいかんよ、という内容です。なぜこれがおすすめなのか、それは他人に「してほしい」人達はまさに、自分が他人の期待を満たすために生きているからこそ、他人にも自分の期待を満たすよう求めているからに他なりません。
1,650円はちと高えなというあなたも安心してください。一時期クソほど流行ったので、メルカリでもブックオフでも安く買うことが可能です。

中垣:そういうことね。

なつき:めっちゃ分かるわそれ。

松田:これは非常によくないと思うねん。「あなたにこうしてほしい」じゃなくて「私はこうしたい」って言えばええのに。そうしたら二人の「こうしたい」を比べて着地点を見出すことができるねんから。

なつき:めっちゃ共感できました。

中垣でもおれは彼女側やねん。完全に彼女側の人間で、自分があの人とこれをしたいってなったら、お互いにやりたいことがあって相手には相手のやりたいことが…みたいな問題ではないねん

松田:あ、なるほど。

中垣おれがやりたいからやりたい、それだけやねん。もちろん頭では分かるし、そんなわがままではないから譲歩はするねんけど、相手のことを考えて尊重するとかではないねん。譲歩は解決の手段ではあるけれど、おれにとっては不完全燃焼というか、そうなるともう当初の「やりたい」はほとんど意味をなくすねん。

松田:なるほどね。

中垣:だからおれが待ち合わせに遅刻するとかは結構そういうことで

中垣:他の人との関係において、自分は一人の個人で相手もまた一人の個人だって考えるのか、自分の世界があってその中にいろんな人がいるって考えるのかの違いは結構あると思う。おれは結構後者の見方で、彼女もたぶん後者の見方なんやと思う。

松田:うん、それはほんまそう。彼女はきっと、主体的に決定をする個人が二人いるっていう世界観では生きていなくて。彼女の見ている世界は彼女の世界で、その中のひとつのパラメーターとしておれがいると思うな

中垣:うんうん。でもこれって地動説と天動説の関係と同じやねん。実際は地動説が正しいわけやん、でも別に天動説でも宇宙の体系は説明できるねん。ただ複雑にはなんねんけどな。太陽を中心にした方がシンプルな数式で表せるねんけど、別に地球を中心にして複数の円を考えれば天動説でも説明はできるわけ。

中垣:今の話も同じで、主体的に決定する個人が複数いるっていう説明が一番シンプルなんだけど、自分を中心として天動説的な見方をした場合でも、おれは揉めごとを起こさないようには制御できるわけ。どこまでも自分本位で語ろうと思えばできて、おれは今も実際にそうやねん。相手がどうだからこうしようとかはないし。

松田:うんうん。

中垣:おれ昔からそうやけど空気が読めないねん。相手の気持ちがよく分からなくて。ただ経験的に、おれがこう振る舞えば相手はこうなるっていうのが分かるだけで。

松田:確かに、言われてみれば中垣はそうやんな。でも別に、複雑にはなるけど天動説で説明もできるし、頭が追いついてくるならそれでもええよな

中垣:笑

2020年2月21日
Aux Bacchanales 銀座