西川:人生がめんどくさくなれば死ねばいいかなって思ってる。別に今死にたいとは思ってないけど、今後辛いことがあったとき、なんで生きてるんだろうっていう正解を持っていたら踏ん張れるけどそれがない。
中垣:生きていくことに対して希望はないん? やりたいこととか。
西川:うーん、まあ美味しいもの食べたいとかはあるけど。でもそれがめちゃめちゃ大事かというと別に…
中垣:あれやんね、辛くなったとき、それくらいの希望やと全然切り捨てて死んじゃう可能性があるってことやんね。でもまあ、それならそれでいいかもしれんね。
西川:まあ確かに笑
中垣:そうやって死ぬのは嫌なん? 辛くなったから死にますって言って死ぬんなら、それはいいんじゃないん?
西川:うーん…
松田:前に肯定し得る自殺について考えてて、そのときのおれなりの結論やねんけど、首吊るとか電車に飛び込むとか、こういうのは一番かっこ悪いねんな。
松田:つまり、例えば「自殺ゲージ 」みたいなのがあって、これの数値が100までたまったら自殺するとするやん。でもさっき言った自殺の仕方やと、ゲージが95くらいまでたまったら最後の5は勢いで100にもってってるわけ。死ぬことにギリ迷いがあるのに、えいやって死んじゃってる。
松田:だから普通の自殺の仕方はよくなくて、自殺したいなら餓死一択やと思うねん。
中垣:確かに。最後の最後まで「やっぱ生きる」ってできるもんな。
松田:そうそう。だから不便なところで餓死とかはあかんねん。自分の住んでる部屋で餓死せなあかん。
西川:はいはい。
中垣:ポテチとかも置いて…笑
西川:なるほどね。
即身仏もダメ
松田:そうそう。西川は食べるの好きやん、だからUber Eatsの画面開きっぱなしにして、それでも餓死できるんなら死ねばええと思う。それなら人生は全うされたと言える。
中垣:そうやんね。
松田:で、おれはそれを考えて、「いや、絶対死ねなくね?」って思ったわけ。
中垣:だってケータイ見てる時点であれ欲しいこれ欲しいって思うもんな笑
松田:そうそう。とりあえずすぐセブンイレブン行くと思う。ほんで買ってきたミルクレープとか食べながら「そういえばあれ買ってないな…」ってなると思う。
中垣:そうやんな笑
松田:パタゴニアの今期の色めっちゃええやん、とか。
中垣:セブンの家系が美味しいらしい、あー…とか笑
世界はこんなにも素晴らしい
松田:絶対死なれへん。
西川:確かに…
中垣:西川はなんか、いちいち主題がでかいよね。つまりさ、死ぬとか人生とかさ。
中垣:ただ一方で、例えばおれとか松田は欲求がやばいから、そもそも西川の気持ちがあんま分かってないっていうのもあると思う。低俗なレベルで人生を肯定できてしまっているから。
松田:まあそれはそうやんな。
とりあえずロールスロイス欲しい
中垣:でも西川の言ってるのは、辛くなって死ぬとかとはまた別の話やと思うけどね。なんかやっぱ言ってることが違うと思う。人生の虚無さとかそんな大層な話じゃないと思うよ。単純にこう、HP足りてないだけやで。
西川:笑
松田:結局は日々に張り合いが欲しいっていう問題なんちゃう?
西川:うーん…私が思っているのは、今すぐに死ぬとかではないし別に死にたいとも思ってないけど、ただ純粋に、何でみんな生きているんだろうなって。
西川:例えば最近、周りは結婚したいとか子供が欲しいとか言い出してるんだけど、そんなこと言っても子供にどんな希望を与えればいいんだって思うし、自分で生きている意味を言えなければ私は子供を持てないし…
西川:そういう中でこのテーマが出てきた。何で私は生きているんだろう、どうして親は私を産んだんだろうって。
中垣:アンドロイドなん?
松田:笑
中垣:なんか、誰目線なんかなって。
西川:確かに。
中垣:西川が、仮に西川みたいな別の人を想定したときに、彼女は人生の意味をどう捉えるんだろうみたいな話に聞こえて。
西川:でも私自身、生きたいと思って生きたことはないし。
松田:それはみんなそうやないん? 気付いたら始まってたんやし。
西川:いや、そうそう。だからふと立ち止まって、何で今まで生きてきて、これからも生きていくんだろうって。
松田:いや、ちゃうやん。まずもってさ、生きる死ぬって釣り合いの取れた二択じゃないやん。昼飯にカレー出てきてそれ食ってんのにさ、「これはもしかするとラーメンの方が…」って言ってるみたいなとこあるやん。
西川:笑
松田:何て言うか、とりあえず既にカレー食べ始めてるし。それに別に特別不味いとかないしさ、それやのにカレーを途中で残してラーメン注文する?みたいな。しかもさらに悪いことに、実際にはカレーを残したあと次にどんなメニューが出てくるかは分からないねんで。
中垣:東海道新幹線に乗ったのに、やっぱ湘南行きたかったみたいな。
松田:きっかけはともあれカレーを食べ始めているんだから、意味があるとかないとかじゃないでしょ。
西川:確かに。だからかな、同じ話かは分からないんだけど、私が「苦しくなったら死ねばいいじゃん」って言うと、えっ…て顔をされて、「そんな軽々しく言わないで」みたいに言われることがあって、でも私にとってはそれが分からなくて。何でだろうって。
西川:でも松田が言ったみたいに、私にとって自分の場所はレストランの前で何食べるか迷ってるみたいな、常にそういう感じだったんだけど、でもそうじゃなくて、実はもう食べ始めていて…
松田:そうそう。そういうことが言いたかった。
西川:もう注文もしてるし、あとは食べ終わってお金を払うだけっていう見方がなかった。
松田:一方でさっきの話やけどさ、辛いなら死ねばいいっていうのはそうやとも思うねんな。つまりさ、不味かったら残せよって話で。だからそれに対して軽々しく言わないでって、それは言ってるやつも大概な気がするけどな。
中垣:そうそう。なんか、辛かったら死ねばいいっていうのもいろいろと語弊はあると思うねんけど、そういうことを軽々しく言わないでって言う人もかなりイデオロギー的と言うか、そういうことを絶対言わせない党の人みたいな、そういう感じがする。
松田:笑
西川:うん、でも結構納得した。
中垣:西川は今までさ、一番死に近かったときっていつなん? 死のうかなとか、あるいは事故にあってこのまま死んじゃうかもとか。
西川:あー、それは大学三年のとき。部活の重圧が強くて。
松田:何で?
西川:主将やってて、それがしんどかった。お家帰ってドアの前で、なんかもう死のっかなって。
中垣:えー。
松田:女ラクの主将が自殺は結構センセーショナルやな笑
中垣:物騒な話やで。
西川:意地で、自分の誇りのために死ななかった。死ぬよりたぶん、やり切る方が…
中垣:でもそんな迷うほどにはしんどかったんや。
西川:まあそんな大した話でもなかったとは思うんだけどね。でもそのときはそう思ってしまった。
中垣:でもさ、単純に言ったら女ラク辞めたらええ話やん。そういう意味では辛かったら死ねばいいっていうのはやっぱりおかしくて、辛かったらそれを辞めればいいだけで。
松田:そうやね。それを辞めたらええだけやもんな。辛かったら死ぬって、それは人生に対する解像度が低過ぎやな。
西川:笑
中垣:そうやねん、そういうことやねん。
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