Y:鉄スクラップってどういうものなんですか?
みなと:鉄ってほぼほぼ全量リサイクルできるのね。そもそも酸化還元反応で作っているから、もう一回その還元炉に戻してあげれば全部リサイクルできるんだけど、そういうふうにできるからこそ、高炉メーカーみたいに鉄鉱石と石炭を買ってこなくても、スクラップだけ寄せ集めて鉄を作るっていうメーカーも結構いるわけ。
松田:あー、なるほどなるほど。
みなと:し、そのやり方だとCO2もあんまり出ないから、環境にやさしいっていうのがスクラップから鉄を作るメリットとしてある。あとはスクラップからの鉄の生産は電力を使った釜でやるから、高炉メーカーだと高温ガスを使っていてものすごいエネルギーを食うんだけどそれと比べるとコストもかからないし、途中でお釜を止められるっていうのもメリットではある。だから鉄スクラップ市場っていうのは世界では大きく存在している。
鉄スクラップの市況→
Y:へー。
みなと:で、鉄スクラップが出るのにはある程度条件が必要で…というのは、鉄のスクラップが出るにはそれだけの鋼材消費量がその国の中でなくてはならなくて、だから日本、アメリカ、中国くらいがメジャーな鉄スクラップの産出国かな。
松田:日本は何に鉄を使っててスクラップが出んの?
みなと:まずは自動車とか製造業関連。それをスクラップにするとき、その鉄は全部高炉メーカーに持ち込まれている。ほぼほぼ全量。だから高炉メーカーは自分達の作ったものをクズの状態で買い取って、炉に戻してもう一回生産していることになる。
松田:自動車以外に鉄のスクラップが出やすい産業って何かあるん?
みなと:あー、まあやっぱり製造業が多いんだけど、一部建築用途とかでもあると思う。梁とかね。
みなと:鉄スクラップの市場が存在するためには鋼材使用量が大事で、鋼材を使用する国っていうのは今年一億トンなら来年も一億トンっていうふうに使い続けるから、ある年に一億トンの鉄が出荷されて、それが何十年後かにスクラップになってまた鉄になるっていう構造になっている。
鉄の輪廻
松田:なるほど。
みなと:だから例えば鉄スクラップの価格が上がると、それを使っている製品の価格が上がるだろうっていう予測のもと原料である鉄鉱石の価格も上がったりする。日本で二大スクラップ拠点になっているのは大阪と東京…というか船橋辺りなんだけど…
鉄スクラップの相場→
松田:そこにいろんなとこからのスクラップが集まってくんの?
みなと:うん、そうそう。集まってきたりとか、あとはその二つのポートがスクラップ輸出の拠点になっている。特に日本とかアメリカのスクラップが好まれて…
松田:それはなんで?
みなと:純度が高い。ある程度スクラップの仕分けがされているから。
松田:中国とかだとピンからキリまで一緒にしちゃう笑
みなと:まあまあ、極端に言うとそう。そうなったときに電炉メーカーが一番困るのは…
松田:高炉を持っていなくてスクラップから鉄を作っているのを電炉メーカーって言うの?
みなと:そうそう。その人達が一番困るのは、製造業向けに成分値をきっちり管理して鉄を作りたいときなのね。鉄に使っている化学成分って15~16種類くらいあるんだけど、原料にしているスクラップの中に何が入っているかが分かんないと、製品がうまく出来上がるかが分からない。予期しない成分のことをトラップエレメントって言うんだけど、それが入っているかもしれない。
一生使わない語彙が増えた
松田:がさつに見えて繊細やねんな。
みなと:製造業向けは結構すごく細かいと思うよ。
松田:だってパンピーからしたらさ、鉄は鉄やん。
2019年9月13日
虎ノ門 マンションの一室