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思索

あらためて『スイミー』を読んでみた

5 years

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松田:うん、やはりええ話やな。

みなと:そうだよね。なんか群れになって追い払うってエピソードだけを覚えていたんだけどさ、あらためて読んだら序盤でスイミーの仲間が全部殺されてるじゃん

レオ・レオニ(1969)『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』好学社
Image: Amazon.co.jp

ところが あるひ, おそろしい まぐろが, おなか すかせて すごい はやさで, ミサイルみたいに つっこんで きた。ひとくちで, まぐろは ちいさな あかい さかなたちを, 一ぴき のこらず のみこんだ。 にげたのは スイミーだけ。

Source: レオ・レオニ(1969)『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』好学社

レオ・レオニ(1969)『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』好学社

松田:いや、ほんまに。ジェノサイドやんね。

みなと:そんな感じで話の始まりはかなり暗いんだけど、スイミーはその後もなお世界に対してポジティブに生きてて、全体的に肯定感があるのが結構よかったと思う

松田:そう、すごいポジティブな感じがあるよな。

「ぼくが, めに なろう。」

みなと:この著者の話は全般に暗い話が多くて、なんというか、「みんなと同じではない自分」みたいなテーマが多いような印象を持ってたんだけど、『スイミー』は積極的に世界にはたらきかけているのがいい感じだなって

レオ・レオニ

松田:ただ読んでから思ったけどさ、これキッズが読んでもあんま意味無いよな

みなと:それはそう。

松田:現におれらも詳しい内容は覚えてなかったやん。でもこれ大人なら3分くらいで読み終わるし、素直なマインドをセットしてから読んだら結構ためになりそうやんな

なぜ我々は大人になるにつれ素直じゃなくなるんでしょうね

みなと:あとは『スイミー』もそうなんだけど、この人の話でおもしろいなと思うのがさ、お話の終わりが唐突じゃない?

松田:そうそう、最後にもう一ページくらいあると思った。

みなと:そうなんだよね。分かりやすくめでたしめでたしって感じじゃなくて、終わりを決めつけられていない感じがあるよね。それも読みやすくていいな。

松田:価値中立な感じというかね。

みなと:懲悪的な話の後味の悪さというか、『桃太郎』を最後まで読んじゃったときの「そうだよね…勝ったよね…」みたいな、そういう気持ちを経験せずにすむ。その先の話をポジティブに想像できる感じもあるし。

ボクのおとうさんは、桃太郎というやつに殺されました。
Image: 日本新聞協会

2013年度入賞作品 – 新聞広告データアーカイブ – 日本新聞協会

松田:うんうん。読者に委ねられている感じがあってええよな、価値判断にしろその後の展開にしろ。

2019年8月30日
代々木上原 Airbnbの一室

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レオ・レオニ『スイミー』
HeaderImage: レオ・レオニ

1910年、オランダでユダヤ人の裕福な家庭生まれたレオ・レオニ。コレクターの叔父の影響で、パブロ・ピカソやパウル・クレーなどの芸術に囲まれて育った。イタリアで暮らした後、ファシスト政権の誕生を機に米国に亡命し、イラストレーター・グラフィックデザイナーとして成功した。
日本では『スイミー』『フレデリック』『アレクサンダとぜんまいねずみ』などが1977年から小学校2年生の多くの国語の教科書に掲載され、広く親しまれている。

レオ・レオニ