みなと:大学三年生だから就活するって言うやつはなんなの? みんなが死ぬって言ったら死ぬの?
すぐ極論に走る…
松田:まあでもそうやんな。なんやろう、おれが違和感を感じるのはさ…例えば別に、大学三年生だから就活するって言うやつを擁護することだってできねん。人生ゲームで言ったらローリスクローリターンやん、そっちの方が絶対楽やし、制度はそう設計されてるし、そう言う彼の気持ちには全然寄り添えるよ。
松田:ただおれが違和感を感じるのはさ、いつまでもそうはしていられないことやねん。つまり、いつまでも選択の排他性を制度が担保してくれるわけではないやん。そりゃあ就活くらいならさ、制度に忠実にのっとってええとこに就職したら、それは結構ええ選択やったと言えると思うで。
c 選択とその排他性→
みなと:うん。
松田:でもこれにしたって例えば大学受験と比べると、制度が選択の排他性を担保してくれる度合いは下がってるわけやん。大学受験って基本的には偏差値が全てで、複数の候補があればどれがより良いかは一意に言えるやん。
過度な単純化…
みなと:まあそうだね。
松田:でも就活はそうじゃないやん。そりゃあ年収が高いとこに就職したいけど、とはいえ過労死は避けたいし、それなりにやりがいのあることもしたい。判断の基準が一意ではないわけ。
松田:ほんで実際に働き出したら、いよいよ「やるべきこと」が外在的には与えられなくなってきて、いつの間にか全くそうじゃなくなるわけやん。でもそのタイミングまで、選択の排他性を制度に担保させているふりをして、全く主体性を発揮していないように振る舞い続けることもできて、それが気持ち悪いなって思うな。
みなと:確かにそれはそうだな。
松田:イージーな選択肢が制度的に与えられている状況でそれを選ぶこと自体は否定できないねんけど、いずれはそうじゃなくなるわけで、それを認識していないとしたらそれはよろしくないよな。
みなと:そうだな。
松田:いつかは梯子を外されるんやでって話。
みなと:就活しているとき、他の就活生と話していて毎回思ってた。「お前死ね」ってずっと思ってた。
松田:笑
みなと:どこまでいっても、どう生きるとか自分がどうしたいかが問われているのにさ、就活っていう制度に乗ることが前提になって話が始まってるから、その制度に適応して制度に求められているように振る舞ってしまっていて、でもそれって思考放棄しているだけなんじゃないのって。
みなと:まあ僕も就活には乗ったから、企業から見たら他の就活生と同じなんだけど。でもお前らおかしくない?って、周りを見て思ってた。
松田:自分の身の回りに就活が楽しかったって言ってるやつおらんねんけどさ、一人くらい「これチョー楽しくない?」って思って就活をライドしてるやつおらんのかな。
みなと:でもね、会社のこと知るのは楽しかったよ。
松田:まあそれは楽しそうやんな。東京モーターショーに行くノリで合同説明会に行くのはいいかもしれん。
おれどれにしよっかなー、迷っちゃうなー、みたいな
みなと:そうそう、そんな感じ。OB訪問も楽しかったよ。
村上龍『新 13歳のハローワーク』幻冬舎→
2020年3月13日
Aux Bacchanales 銀座