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官僚の言葉づかい

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中垣:なんかあれやねん、官僚は言葉づかいがめちゃくちゃ上手いねん

松田:へえ。

中垣コンサルでも言葉はめちゃくちゃ大事やねんけどさ、なんか、彼らの方がめっちゃ厳密やねん。今のチームは一番上の人が以前に2年くらい総務省に出向してたことがあって、それともう一人総務省にずっと勤めてて去年かなんかに転職してきた人もおって、かなりそっちに寄ってるねんな。

次郎:その二人が総務省の事業を予算もらってやってんの? 最強やな笑

松田なんか具体的な例とかないん?

中垣:なんやろ…よく言われんのは、省庁系の仕事はやっぱり言葉づかいをより厳密にするって。例えば表記ブレとかって、一般的にも避けるべきやねんけどその度合いが特に高い。「ください」を平仮名で書くか漢字で書くかとか、「。」の後に括弧をつけるのか前につけるのかとか。あとはなんやろな、例えば「〜を実行するにあたり、〜をする必要がある」っていう文やとするやん。この接続が「あたり」やと読点があった方が締まりがいいんやけど、文がそんなに長くないから読点を使いたくないってなったら「あたって」にする、みたいな

松田:なるほど。

中垣:そういうのが結構すらすら出てくんねん。慣れてるから。

松田:しかもそのそれぞれに相応の妥当性を見出せるんやろ?

中垣:そうそう、全部説明してくれる。なんて言うかね、言葉チェックリストの手札がすごい

代慶:ふーん。

中垣:し、なんか…それとは別に官僚の言葉づかいっていうのもあるねん。なんやったっけな、すごい冗長な言い方すんねんけど。

次郎:「〜とは認められていない」とか?

中垣:あ、そうそう。そんな感じ。

次郎:「原発事故によって出た放射線の被曝で死亡した人はゼロ」って言うんじゃなくて、「因果関係があると認められた死亡者は確認されていない」とか。そういう言い方をすることはあるね。

中垣:せやねんせやねん。否定の文章を書くんじゃなくて、肯定の文章を最後に否定すんねん

次郎:そうそう。

中垣:そうやねん。まさにそれやった。

次郎:実際、正確性を突き詰めるとそういう表現になっちゃうんだよ

中垣:あとはなんか、「取り扱い」に「り」を入れるかどうかとか。何読みって言うっけ、音読みで独特の読み方するやつ

次郎:それは、内閣法制局っていう法律を最後にチェックする機関があるんだけど、法律を作ってそこに持って行くと、そこの役人が日本語として間違っていないかをチェックするプロセスのときに条文が読み上げられるんだけど、そのルールがあって、訓読みだと違う単語と誤解される言葉がいくつかあるから、それを避けるために特定の言葉に関しては一般的に使われている読み方じゃなくて、例えば訓読みの部分をあえて音読みで読むとか、そういう読み方をしたりする。その総務省にいたっていう方は、きっと法律を作る担当になったことがあるんだと思う。

中垣:「取り組み」の間に「り」を入れるか入れないかで、入れない場合の読み方をその人は「シュソミ」って言ってた

次郎:それは法制局に行ったときに「シュソミ」って読み上げるからだよ。

内閣法制局 法律の原案作成から法律の公布まで
Screenshoot: 内閣法制局

シュソミの生まれる瞬間

法律の原案作成から法律の公布まで – 内閣法制局

松田:まじかよ。

代慶:へー。

中垣:で、おれが「り」が入ってるのと入ってないのを併用してたらめっちゃ指摘される。

代慶:へー。

次郎:でもこれ併用するんだけどね、実は。動詞で「取り組む」だったら「り」が入るんだけど、名詞で「取組」だったら漢字二文字。で、裏には哲学があって、できるだけその…

中垣そう! 哲学! それ通じひんからな。上司も言うねん、言葉の哲学って。要は言葉の運用方法のことやねんけど、一回外部の専門家がいる検討会で「ここの哲学は…」って言ったとき、みんな「(哲学…?)」ってなってたからな。

代慶:笑

松田:さっきの例の哲学はなんなん?笑

次郎:つまりさ、動詞として扱うときは漢字の間に活用語尾を平仮名で表記するんだけど、名詞だとできるだけ字数を減らすっていう観点から漢字二文字にしておく、という感じらしい。

中垣:結構おもしろいで。聞くとなるほどやし、意識できる限りはそうしたいと思えんねん。

みなと:シュソミ…

松田:まあ聞いていて嫌いではない笑

次郎:ある種のカルチャーだよね。

代慶:それって育まれていくものなの?

次郎:まあなんか、法律を作る担当者にならなくても偉い人が読み上げる文章を書く機会は結構あるし、その他にも日本語を書く機会は多いからね。

みなと僕らだって別に多くはあるよ笑

2019年10月4日
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