中垣:このミニカーがあるとさ、この運転席にいる人の気分になってテーブルの上のものを眺められるわけ。コーヒーカップが2個並んでるのを見上げて「うわー、門みたい」とか、シンプルにそう思えるねん。思えるやん?
松田:確かに思えるな。
中垣:それって結構すごいことでさ、ミニカーがなかったらなかなかそうは見られへんねんけど、これがあるだけで テーブルの上のスケール感をミニカーに合わせることができるわけやん。
まりな:ミニチュアの醍醐味。
中垣:そう。なんか、すごいよなぁ。
ユースのマインドを忘れていないサラリーマン
松田:確かにすごい。
中垣:この話を思いついたんが実は30分くらい前で、そのときに話せばもうちょっと熱量を持って喋れてんけど…
西川:笑
中垣:なんて言うんやろな。このミニカーがなかったらさ、このカップを門やと思う…って結構難しいやん。
松田:そのミニカーなしでこれが門に見えてたら日々の生活が大変そう笑
中垣:間違いない笑 でもこれがあったらほら、めっちゃ簡単。
ほら
松田:確かにな。
中垣:やろ。すごくない? これは結構すごいことやねん。まあだから建築模型では添景って言って、人とか車とか植物とかを置くねんけど。
西川:ああ、なるほど。
中垣:あんま誰にも分かってもらわれへんねんけどさ、ちっちゃい頃さ、日曜の朝起きて、起き上がんのめんどくせぇとか思って、布団に寝転びながら白いシーツが波打ったりしてるのを見て、それをいじって山とか谷とかってやってて…
松田:うん、分かるよ。
中垣:分かる? やってた?
松田:やってた。
中垣:初めて分かってもらえた。今までいろんなタイプの人に言ってんけどやったことないって言われ続けてた。で、その山とか谷は布団から起き上がった瞬間になくなるねんな。
松田:うちコタツがすごいデカかってん。ダイニングテーブルくらいの大きさで椅子にかけて使う高さのやつで。それに寝転んで入って上を見上げたら、コタツ布団がすごい急峻で、「これは登るの大変だぞぉ」みたいな。で、ひだとかをちょっと調整したら登るためのコースが出来上がるわけ。
中垣:でもこれそんなに楽しい遊びではなくて、ほんまに他にやることがないから、0ベースで考えたら1くらいは楽しいかなって感じで、だいたい日曜とかにそれをしてた。
中垣:結構夢がある話やんな。
松田:ミッケって絵本知らん? 本棚とか、倉庫の中とか、そういう雑多な世界を模型を使ってミニチュアで作って、それを切り取った写真が見開きで載ってるねんな。それでページの下に10個くらい、「〜があるよ」「〜はどこだろう」みたいに書かれてて、それを見つけなあかんねん。
ジーン・マルゾーロ『ミッケ! たからじま』小学館→
松田:まあウォーリーを探せみたいなもんやねんけど、探すものはページごとにちゃうねんな。それを見ているときとか、すごくそのシーンの中には入り込んでいく気持ちがあったというか。
中垣:あー。
松田:例えばペンチを探せってなったら、自分も工具のひとつくらいの気持ちでその光景に入っていかんと見つからへんねん。客観的な絵として見てたら全然分からへん。
中垣:なるほどな。
中垣:あとさ、子供のときって、ミニカーぶーんって走らすみたいなことしてたやん、あれってなんでなんやろ。おれ今は全然したくないもん、恥ずかしいとか抜きにして全然やりたくない。
松田:確かに。
中垣:でも子供のときは夢中でできたやん。おれはこれで何かを確かめてたんかな?
松田:なんか自分の中のひとつの仮説やねんけど、小さいときって自己効力感を感じられるアクティビティの価値が今より高いと思うねんな。
西川:あー、うんうん。
松田:例えばそれだって、ミニカーをブーンって走らせている限りにおいて、自分が世界を操ってるわけやん。
中垣:あー。
松田:そういう話なんじゃないかなって。
いずれ本物が欲しい
2019年9月27日
Starbucks 六本木 蔦屋書店