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言葉の扱い方

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中垣:これは雑な話やし、なんならヘイトに近いねんけど、おれは大して頭のよくない努力家と致命的に話が合わないねん

松田:アホの努力家な。うんうん。

中垣:そう言うと極端やけどな。別にアホとは言わんでも、それなりの人達。

松田:具体例ないん? イケハヤに憧れる人みたいなやつ?

中垣:いや、ちゃうちゃう。いつかのおれの上司

松田:うわすごい、頭いいの線引きがかなり厳しい笑

中垣:実際仕事できたり、すごい努力してたりすんねんで。それはシンプルに尊敬みたいな話やねんけど、なんか、なんで話合わへんのやろと思って

松田:まあ確かに、そんなに遠いわけでもないもんな。

中垣:そうやねん、遠くないはずやねん。だから共感をもって、「確かにそういう気持ちも分かるけど、こういうふうに考えれば案外スイッチ入るよ」みたいな話してくれたら「あ、そうかも」って思うのにさ、なんか、めっちゃ押し付けてくる感じというか

おれは真面目じゃないねん。真面目な人のことが分からへん、なんでそんなことができるのかも分からへんねん。

Source: commmon

c 人間的な豊さに目を向けるには

なつき:うんうん。

中垣:で、なんかね、彼はたぶんそんな頭よくないねん。喋ってて思うねん。

松田:はいはい。

中垣話の中で、全部言わなくてもニュアンスで大体分かるみたいな感じってあるやん。それが全然なくて。おれが言ったことに対して「それってこういうことですよね」って言うのも、全然違ったりして。

松田:はいはい。

中垣:めっちゃ努力家で若くして昇進した人やねんけど、おれの言ってることが全然伝わらなくて。で、「やっぱ中垣くんは言語化が苦手だよね」って

中垣が言語化苦手はわらう

松田:笑

中垣:いやまあ分かるねんけど、それもあるとして、たぶんお前はお前で頭わるいでって

松田:なんか思うのは、コンサル病じゃないけどさ、何かを言語化するってラベリングの境界を決めることなわけやんか。その境界を曖昧なままに置いておいて話を進める能力って、それこそが言語能力の高さやと思うねんけど…

Image: Amazon.co.jp

井筒俊彦『意識と本質 – 精神的東洋を索めて』岩波文庫

中垣:そうやね。パソコンにはできひんことやもんね。

松田:そう。でもコンサル病の人達って、ラベリングの境界をきっちりさせとかんと話を次に進められへんのやと思うねん

セックスのとき「気持ちいい?」ってずっと聞いてる

中垣:そうやねん。もちろんテクニックとして、お客さんに伝えるためのスキルを身につけましょうとかなら分かるねんけど、やつらはそれこそがコミュニケーションだと思ってる感じがすごくあって

松田:うんうん。

中垣:逆に別の上司と喋っとって、スムーズに伝わるときは伝わるの。しかもそういうときってすぐに伝わるから、どんどん先まで話ができるの

松田:うんうん。

中垣曖昧なことを曖昧なまま前提に置けるから。曖昧コミュニケーションのよさってその速さなわけやん。一番先まで話を進めたいってときはそれがめっちゃいいのにさ

中垣:それを最近思ってん。今やってるプロジェクトの上司は結構好きな人で、その人と話してるとニュアンスコミュニケーションで話をポンポン進められるねんな。やっぱ前の上司はアホやったんじゃないかな…

松田:じゃない? 言わな分からんねんやろ。

中垣:し、努力してかなりいいポストについてるから、本人にそういう自信があるわけよ。

松田:うんうん。

中垣:自分のやり方でもってビジネスマンとしてうまいこといってるし、下手したら自分のこと賢いと思ってるわけよ。でもなんか違うねん。あとそういうやつの特徴として、やたらと引用するねんな

松田:はいはい笑

中垣:「~さんって知ってる?」みたいな。「~の社長なんだけど、彼はこういうことを言っていて…」って

キツいものがある

松田:お前と話してんのにな。

中垣:そうそう。「どうでもいい…」って感じ。それをお前が消化した後の言葉を聞かせてくれ

松田:あれやな、commmonとして言語能力をちゃんと定義したいな。commmonとしての言語観はこういうものです、みたいな。

中垣:だからやっぱりあれやで、“””言語化”””じゃない、アートとしての言語化って話をしてたやん。それをなんて呼ぶか決めたいよね

松田:そうやんな。だってドットバイドットで色を定義せんと絵が見えへんなんておかしいやん。グリッドをしっかり引かないと認識ができないってそういうことやん

要は部分の集合としてしか全体を捉えられないのか、全体の分割として初めて部分に焦点を当てるかの違いやんな。 コンサル的立場からすると部分に先立つ全体ってなんだって感じかもしれんけど、それは課題をクライアントに外注しているからそう言えるのであって、主体的な意志や期待をもって物事に取り組む立場からすると、全体を扱いやすくする手段として初めて部分が主題になるわけ。

中垣:うんうん、そうやんね。でも人間ってそうじゃないもんね。

河東ドットバイドットってなんなん?

中垣:要はディスプレイみたいな話。

松田:デジタルの映像ってさ、横何万ドット×縦何万ドットの点があって、そのぞれぞれに三原色が割り振られてるわけやん。

中垣:つまりコンピューターってアスペやから、スマホに木の写真を出力しようと思ったら「このドットにこれくらいの緑を表示して…次のドットにはこれくらいの青で…」ってやるわけやけど、人間ってそうじゃないやん。ぱっと見て、これは木ですって分かるわけやんか

河東:ああ、なるほど。

ニュアンスコミュニケーションの弱さ出た感ある

中垣:機械学習的な話だとそれをコンピューターにさせようとするわけだけど、人間なら一個一個マス目に区切らなくても、ミクロからマクロまでそれが木であるっていうことを、言語を介さずに認識できるというか

河東:はいはい。なるほどね。

中垣:で、もちろんチームワークみたいな話になると、そういうニュアンスコミュニケーションを5人でやってると結局みんな考えてること違ってたみたいなことが起こり得るから、きちんとロジカルにっていうのは全然分かる。

河東:お客さん相手とかはね。

中垣:約束もあるし。

松田そこは言ったら契約書の話なわけやん。だからそれは別にいいわけ。

中垣:そうそう。でもそれ以上に、ビジネスではニュアンスコミュニケーションが嫌われてる気がして。

松田:うんうん。

河東:たまに喋らんっていう選択を検討し始めてまうもん。「もう伝わらないから…うーん、喋んない!」みたいな。

中垣:そうやんな。

河東:おれも会社でほんまにコミュニケーションとられへん。おれは喋ることが一番得意やと思って生きてきてんけど、最近そうじゃないことを確信してて。ほんまに話通じひんねん。

中垣:今まではそういうときも、「やっぱおれはビジネスマンとしてはまだまだなのか」とか思っててんけど、最近はシンプルにあいつらがアホやと思ってて。

河東:けど、そいつらに合わせてその喋り方をするスキルをまだ搭載できてないのは事実で…

中垣:それはそう。おれが、おれが思ってるほどほんまにすごい人間なら、そこは全部できるはずっていう。

頑張ろう

2020年5月23日
Aux Bacchanales 紀尾井町


HeaderImage: NHK

言語学者、哲学者、思想家として世界に名を響かせた井筒俊彦。引くほど賢いことが文章を読めば一発で分かる。「アートとしての言語化」を駆使し精緻な議論を華麗に進めていく彼の前では、ヴィトゲンシュタインはただのアスペである。
言語を真に自在に扱えるようになるには『意識と本質』は必読。