中垣:
パンピーのみなさまごめんなさい
大森:でもさ、星野源とかよく頑張ってるよね。ラジオでもいろんな人をフックアップしようとしてるし。ただ
中垣:そうなんですよね。
大森:啓蒙ってほんと成功しないよね。なんか上手くいった例ってないのかな、好きなミュージシャンの好きなミュージシャンを辿るようなやつって既にそういうやつだしな…
中垣:そうですよね。それで言うと
中垣がまさに設営した現場
大森:あー、NFは偉いね。
中垣:別に僕はサカナクションは好きじゃないですけど、彼らが前にティーンを集めたデイイベントをしたんですよね。そのとき、
大森:へー。
中垣:で、それにティーンが並ぶと。そんなのクラブの光景じゃないんですけど、でも確かにティーンにとっては祭りだよな、って思って。
大森:確かにね、なるほど。その辺
中垣:まさにまさに。
大森:かと言って、それがむちゃくちゃ上手くいってるかというとそうでもないじゃん。サカナクションきっかけにテクノにハマった人なんて見たことねえよ、って。
中垣:もしそこからはまるとしても、それはいずれにせよどこかではまったであろう人で。
大森:そうそう。
中垣:でもコロナになったらみんなマスクは着ける。
大森:え、どういうこと?
中垣:なんかこう、
大森:あー、なるほど。それで言うとさ、
中垣:そうですよね。
大森:あれはそれこそさ、
中垣:あー。
大森:でもそれって、やっぱり欧米に対する強烈なコンプレックスがないときついよね、とも話していて思うな…
中垣:うーん。
大森:『文化系のためのヒップホップ入門』って本を書いてる大和田さんって人、あの人が東大で教えてたんだけど、サバティカルか何かでコロンビア大に行ったときにびっくりしたって言ってたのが、図書館に行ったらみんなデカルト読んでたらしくて。
長谷川町蔵・大和田俊之(2011)『文化系のためのヒップホップ入門』アルテスパブリッシング
中垣:へー。
大森:で、「コロンビア大の学生みんなインテリ過ぎね?」って思って、その話を同僚にしたら「それ必修だからだよ」って言われたらしくて。
中垣:笑
なんやねん
大森:文系も理系もみんな必修の授業として、夏学期に哲学やって冬学期に文学をやるらしくて。そういう教養主義が振りかざされる価値観、あれは何なんだろうね。
中垣:そういう、
大森:そうだよね。
中垣:それを考えても、現在の中流至上主義というか、免罪符が氾濫してる感じはちょっとな…って。
c 不誠実な中流根性
大森:なんかさ、
大森:でも、分かんないなりになんかすごいっていうのをみんなで共有してた感じがあったわけで、
中垣:逆に今みたいな、要は自分にフィットしてるものを享受している状況ってきっと心地いいというか、安心感はあるんでしょうね。
大森:だからあれじゃない、これは今思ったんだけど、よりハイなものに価値を認めるっていうのは、日本が高度経済成長期で傾きが右肩上がりだったから、これが行き着く先には何かすごいものがあるっていう期待があったからこそで、
中垣:しかも
c エズラ・F・ヴォーゲル(1979)『ジャパンアズナンバーワン』CCCメディアハウス
大森:おれのさっきの話の念頭にあったのは、似たような話として、洋服の品質が下がってるって話があるじゃん。本当に良い品質のウールの生地はもうこの世に存在しない、みたいな。
中垣:はいはい。
大森:それこそ今日話したいと思ってたんだけど、このあいだ
中垣:いいえ。
大森:前にさ、シップスとかビームスとかの創業が同じ時期だって話してたじゃん。
中垣:ほー。
大森:その時期、東京に3つの有名なセレクトショップがあった中で、なぜか熊本にも1つあったと。で、その人の店に行って話を聞いて、そこで1940年代にアメリカ軍の事務職の女性が着てたスラックスみたいなのを買ったんだけど、有田さんは物に対する情熱が半端ないからめっちゃ商品説明してくれるわけ。
中垣:はいはい。
大森:その中で「本当にいいウールはもうない」みたいな話はしてたし、
中垣:あー、そういう系多いですよね。
大森:「最近のオールデンの新品とか見るとねぇ…」って。
中垣:笑
大森:そういう、
中垣:まあ確かに、そういう説明はありそうですね。
ところで中垣のウェストンがどこに行ってもオールデンに間違えられるのはなんでなの?
大森:
中垣:まあね、そうですよね。
大森:プロレスとかの文脈でもよく言われるみたいなんだけど、にわかファンってすげえ大事って話があってさ、最近になってV字回復気味らしいけど
中垣:はいはい。
大森:だからにわかファンをいかに取り込むかが大事っていう話はあって、
大森:おれはトラヴィススコットのトラックはすごいと思うんだけど、
中垣:そうですね。
大森:
中垣:そうですよね。
大森:そうやって二段構えにするしかないし、そこはみんな分かってることで、星野源だって絶対にそうやって音楽作ってるよね。メロディーは日本人の趣味に寄せつつ、中音が豊かで、
2020年9月10日
Aux Bacchanales 紀尾井町