松田:
中垣:あ、そうなんや。
松田:で、8月は『モモ』やねんな。
中垣:はいはい。
松田:で、おれの中で『モモ』は結構しっくりきてる本ではあるねんけど、いかんせんちょっとファンタジーが過ぎるし、さらに個人的には、
中垣:絵本とか童話って、結構そういう感じになっちゃうよな。
松田:そうそう。ざっくり言うと「時間に追われてんのってどうなん」みたいな内容やねんけど、それを言うなら人生の主体的な目的の見出し方も与えないと、
中垣:まあそうやんな。
松田:『モモ』はそこの提案が担保されていないような気がしていて、それもあって
中垣:はいはい。
松田:そういう中で、もし100分de名著がうまいこと説明してくれるのなら、それを今後パクらせてもらおうかなと思って。
中垣:あー、はいはい。
西川:そういうことだったんだ。
松田:で、100分de名著には指南役っていうのが毎回おるねんけど、
今までの人生で河合隼雄の息子って5万回くらい言われてますよね、ごめんなさい
中垣:あ、そうなんや。
松田:そうそう。
西川:へー。
松田:
京大は概してインナー系
中垣:あー、そうなんや笑
西川:確かに強そう笑
中垣:
松田:あ、そうなんや。
中垣:しかもなんか、総長レベルですごい人やった気がするで。
松田:そうなんや。しかも
想定される相談者への誠実さに満ち、主体的な選択への勇気を与えてくれる文章である
西川:ほうほう。
松田:この文章は、言うたら中退に対する京大のステートメントなわけ。これの何がえらいかって、
中垣:はいはい。
松田:その上で留年を繰り返させる行動や考え方のパターンを説明して、
中垣:実践的なね。
松田:そうやねん。留年してまうようなタイプのやつにもきっちり実践できることを書いてるねんな。
中垣:はいはい。
松田:最後にいたってはスティーブ・ジョブズもビル・ゲイツも中退ですって言って、
全然関係ないけど、京都大学のマークってめっちゃニールズヤードレメディーズじゃない?
中垣:あー…でもさ、大学をストレートで卒業するのは案外これくらいしかいないとかさ、
松田:あー、どういうこと?
中垣:つまり
松田:はいはい…
中垣:そんなこと言われても結局は彼自身の認識の話であって、他人はどうだって話は全然ブレ得るというか…
松田:あー、
中垣:そうそう。まあとは言え、何かしらそれがいいと判断してそう書いてるんやろうけど。
松田:その文章を見て個人的に思ったのは、もちろんそこで想定されている相談者にとっては世間的にはとかどうでもいいだろうし、相談者自身の問題なんであって、そこに一般化された他人が出てきても意味はないと思うねんけど…
中垣:うんうん。
松田:ただ、その文章の意図するところっていうのは、留年したみたいな状況のときって
中垣:まあそうね、それはそうやね。
松田:だからたぶん、自分以外の人と比べてどうこうみたいな話ではないと思うけどね。
中垣:なるほどね。まあ確かに、京大のその文章はそういう意味があるとは思うねんけど、
松田:それは絶対違うね。
中垣:そうやんか。もちろんそういう類の慰めが効く人もいるけど、🦒とかはそうじゃないやん。
松田:あくまで
中垣:そうそう、そこの難しさというかさ。
松田:あ、そうなんや。
中垣:でもね、ちゃんと条件付きにしたよ。週一回しか会わへんって。まあ今度引っ越すしね、ルールとかじゃなくて、どうしても週一回しか会えなくなるよって。
松田:うんうん。
中垣:向こうは嫌がってたけどね、それはもう知らんと。そのことを彼女に言ってるときとかも
松田:そう、ほんまに。
中垣:言いそうになるけど…
松田:それは違うよね。
西川:あー。
中垣:そうそう。おれはね、どっちかというと個人的にはそういうの効くタイプやねんけどね。昔おかんに悩んでることを相談したら「何言ってんの。私がちっちゃい頃なんて~」って言われて、まあそんなもんかって思ってたタイプやねん。
松田:あー。
中垣:だからまあ、
松田:だからあれちゃう?
中垣:はいはい。
松田:つまりあの文章は、
中垣:あー、まあそうやな。確かに、仕事だけが人生じゃないよ的なね。それはそうやな。
松田:うん。
中垣:まあそうか、それでいくと納得はできるな。
松田:でも、おれも彼女と話してるとめっちゃ思うな。めっちゃ言いたくなる。
中垣:こっちの考え方としてはそうやん。「そんなんどうでもいいやんけ」とか思うけど、
松田:どんな理由であろうと、
中垣:そう、そうやねん。
岩波文庫を読んでも学べないことはあるんです
松田:それを尊重できなくなるとね、付き合ってる意味とはって話やねん。
中垣:そうやねん。それはむずい、むずいねんけど…今週話してて分かったのは、それこそ松田が前に銀座で話してたのと近いと思うねんけど、
松田:うんうん。
中垣:で、それがかなったりかなわなかったりってときに、おれの感覚としては、まず
松田:うんうん。
中垣:
松田:あー、はいはい。
中垣:で、結果的にかなわなかったら、それはマイナスやねん。しかもこれは、「自分は相手にこうしてほしい」と思った瞬間でさえなくて、
岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
松田:はいはい。
中垣:だからおれと毎日会えるということを、可能性として彼女が認識した瞬間そこがゼロポイントになるし、
松田:あー、それは確かに。おれも彼女にめっちゃ言われるねん、「だって働いてないねんからいつだって会えるはずやん」って。でもそれはちゃうねん。
西川:笑
松田:逆に、おれが会社で働いてたら毎日会えなくても納得できるっていうのもおかしいねん。なんやろうな、
中垣:そうそう。
松田:
“I swear by my life and my love of it that I will never live for the sake of another man, nor ask another man to live for mine.”
– Ayn Rand, Atlas Shrugged
Source: Ayn Rand(1996)『Atlas Shrugged』Signet
アイン・ランド(2015)『肩をすくめるアトラス』アトランティス
中垣:そうそう。でも、そう考える人って結構いるんやろうな。
だから僕らは友達が少ない
2020年7月31日
Aux Bacchanales 紀尾井町
『モモ』『はてしない物語』で有名なドイツの児童文学作家のミヒャエル・エンデ。お金とか時間とか合理性とか、そういう近代以降に人間をモヤモヤさせてるっぽいものに一言ある作家である。
岩波書店から出ている『エンデ全集』の3巻『モモ』には河合隼雄による解説が収録されている。