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ことば 建築 思索

肩書によって一般化される以前の自分

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中垣建築家の谷尻誠っていう、それこそhotel koéとかの設計をしてる人がいて、別にその人の設計がクソとか言うわけではないねんけど…

谷尻誠 – Wikipedia

松田:はいはい。

中垣:なんかちょっとダサい、童貞っぽいねん

ごめんなさい

松田:ほおほお。

中垣:わりとこう、建築家やねんけどファッション誌にも出てくるような人やねん。それで、ファッション誌って建築家枠っていうのがあるやん。愛用品紹介とかのコーナーでさ…

松田:あー、あるね笑

中垣そこでkolorのコートを紹介しててんな。まあkolorの時点で結構お察しやねんけど、そのコートが、イメージとしてはクラシカルなデザインを化繊で作った的な軽めのコートやって、「そのミクスチャー感がいいと思いました」とか言ってんのね

ごめんなさい

kolor

松田:あー…

中垣:で、引き合いに出したのがシュプリームとヴィトンのコラボやってんな。「僕スケボーやってたんで~」みたいな。あのストリートカルチャーとラグジュアリーブランドがクロスする感じが僕的にはグッとくる、って言ってんねんな。

Source: HikakinTV/YouTube

あー、グッとくる。グッときてます

松田:はいはい。

中垣:まじかよ…とか思って。なんなんやろうね、もちろん彼がそれをいいと思った気持ちは否定されないんだけど、それを補完するために自分はスケボーをやってただとか建築家だとか…自分は審美眼のある人間であって、その自分がいいと思うものはこれだ!みたいな、その言い方必要なくない?って。

松田:うんうん。

中垣逆にじゃあその前提がなかったら、それをいいと思った気持ちは否定されるんですか?って話やん。…まあ否定されるんですけどね。

松田:笑

中垣:そこはまあ一旦置くとしても、その人は結構頻繁にスケボーについて言及してて、え…何それ?って感じ。

「私、発達障害なんです~」と言って自分についての何かを説明しようとするやつと同じで、本質に先立つところの実存を無視したラベリングに振り回されて、一般性の高い説明しか受け入れられない沼に陥っていますね。

c 人間的な豊さに目を向けるには

松田:まあまあ、気持ちは分からんではないけどね。自分がいいと思った、もちろんこれは不可侵な気持ちとしてまずあるんだけれど、それを他人にプレゼンテーションする場合、やっぱり既存の様々な価値体系の上にプロットする必要はあって、「だっておれがいいと思ったんだもん」では済まへんわけやん。

中垣:やっぱそうなんかな。

松田:最近すごい思うねん。雑誌とかで胸から上の写真とともに何かをのたまってる人ってさ、大体みんな肩書があるねん。

中垣:まあそうやんな。

松田:それこそ建築家とか、まあなんでもいいねんけど。それを見るたびに「おれは何者なんだ?」ってすごい思うねんな。アイデンティティがどうとかじゃなくて、今のおれは社会的な説明可能性があまりに低いなと。

中垣:そら灘高校東大卒って書くやろ笑

松田:キツい笑

中垣:でも今ならそう書くしかないで。

松田:いや、でもほんまにそうやねん。そういうおれからすると、おれも何かしらの肩書きが必要やなと前のめりで思うし、全くの他人に対して肩書きを前提に何かを説明するっていうのは分からん話ではないねんな。なんの肩書もコンテクストも前提とせず他人に自分を説明するなんて無理やで。

中垣:それはそうやな。

松田:でもさすがにね、その肩書きに絡めとられて訳のわからんことを言うのはやめろよとは思うけどね。そんなことしてると、そういうふうにしか行動できなくなるからね。

c 虚構の人格

中垣:いや、そうやねん。

松田:肩書きは肩書やねんから、本体がきちんと乗りこなせよとは思うよ。「スケボーをやってた僕」にわざわざならんでもええんやでって

中垣:そうそう。そもそも建築家がファッション特集に出る必要なんて…まあそれはとりあえずいいねんけど。

松田:笑 でもそれを考えるとさ、インフルエンサーって逆にちょっとすごいよな。肩書もクソもないねんで、本人そのままやん。

中垣:あー、そうやんな。

松田建築家の誰々さん、とかじゃないやん。そいつはそいつやん

インフルエンサーの具体例が一切思い浮かばなかった

中垣:実態を表してるもんね。

松田:だからなんか、むしろ誠実なんじゃないかって笑

中垣:確かに確かに笑

2020年8月14日
Aux Bacchanales 銀座