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他人を称賛する際の精神構造

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松田:藤井聡太の話をちょっとしたいな。

中垣:はいはい。

松田藤井聡太があれだけ絶賛される感じが疑問というか、ちょっと不誠実やと思うねん。彼はまだすごく若くて、かつ将棋というほとんどの人に関係の分野で卓越してるわけやけど、もしそうじゃなくてもみんな称賛するのか?って。

中垣:あー。

松田:要は、別に彼を称賛しても自分の立場が精神的に脅かされることはほとんどないわけやん。だからみんなあんなに言うんじゃないかって。

中垣:あー…それはあるかもな。

松田:さらにそうなると、実際に彼の実績は文句なくすごいわけだから、称賛すればするほどいいってなるわけ。

藤井聡太 – Wikipedia

中垣:うん、言いたいことは分かった。しかもそういう構造って結構日常的にあるなとも思う。

松田なんか気持ち悪いなというか、みんなやらしいなって。黙って自分の取り組むべきことに取り組みなさい、って思うねんな。

はーいブーメラン

松田:まあね、彼を称賛しても誰の立場も脅かされないというだけの話ならともかく、だからこそより多く言ったもん勝ちみたいな逆チキンレースになってるのが気持ち悪いねんな

中垣:そうやんな。例えばこれがさ、25歳で年商10億円の若手IT社長とかなら、たぶん話は違うやん

松田:そうそう。テレビ見ながらそれをめっちゃ思っててん。まあそれだけと言えばそれだけやけど…他になんか例あるかな。

中垣:でも結構ある話な気はするな。どうなんやろ、実際世間的にそんな称賛されてるんかな? テレビでは確かに言われてるけど。

松田:おれが思ったのは主にテレビでやで。誰かが言ってるのを直接聞いたというわけではない。

中垣:まあテレビはテレビやからねとは思うけど…人が他人を認める、か。ちょっと話は変わるけどさ、そもそも称賛って結構不思議な行為やと思うねんな

松田:はいはい。

中垣:例えば称賛されてる対象と自分が、程度の差こそあれ同じ特質を持っていて、彼を称賛することは間接的に自分を肯定することになる、こういうのはよくあるし分かりやすいやん。

松田:うんうん。

中垣:けど藤井聡太のケースはそうではないわけやんか。

松田:そうやんな。

中垣:もちろん「同じ人類としての喜び」みたいな話も、まあなくはないと思うねん。

松田:そうね笑 

中垣:うちのババアが「あの子はほんまに立派でね~」とか言ってるのはそれやん。あとはウサイン・ボルトを褒めるとかもそうやと思うねん。「え、そんなことができるんすか…?」みたいな笑

ウサイン・ボルト 100m 世界新記録
Image: AFPBB News

ボルトの世界記録は「空気抵抗を乗り越えた」から、メキシコ研究 – AFPBB News

松田:そうね笑 ウサイン・ボルトはもうね、アポロ計画とかと一緒やからね

中垣:なんかそう考えると、別に藤井聡太もそれと同じなんかなとも思うな、どうなんやろ。でもやっぱり不思議やなと思う。称賛することに特にメリットはないわけやん

松田:うーんやっぱりさ、何かを称賛するっていう行為は、基本的には称賛を通じて特権的に系から抜け出して、自分は批判されないようにするためというか…勝負から一歩引くためにやる行為な気がするねんな。

中垣:うんうん。

松田試合の審判は試合に参加せずに済む、みたいな。

彼は有能だって言った瞬間、構造的に同じ土俵にはいないことになるから、彼のことを脅威だと認識せずに済むやん。

Source: commmon

c 「有能」って言うやつの欺瞞

中垣:あー、それはあるね。基本的にはそれやんな。

松田:自分のことを考えても、別に誰かを称賛することってない気がするねんな。どうやろ…

中垣:でもさっきのタイプの称賛なら結構ある気はするねん。いい本を見つけたときとか、自分も賛成できる内容だったということで称賛するわけやんか

松田:あー、うんうん。

中垣:まあね、それが必ずしもいやしい行為だとは限らないんだけれど。でもほんまは称賛までしなくても、「この著者の言っていることには自分も賛成する」って言うだけで十分なわけ。

松田:笑

中垣:別にすごいとまで言わなくてもいいやん。そこに価値判断は必要ではないわけ。

松田:まあそうね。

中垣:とはいえね、そんな窮屈なこと言わなくてもって話もあるし。

松田:でもそれで言うと、おれが本を勧めるときのノリはウサイン・ボルトパターンに近いかもな

中垣:あー、まあまあ。井筒俊彦のそれとかは結構そうかもな。

井筒俊彦(1991)『意識と本質』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

井筒俊彦(1991)『意識と本質』岩波文庫

c 言葉の扱い方

松田:「こんなにすごい知的達成があるんだぜ…」みたいなね。

中垣:確かに確かに。でもそう考えると、やっぱり称賛はしないよね。おれも村上春樹の本は好きやけど、別に称賛はしないし。

松田:うんうん。

中垣:「これがすごい」とかじゃないもんね。確かにな…

松田:おれがcommmonの文脈で言う「えらい」とかではなくさ、もっと一般的に言われる「偉い」とか「立派」って何を言ってるんやろうって思うねんな。お前は何者やねんと。

中垣:まあそうやんな。称賛か…何なんやろうな。

松田:今度誰かが何かを称賛してたら詳しく聞いてみる? 「今称賛してたよね?」って笑

中垣:でもどうやろ、例えばジョニー・デップをかっこいいと言う、キムタクをかっこいいと言う、これはまたちょっと違うやん

松田:はいはい。

中垣:間接的に自分を肯定するそれではないやん。憧れの気持ちを表してるだけやん

松田:あー、確かに。さっきまで言ってたどれともちょっと違うな。シンプルな憧れやな。

中垣:そうやんな、ワナビーやんな。

c 「好き」の不可侵性とワナビー

うーん

2020年8月14日
Aux Bacchanales 銀座