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ことば 思索

【聞いてください大森さん】説明可能性の高いデザインが嫌い

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中垣説明可能性の高いデザインっていう話を以前からよくするんですよ。

大森:あー、なるほど。

一を聞いて十を知ったっぽい

中垣:具体的には吉岡徳仁とか佐藤オオキとか、ああいう、色は基本白で、でも「ここの角度がこうなっていて…」「ここをこうしたのにはこういう背景があって…」みたいなというか

吉岡徳仁デザイン事務所 – TOKUJIN YOSHIOKA

佐藤オオキ – nendo

大森:うんうん。

中垣:要は、言葉で説明できるコンセプトを形に落とし込んだようなデザイン、それってつまんなくね?って。デザインっていうのはマクラーレンのテールの形のことを言うんでしょって、個人的には思いたいんですよ。

マクラーレン 720S スパイダー
Image: Mclaren

まじで何にも似ていない。こんなすごい車他にない

720S SPIDER – Maclaren

大森:そうだよね、造形が言語化されることの違和感っていうのはやっぱあるよね

中垣:まあ別に、マクラーレンのテールの美しさを言語化する営み自体は嫌いじゃないですけど、そうじゃなくて言語から入ってそれを造形にするっていうのに違和感があるというか。

松田:うんうん。

中垣:もちろん、マーケティング上の動機も考えると分からんではないのだが、でもそこにデザインの神秘みたいなものは見出せないなって。

松田:そのやり方やと手段の必然性がよく分からなくなるもんね

大森:うん、分かる。それ服作ってたときにすげえ思ってて、おれは言語ベースで造形を作ることしかできなかったから、そういうアプローチしか取らなかったんだけど、でもショーの後でその説明をすると、すげえウケがいいっていう


Source: 鹿野洋平/YouTube

中垣:あー。

大森:アンケートで「どの作品が印象に残りましたか」って聞くとおれの作品が結構人気、みたいな。でも本人はそんなの大した価値はねぇなって自覚してるっていう。

松田:あー。

大森:ただそれはそうだろうとも思うよね。説明されたときになるほどって思えるしさ。

中垣:確かに。

大森:まあでも…どうなんだろうね。吉岡徳仁が実際に言語から入ってデザインしているのかっていうのはなかなか判断つかない部分で、なんか、立場上説明が求められて、かつその説明が上手いからこそ社会で活躍してるっていうだけなのかもしれない

中垣:はいはい、それはそうですよね。

大森:まあむずいよね。造形っていうのは言語ベースで生まれるものじゃないってことを理解してる人って多数派じゃないから、そこが難しい。

中垣:受け手側はそうですよね。

大森:そう。言語と造形は別のもので、造形は造形としていったん受け取ったあと、それをどう言語化するのかが問題になる、っていう順番を想定できない人が多数派だから。

中垣:そうなんですよね。そういう、言語ベースでデザインワールドにコミットするパンピーみたいなのが蔓延ってる感じが好かんなと思うわけです。

大森:あとは、造形みたいな一見すると言語的でないものが言語化されることへの快楽みたいなのもあるだろうね。「あ、分かった!」みたいな。

中垣:うんうん。

大森:現代アートのコンセプトを説明するみたいな、あれしょうもないなと思うんだけど、それを紹介されて理解した気になるわけじゃん。「アンディ・ウォーホルはアメリカの大量消費社会を…」みたいな。いや、ウォーホルがそれしか考えてないわけねえだろって

アンディ・ウォーホル – Wikipedia

松田:笑

大森:何の変哲もない便器の価値に納得する、みたいな。

デュシャン 泉
Image: Wikipedia

泉(デュシャン) – Wikipedia

松田:あかんおもろい笑

大森:そこは大衆の欲望に寄り添ってるっていう。で、それが上手い人が活躍すると。黄金比とかもみんな好きじゃん。

中垣:あとは自然由来のとか。

大森:「コルビュジェのあれは巻貝の…」とかね。そうやって言語の地平に落としてもらって満足するっていうのはあるよね

ル・コルビュジェ – Wikipedia

中垣:なんか、人間もっとできるのにというか、それこそマクラーレンだって作れるのになんでそうやって天井下げちゃうの?って。

大森:それはやっぱ、そこが一番気持ちいいからなんだろうね。

中流が蔓延り全てがEDM化する現代、commmon はそのアンチテーゼです

c 不誠実な中流根性

c 小さな喜びを拾えるようになろう

2020年9月10日
Aux Bacchanales 紀尾井町


マクラーレン 720S スパイダー
HeaderImage: Mclaren

2017年にマクラーレン・オートモーティブが発表した720S、そのオープンモデルである720S スパイダー。クローズドモデルのガルウィングドアはルーフ部分まで回り込んでおり、Aピラーにもヒンジを持つダブルヒンジ構造となっている。特徴的なデザインのヘッドライトはアイソケットと呼ばれ、照射角度がステアリングによって変化する。
松田が一番欲しい車です。