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アホ向けの文章

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一応断っておきますが、本文中に出てくるいかなる個人やその著作に関しても、それを全面的に批判する意図はありません。
そりゃあ我々には我々の思うところがありますが、相手さんには相手さんのそれがあるでしょうし、なにより月産数百台のロールスロイスより月産十数万台のトヨタの方が社会的意義は大きいのと同様に、内容の程度がどうであれ、みんなに支持されているってことはそれだけでそれなりにえらいことなのです。

松田僕はイエローでブルーで…みたいな本知らん?

Image: Amazon.co.jp

ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社→

もみ:なんか差別されるやつだよね。概要しか知らない。

松田:そうそう。あれがめっちゃ人気って聞いて、ちょっと読んでみようって思って買ってん

もみ:へー。

松田:普段はあんな本読まへんけどな。ほんで読んで思ってんけど…まずは肯定的な感想やけど、結構いい本やねん

中垣:へー。

松田:イギリスに住んでる著者の身の回りで起こることが本の内容やねんけど、世代間の分断とか、人種間の分断とか、日本に住んでいたらあんま感じないような社会の課題が読みやすく描かれてんねんな

松田:そういう本がベストセラーであること自体、かなり肯定的に捉えられるというか。あれを多くの日本人が読んだということはかなり意味のあることやと思う。

もみ:うん。

松田:以上が肯定的な意見やねんけど、それ以外に様々に問題があって…例えばさっき中垣が言っていたような、テクい表現、ユーモアになり切れてないようなユーモアを挟む頻度が多過ぎるねんな

c アホの書く文章→

もみ:笑

中垣さっきGINZAのコラムをディスりまくっててん

もみ:二人で?

中垣:そう。

松田:で、例えば…

顔の半分はあるかと思うぐらい大きな丸い瞳でじっとわたしを見ている。

Source: ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』新潮社

松田:みたいな表現があるわけ。

中垣:あー。

もみ:あー。

松田こういうのが全編にわたって続くねん

中垣:疲れるな。

もみ:海外小説だからじゃないの?

松田:いや、日本語で書かれたやつやねん。

松田:で、こんなんすぐお腹いっぱいになっちゃうなと思いながら読んでてんけど、結局お腹いっぱいになることなく2時間で読み終わってんな。1,500円も払ったのに。

中垣:笑

松田:どういうこと?って。岩波文庫で1,500円も払ったらすごい分厚い、場合によってはちゃんと読むのに半年くらいかかる本だって買えそうなもんやのに

Image: Amazon.co.jp

マックス・ヴェーヴァー『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』岩波書店→

ただしちゃんと読み通す蓋然性は著しく低いので、効用の期待値は必ずしも高くない

もみ:笑

松田2時間で1,500円なんて、そんなん映画と同じやん。それならそっちの方がよかったやん。

彼は学生なので映画が1,500円です

松田パンピー向けの本って全部こうなんかなって。前に『阪急電車』を読んだときも同じようなこと思ってん。ほんまに素人みたいな文章で、小憎い言い回しのなり損ないみたいなんがあっちこっちに転がってるねんやんか

commmon読者に薦められる本ではないのでリンクは貼りません

中垣:植竹は阪急電車のロケ地巡って楽しかったって言ってたで。

松田:なんで今それ言ってん。そんなことで人を嫌いになりたくない笑

松田:まあなんしか思ったのは、文章が進んでいく中で起伏ってあるわけやん、例えばさっきの引用の部分って、描写の起伏のひとつのピークなわけよ

もみ:確かに。

松田:で、その起伏が読者の閾値を超えると「おやっ」って思う、面白いと思うわけやん。でも普通の人はその閾値が結構高くて、大仰な表現しか拾えないねんな

中垣:あー、そういうこと?

松田:そう。起伏がなだらかなところに関してはもはやちゃんと読んでいないまである。そうやって鈍感な頭でピークだけ拾って読んでたら、きっとお腹いっぱいになることはないと思うねん

もみ:はいはい。

松田:でも真面目に一字一句読んでたら…例えば黒人の赤ちゃんがじっとこっちを見ているってシーンだけで、その目がでかいことなんて分かるわけやん

高校で使ってた地理の資料集で見たことあるはず

中垣:うんうん。

松田でも普通の読み方をしていると、さっきの引用みたいな表現をされて初めて「あ、目でかいんだ」って気付くんじゃないかって

中垣:そういうことか。なるほどね。

松田:で、別にさっきの本の著者がそういうことをしがちとかじゃなくて、大衆ウケするような文章を描こうと思ったらそれが有効なテクニックなんじゃないかって

中垣:でもその著者は果たしてテクニカルにそうしたのかな。

松田:そう、もし言語能力が抜群に高くて意図的にそういうことをしているならそれはすごいねんけど、きっと実際はそこそこの人で、でもそういう人が書いているからこそパンピーにウケる、みたいな構造なんじゃないかとは思ってる。

中垣noteってまさにそういう感じやんな

松田:せやねん、世界観はまさにnoteと一緒やで。しかもそうやって大仰に大仰を重ねた文章やけど、意味内容としては大したこと言ってないから2時間で読み終わるねん。途中でpatagoniaの新作調べたりしながらやのに。

Image: patagonia

中垣:笑

もみ:どれくらい分厚い本なの?

松田:Kindleで買ったから分からん。

中垣:なんなんやろう、流行りなんやろうね。それっぽい表現でふらふら〜って書くのが

松田:そうなんやろうな。気持ちは分かるよ、そういう文章読んだらちょっとかしこくて文化的な気分になれるもん

中垣:あれと一緒やんね、POPEYEにもよくおるグルメライターの平野紗季子。分かる?

Source: sakikohirano/Insttagram

松田:知らん。

中垣:おれらとあんま歳変わらへんねんけど、フワッとした文体でグルメレポート書くことで有名で、電通か博報堂かにいながらグルメレポート書いて有名になって、今はもう独立してやってる、みたいな人

また、ロシアから無限の宇宙に打ち上げられたライカ犬のエピソードを歌詞にしたのは「彼女の言葉のセンスは天才的」と絶賛する平野紗季子さん。〝未来のない〟永遠の時間を歌ったセンチメンタルな詞はとても印象的だ。

Source: Ring of Colour

藤原ヒロシに天才って言われたらしい。おれなら泣く

松田:うんうん。

中垣その人は微妙なラインで、ちょっとウザさはあるねんけど、でもまあまあ、POPEYEで読む分にはそれなりに楽しく読めるみたいな感じ

松田:うんうん。

中垣とにかくそういうのが流行ってるというか、なんか、イージーと言うか…辛いね

松田:今はもう見なくなったけどさ、昔のヤンキーとギャルしかいなかった頃のインスタって色調バグってたやん。コントラストブチ上がってるみたいな。

もみ:笑

松田あれと一緒なんやろうな。流行りの味付けみたいな

2020年3月19日
Aux Bacchanales 銀座