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生きづらさ

強迫ピープルの生態

4 years

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松田今までペット飼ってるやつの気持ちが全然分からへんかってんけど、ペットとPepperくんの話でしっくりきたわ。逆に河東もそうやろうやけどさ、あらゆるもののコンディションをアンダーコントロールにしたい神経質の民にとっては、日々の生活を合理的で秩序立ったものに維持するだけで精一杯やから、ペットを飼うなんて意味が分からんねんな

c ペットとPepperくん

中垣:あー、そうやね。河東ともよく、サーフィンに行くのはペットを飼うことと同じっていう話をするねん。サーフィンも死ぬときは死ぬというか、自分のコントロールできないものに包まれることやって河東は言ってて

松田:なるほどね。

河東:サーフィンで潔癖とか言ってられへんもんね。海入ってもうてるし。

松田:そこまでいったら諦めるもんな。

河東:松田もたぶんそうやろ、諦めるときは諦めるやろ。その後に風呂に入れさえすれば別にええねん

松田:そうやんな。

風呂に入るのは秩序の零点規正

河東:でもそれで思うのが、どうしておれらは掃除を10日に一回にできないのかってことやねん。10日に一回の大掃除日を設けたら毎日の掃除の時間を省けるかもしれんって思って、今まで何回もトライしてるわけ。

c アスペルガー症候群って診断された

中垣:うんうん。

河東:「今日は掃除をしないデイ」って思ってるねんけど、気付いたら自分の手はクイックルワイパーに伸びて、重曹水拭きシートのことを考えてるねん

松田:分かる笑

河東:これってなんなん。

中垣おれは知らん。おれはその辺ライドできてて、まじで気分で掃除してるから。

松田:だからペットの話でさ、中垣はサボテンとか世話できるやん。

Image: Amazon.co.jp

(2020)『BRUTUS 合本 新・珍奇植物』マガジンハウス

中垣:そうやね。

松田:おれサボテンでも結構しんどいもん。たまごっちがギリギリ。それさえも、たぶん一週間に2~3回は工場出荷状態にリセットすると思う

iPhoneの設定も、全てのパラメーターを把握している

中垣:笑

河東:けどおれはこの解決法について、一回ちゃんと松田と考えたい。松田って解決したいと思ってる? おれは思ってるねん

松田:いやー、おれはこのままやっていこうと思ってるよ。一生狭い部屋に住めばいいし。おれはそうやって解決するかな。

Image: WIRED

ケアする対象が多くなると認知資源が死ぬので、狭い部屋に少ない荷物で暮らすしかない

河東:おれは今度タカと一緒に湘南に住むねんけど、今住んでる部屋も残したままにするねんな。家賃補助もあるし。

松田:はいはい。

河東:で、湘南には最小限の荷物しか持って行かへんねん。これがもうワクワクするわけよ。

松田:あ、なるほどね笑

河東そこは自分のものではない、タカと住んでいる部屋ってなるわけやん

自分のものじゃないから秩序に固執する必要がないってこと。独特の理論である

中垣:あー…なるほど…

松田:分かるわ。

河東:で、別にタカが部屋を汚くするわけでもないねんけど、それでもおれの基準よりは圧倒的に散らかったりするわけよ。でもおれのことじゃないから、それに指図することはできない。

中垣:笑

河東:かつ湘南の家は自分の部屋も最小限で、寝袋持っていってそれで寝るしさ。で、スーツを一着だけ置いといて、普段の服はジーパンとTシャツくらいにして、ついにおれは自分の領域を残したまま、こだわりを捨てる生活にトライできるっていう

ハードコア曝露療法

曝露療法 – Wikipedia

中垣:あー。

松田:めっちゃ分かるよ。

河東:仮にこれが、今までの環境を全部捨てて身ごと行けって話なら、それはためらうわけ

松田:バックアップが必要やもんな。

河東:でも今回は、今までの環境をキープしたままこれができるわけ。だからワクワクしてる。

松田:めちゃめちゃ分かるわ。今のおれの生活は自分の部屋と彼女の部屋の二本立てって感じやねんけど、これがほんまにいいねん。彼女の部屋はむっちゃ散らかってんねんけど、自分の部屋がちゃんとあるから別に大丈夫やねん

河東:そうやんね。

松田中垣とタイに行ったときもそんな感じやった。タイなんて全部が全部汚いわけやねんけど、「東京に帰ったらおれには綺麗な部屋がある」って思ったら、汚い街でも全然ライドできるねん。

タイで着るためだけに新しい服買って、日本に帰ってきたら捨てた

中垣:なるほどね笑

河東:ほんまそれやねん。要はサーフィンの帰りのシャワーと一緒よ

どれだけぐちゃぐちゃになっても、シャワーを浴びたらチャラになる

中垣:でもちょっと分かるかも。おれ掃除でそういうことはないんやけど、インテリアに関してはかなり狂人レベルで…

松田:はいはい。

中垣:前の部屋に住んでたときとか、毎日インテリアのこと考えてたもん。「あれをこうしたら…」って。だからある日いきなりベッドが白く塗られてて、彼女が驚くとかがあってんけど…

松田:笑

中垣:でも、「壁紙の色はこれじゃない…」とか「なんでここの幅が2メートルしかないねん…」とかがめっちゃあって、それが嫌で嫌で岸名の部屋に転がり込んだみたいなところが若干あって

勝手過ぎでわらう

松田:あー、なるほどね。

中垣:その後も、別の友達の家の階段の下の押し入れに住んでたりしてんけど、そのときもインテリアとかは何も考えなくてよかったから楽やった。そうやって暮らしながら次の部屋のイメージを醸成していって…

中垣:「よし、これならいける」って思って引っ越したら、今度は隣が統合失調症やってんな。

松田:笑

河東:ごちそうさまです笑

中垣:超絶望やった。でも今もちょっとあるねん、他人の家に引っ越して、インテリアとかどうでもよくなる生活を送りたいなっていうのは

松田:でもさっきの河東の湘南プラン、それ絶対効くと思うで。おれ中垣とタイに行ってから、強迫ちょっとマシになったもん

河東:普段の生活でってこと?

松田:うん。なんて言うか諦めやすくなった。「まあそれはそういうもんなんじゃね」みたいな。

河東:それをすごい期待してるねん。おれ朝起きられへんやんか、だから朝5時に起きてサーフィンしてから会社に行くみたいなことはおよそ不可能やと分かってるねんけど、それでもなんで引っ越すかって、もしその生活を通しておれの心が解放されたら、そのための時間くらいは余裕で捻出できるからやねん

常人には難しい話をし出した

松田:はいはい。

河東:おれ前の部署のとき、どんだけクタクタになって深夜1時に帰ってきても、毎晩掃除していつの間にか3時になってやっと寝て、また5時に起きるとかやっててんで

中垣:やば。

河東明日は朝5時起きやから掃除なんてほっといて寝る、とはならへんねん。ほんで「夜寝られないんですわー」てなってるねんけど、それはほんまに寝られへんのと一緒やねん。寝ようとしてない不眠症やねん。

松田:笑

中垣:なるほどね笑

河東:だからそのことを考えたら、掃除にさえこだわらなくなればおれはもっと早く寝られるはずやし、サーフィンのために朝5時に起きられるようにもなる可能性が存在するねん。今は8時起きやからそれより3時間早よ起きなあかんねんけど、3時間くらいなら毎日意味分からんことに割いてるもん

服畳んでクイックルワイパーかけてシーツのシワ伸ばして3時間

中垣:なるほどね、なるほど。

松田:ほんまそれやんな。おれ今はそんなことないけど、一時期朝起きてから家出るまで2時間以上かかってたことあるもん。でもタイに行ってからは、「今日のおれはタイのマインドで過ごす、細かいことは知らん」みたいに思えるようになった

中垣:笑

河東:誰しもさ、仕事の飲みでどうしようもなくつぶれて、酔って帰ってきてトイレで吐いてまう夜とかあるやん。家のトイレで吐いてそのまま寝てもうた、みたいな。これは意思ではどうしようもないやん。

中垣:そうやね。酔ってるもんね。

河東:おれはそういうとき、ほとんどの場合は次の日帰ってきてから必死で元に戻すねんけど、吐いたその次の日もまた飲み会やったってことが一回あってんよ

中垣:はいはい。

河東:で、その飲み会でも吐いてはないけどつぶれて、二日間にわたってトイレがゲロっててん。でもそのときは、それを一週間放置することができてんな

もちろん放置と言っても、トイレを流すくらいのことはしているわけで、ただ少しでも飛沫が飛んだ可能性のある部分を全て拭くとか、便器を漂白剤で洗浄するとか、そういう除染レベルでの掃除を一週間せずにいたという話

松田:おお。進歩やね。

河東:その間おれは、毎日きわめて健やかやったわけ

中垣:笑

河東:けどその後の土日にちゃんと掃除をしたら、もう元に戻ってもうてん。この時間をおれはできるだけ長くしたいわけよ

中垣:なるほどね。

Image: Amazon.co.jp

発達障害系の本には「生き辛いと思ってたら障害でした〜」的な弱者が傷を舐め合うためのエッセイとか、「発達障害の人が〜するための本」みたいに網羅性の低いハウツー本めいたものが多いのですが、これは簡潔で過不足がなく、大学の学部生向けの入門授業っぽい内容でおすすめです。

小野次朗・上野一彦・藤田継道編(2010)『よくわかる発達障害 – LD・ADHD・高機能自閉症・アスペルガー症候群』ミネルヴァ書房

松田:おれこれ系で一個やばいエピソードがあって、やば過ぎてあんま人には言いたくなかってんけど…

河東今日はおれがおるから大丈夫やで

松田:前にすごい疲れてる日があって、そのまま家に帰っても、ちゃんと掃除して決まったやり方でシャワー浴びて寝るのは絶対に無理やな、ってなってんな。

掃除もそうだし、ストールとニットをブラッシングするとか、そういう強迫ルーティーンが山のようにある

中垣:はいはい。

松田:でもそれを守らないと部屋の秩序が崩れるわけ。

河東:うんうん。

松田:「どうしよう…」って思って、家から歩いて5分のビジネスホテルに泊まった

中垣:笑

河東:ビジネスホテルに泊まったことはないけど、おれが職場の近くのサウナに行く理由ってそれやで

松田:そうそう、そうやんな。

中垣:笑

河東:このまま家に帰っても、自分がしなければいけない日々のルーティーンをこなそうとすると確実に明日遅刻するってなったら、自分の管理する場所ではないサウナに行って、よう分からん作務衣みたいなんを着て、そこが綺麗かどうかなんて気にせんと横になって、9時まで寝て会社に行くねん。これは絶対的に幸せなわけよ。

河東:「なんで家帰らへんの? 家じゃないと疲れとれへんやん」って言われるけど、いやアホかと。サウナに泊まる方が100倍疲れとれんねん、っていう

松田:そうそう、ほんまそう笑

中垣:なるほどね。

河東:おれが同期の家に泊まるのもそれやで。同期の家に泊まったら、終業後の時間の長さに衝撃を受けるわけ

松田:おれもそのノリで人の家泊まることあるな。

中垣:今日河東と話してて思ってんけど、おれと行動パターンがすごい似てんねんな。朝眠いとか、準備遅いとか、もう一服したいとか、全部一緒やねんな。

松田:はいはい。

中垣:だから気を使わんで済むみたいな話をしとってんけど、今の話を聞くと、河東はおれの怠惰さと松田の神経質が合わさったハイブリッドタイプやねん

松田:うわ地獄やん。

中垣:地獄やで。

河東だからおれは究極に時間がないねん。24時間じゃ足らへん。

中垣:笑

河東:毎日めっちゃ忙しいねん、ほんま。

中垣:あかんおもろい笑

河東:だからおれには社会人なんてできるわけないねん。寝る時間なんて無いに決まってるねん。

中垣:そうやね。

河東:ほんまに不適合過ぎるわけよ。

河東:けどな、たぶん松田は分かってくれるけど、友達の家に泊まったりしてシャワー浴びた後も同じパンツ履いてるの、結構気分ええねん

松田:分かるよ、育ちいいやつがグレたときの気持ちやんな。「やってやったぜ…」って

中垣:なるほどね笑

河東:おれは今、あっちの自分に勝ってると。しかもなんなら、おれらの厄介な敵、干すときとかにいろいろ気にせずにはいられない洗濯物が、一日分少なくなったっていう…

毎日同じ服を着るために加えて洗濯の頻度を減らすため、同じシャツを2ダース持ってたことがある

2020年5月30日
Aux Bacchanales 銀座