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思索 生きづらさ

他人に共感ができなくて困っています

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中垣共感能力の話をしたくて

松田:はいはい。

中垣:松田さ、おれのことを変って言ってたこと、ちょいちょいあるやんか。

松田:うんうん。

中垣:おれ、あんまりそれ自分では分かってなくて、わりかし普通やと思ってたの。でも…

2000歩譲っても普通ではないと思う

中垣:会社で同じ部署に同期が5人おるねんけど、このあいだ同期会があったときに、そのうちの一人の飼ってる猫が亡くなったらしくて、その日に火葬やから同期会に行けなくなったって連絡があったのね

松田:はあはあ。

中垣:で、そしたらみんなが…

松田:笑

中垣:「かわいそう」「あんなに可愛かったのに」って次々言ってて…「ウーム🤔」って思って

松田:まあそうやんな。

中垣別に、今となっては分かるねん。おれがもし猫を飼っててそれが死んだら、おれも超悲しいだろうなって。だからその人もきっと悲しいはずだし、何か声をかけてあげるべきだ、みたいな。

松田:うんうん。

中垣でもおれは頭の中のそのプロセスを経なければ、慰めるようなことが言われへんわけ。今まではみんなもそのプロセスを経て言ってるんだろうと思っててんけど、ワンチャンそうでもないのかなって気もしてて。

松田:はいはい。

中垣:そういうふうに頭で考えなくても「いや、だってかわいそうじゃん🥺」って思えてるんじゃないかって。

松田:どうなんやろう。中垣のやってるのはさ、言うたら『プロカウンセラーの聞く技術』的な、技術の話やんな

東山紘久(2000)『プロカンセラーの聞く技術』創元社
Image: Amazon.co.jp

東山紘久『プロカウンセラーの聞く技術』創元社

中垣:そう。でも彼らの共感は技術とかじゃなくて、結構生まれつきに近いアレなんじゃないかって

松田:はいはい。

中垣:それで思い出してんけどさ、高校生のとき、同級生のお父さんが亡くなったやん。そのとき、家に帰ってそのことを話したら、なんかおかんが泣き出して

松田:笑

中垣:びっくりするやん? 「はぁ…?」って感じで

松田:そうやんな。

中垣ほんまにハラハラと泣き出してん。それって別に、考えてとかじゃないやん。ただただ共感してるわけやんか。そういうことは、できる人はできるんじゃないかって。

松田:たぶんそうやねん。それができる人って、その瞬発力で実際にそう思えてると思うねん。社交辞令的なものではなくてね。

中垣:うん。

松田:たださ、そういう共感って強度はあるんかな?

中垣:強度もあるんじゃない? だって泣いてるし。

共感の強度とか言ってるやつ、まさに共感能力低そう

松田:それは共感に強度があるっていうより、メーターが上がりやすいみたいな話じゃないん? 共感の閾値が小さいから、わずかなインプットですぐ泣く。

中垣いや、でも閾値の問題じゃないと思う。おれも少しは心が動かされてる、とかじゃないもん。おれの心は動かされてへん。

松田:…みんなとの差が大き過ぎて、相対的にはほぼゼロってことではなく?

中垣:いや、違う。おれの心は動いてない。友達の飼い猫が死んだくらいでは、別に何も悲しくない

松田:笑

中垣:そらそうやん、当たり前やん。

松田:まあ分かるよ。おれもそう思う。

中垣:友達の親が死んでも、別に悲しくない。そこで、もし自分の親が死んだら…とか考えだすとまあ悲しいけど、それはおれがおれとして悲しいだけであって、友達の境遇には別に関係ない

松田:そうやんな。

中垣:まあ男女の差みたいな話は多少あるかもしれへん。

松田:あー。

中垣:とにかく、この前彼女とめんどい感じになって話し合ってるときも思ってん。「なんでこんなふうに言ったん」って言われて、「まあ今考えてみると言わなくてもよかった気もするけど…」みたいな。おれは共感能力が無い気がする。

松田まあ彼女はね…おれも彼女に「宇宙人と付き合ってるみたい」って言われたことあるもん。でも分かる、おれもそう思ってるから。

中垣:笑 村上春樹っぽい。なんかそんなんがあるねん、「あなたは月から来たんでしょ」「早く月に帰りなさい」って。

村上春樹『ダンス・ダンス・ダンス(上)』
Image: 講談社BOOK倶楽部

c 村上春樹(2004)『ダンス・ダンス・ダンス(上)』講談社文庫

松田:共感能力なぁ。そんなん分からんよな

中垣:そう。でもそれがあるとしたら、ある意味すごいよな。おれ、自分がライブが好きじゃないのもそういうことやと思うねん。周りが楽しくても別におれは楽しくない。

松田:はいはい。言ってたな。

中垣:でもね、自分も大人やしこういう場面ではこう言った方がいいのかも?みたいな、そういうことはちょいちょい思うねん。

松田:笑

中垣:そういうことはよくある。

松田:ごく個人的にはやけど、自分は自分が直接関われる範囲をきちんと認識していて、その範囲の外にあることは自分にとってはどうでもいいことだと思っているから、いまいち他人に共感しきれないって解釈してるな。自分にはどうしようもないことには興味を持たないようにしている、というか

中垣:いやー、おれは能力の欠如やと思ってるよ。これはコントローラブルな領域ではない、おれの意思とかは関係ないわけ。分からへんもんは分からへんねん

松田:うーん。

中垣:それに、共感した方が自分にとっても都合がいい場合だってあるから、できるものならしたいよ

松田:でもまあ猫死んだって言われてもな、共感はできひんな。

中垣:そうやんな。共感…ってなんなんやろ?

きょう‐かん【共感】

(sympathyの訳語)他人の体験する感情や心的状態、あるいは人の主張などを、自分も全く同じように感じたり理解したりすること。同感。「―を覚える」「―を呼ぶ」

Source: 新村出編『広辞苑 第六版』岩波書店

こんなん無理やん

松田:やっぱ考えるにつけ、おれにとっての共感は『プロカウンセラーの聞く技術』の実践でしかないわ

中垣:そうやんね。

松田そういう積極的なコミットメントとしてなら、ほぼどんなことにでも共感はできるよ。それは意志と技術の問題やから。

中垣:まあそうね、そうなんだけど…

松田:ただ普段からするもんではないし、そんな瞬発力をもってできるもんでもない。

中垣:うん。

松田:このあいだ、親戚が死んだとかで彼女がさめざめと泣いててんけど、それもいまいち意味分からんかったもん。意味分からな過ぎて、おれがそう思ってることがバレへんかどうか気が気じゃなかった

中垣:そうやねん。人が泣いてるときとか、「困ったナァ…」って思うよな。

松田:そうそう笑

中垣:「やれやれ」やで。そういうときは「『花様年華』のトニー・レオンならどうするだろう」としか考えてない

Source: Bertollini/YouTube

松田:ゲームにしちゃう笑

中垣:そうそう。あとこれ完全に余談やけど、植竹にムカつくポイントが今はっきりした。

植竹ごめん

松田:笑

中垣:あいつ別に共感能力高くないのに、共感してエンジョイしてるフリをすごいするねん

松田:なるほど笑

中垣:でもこないだも言ってたやん、自分の中に陰キャな部分があるって。

松田:合コンでタバコ吸いに行っちゃった話とかな。

中垣:そう。結構こっち側というか、あまり上手にそういうことができる方ではないと思うねん

植竹ごめんって

2020年7月3日
Aux Bacchanales 紀尾井町


ウォン・カーウァイ『花様年華』
HeaderImage: Bunkamura

1960年代の香港を舞台にしたウォン・カーウァイによる不朽の名作、『花様年華』。2000年公開。艶やかなチャイナドレス、慎重でありながらも強烈な慕情、昼夜問わず湿っぽくベタつく香港の空気、トニー・レオンの諦念、これらを楽しめるっていうのは大人になったってことなのです。
九鬼周造の『「いき」の構造』との親和性が非常に高い。