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したいこと 思索

「している限りにおいてそれがしたいこと」ってどういうこと?

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きゅー「している限りにおいてそれがしたいこと」っていう、そこをもう少し言葉を尽くして説明してほしい。している限りにおいてっていうのが…

中垣:まずは松田が言っていた、サルトルの例があるねんけど…

サルトルが学生から相談されてんねん。ほんでその学生は祖国への愛のために戦線に赴くか、母親への愛のために実家に残るか迷ってんねんな。祖国のために戦争に行くのはいかにも大きな愛の実践であるけれど、もしかしたら前線の手前の補給基地に配備されて、直接祖国に貢献することはないかもしれない。また実家の母親は自分以外の家族は無くしていて、自分がいなくなれば独りになってしまう。実家に残れば母親への愛は確実に全うすることができる。うーん、大きいが直接貢献できる見込みは薄い愛か、小さいがしかし確実に実践できる愛か…って言って。

Source: commmon
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J‐P・サルトル『実存主義とは何か』人文書院→

松田:相談者の彼は、国への愛と母親への愛との間で揺れてたわけよ

中垣:で、「どっちも愛してるしどうすればいいんすか…」って言う相談者に対してサルトルは、戦地に赴くならばそれが国を愛しているということだし、家に残るのならそれが母親を愛しているということだと

松田:なんて言うのかな、具体的な行動以前には価値判断があるって考えがちだけど、具体的な行動から切り離された、具体的な行動に紐付けられていないような価値判断って、それわざわざ措定する?みたいな。価値判断って結果論でしか言及し得なくね?って

松田:だから「愛しているからそうするというよりは、そうすることが愛でしょ?」って感じかな。

中垣:そうやね。

松田:そうすることがまさに愛なのであって、愛しているけれども母親を捨てて国を取ったのなら、それはその限りにおいては母親を愛していなかったとしか言えないよねって。

中垣:まあ、あえてそこまで言い切るならね。

松田:そうやな。別にサルトルもそこまでは言ってない。

西川:えー。

中垣:まあこと愛に関してはそんな気がするけどね

きゅー:それ、理性的な選択ができないってことにならない?

松田:そう、それはまあそうやねん。

中垣:そうやね。

松田そこが実存主義のイズムとしての弱さというか

中垣:それでレヴィストロースに殺されたんやんな笑

ファクトチェック甘め

松田:でもそこは個人的に納得はいってるねん。それによって理性的な判断ができなくなるというよりかは、具体的な行動に反映される以前の価値判断みたいなのを、わざわざ言語的に取り上げなくてもええんちゃう?って話ちゃうかな。

中垣:理性的な判断って言うとね、むずいよね。

松田:理性的な判断ができないっていうよりは…うーん、まあ確かにそう言い得るとは思うけどね。国への愛か母親への愛かの話でも、最後はえいやなわけやん

中垣:そうやね。

松田:ただ、ここで実存主義のいいところは、えいやで判断したことを後から遡及して批判することはないわけやん

中垣:うんうん。

松田:そこは救いかなって。

中垣そもそも理性的な判断っていうのがブラックボックスというか落とし穴やと思ってて

松田:そうそう。

中垣そもそもの間違いは、愛みたいなフィット感ベースの話を理性的な判断に持ち込もうとしたことで、そこで既にその青年が闇落ちしてるって話

賢くはありたいが、別に理性は信用していない

松田:うんうん。

中垣:その天秤が彼の主題として上がったのなら、それはもう愛じゃないんじゃないかって。それを愛って言うのは綺麗事じゃねって、おれは思っちゃう

松田:確かに確かに。お前は愛に関して迷ってるわけじゃないよって。

中垣:愛が定量的なものならそれでもよかってん。彼は愛を定量的なものとして判断しようとしているけど、彼が成し遂げたいのは絶対的な愛ってところがややこしくて

松田:そうね。

中垣51:49でお母さんのとこにいるってに決めたくせに、「マミーを愛したんだよ」って絶対言うでしょって話

松田:笑

中垣:僅差でマミーを選んだとは絶対に言わない、そういう話。

西川:笑

中垣:でも今日の話の大事なところはそこな気がする。理性的な、というか定量的な判断をしようとするわりには、意思とか希望とかの崇高さを信じようとする人間の愚かさみたいな、そういうことをおれは言いたかった

松田:なるほどね。

中垣:「できない」「金がない」みたいな現実的なことを天秤にかけるくせに、自分の夢は綺麗に語るよねっていう

松田:はいはい。

中垣数字の世界ではない「やりたい」を信じたいのなら、今すぐやれよ

Image: Amazon.co.jp

やりたいことができない人に捧ぐ本

岡本太郎『自分の中に毒を持て』青春文庫→

松田:そうね。

中垣:子供が絵を描くのはまさにそれな気がする。お母さんに寝る時間やでって言われても描き続けるもん

松田:先週のお金の話もそうやけど、やりたいって言ってんのに数字の話してんのがおかしいねん

c 「お金がないからできない」のなら辞めちまえよ→

c (続)「お金がないからできない」のなら辞めちまえよ→

中垣:そうそう。やし、もし数字の話としてやりたいのなら、それはキチッとそういうものとしてやればいいねん

松田:そう。その場合は村上隆になればいいねん

林修でも可

中垣:笑 極端な話そうね。

松田:だってあいつ、卒業制作で日本画で一番になれなかったからあれやってるねんで。

村上隆 – Wikipedia→

中垣:立派やんね。

2020年2月28日
Aux Bacchanales 銀座