大森:
松田:僕、今年大学8年目だったんですけど
大森:放校より退学の方がいいんだ。
松田:放校っていうのは、大学が入学の事実を認定してくれなくなるんですよ。最終学歴が中退じゃなくて高卒になっちゃうんですね。
大森:あ、そうなんだ笑 それはまずいね。
松田:で、まあ人生どうしよって話ですね。
大森:はいはい。
松田:まあね、ほんまに今の今困ってたらそれはそれでなんとかしますし…だから、これを僕の悩み事としてぶつけるのは、やや不誠実なところはあるんですけど。
大森:とは言え、中長期的に困るのはやや予感していて…ってことだよね。
松田:少なくとも年内にはお金が回らなくなりますね。
大森:なるほど。てか松田くんってさ、
松田:あー、思わなかったですね。
大森:松田くんって結構本読むじゃん。
中垣:おれもそれ思ったことあるわ。なんか…まあ単位が取れないみたいなプラクティカルな要件を満たせなかったというのはあれど、それこそcommmonの中のちょこっとした要約の文章とか、
未来について説明するとき、ほとんどの人はまるで天気予報と同じように、現在の状況を分析し、過去の同じような状況で何が起こったかを参考にして予測的に話しますが、それは明確に間違っています。
Source: commmon
過去から未来への時間の流れは、いわゆる「物語」や、因果のドミノ倒しのようなものではありません。一般的に物語には、それを俯瞰し作り上げる作者がいる一方で、我々の現実においてはそんなものは考えられません。どれだけ俯瞰してみたところで、その俯瞰者もまた物語の一部分であり、その物語から抜け出ることは不可能だからです。あるいはスティーブ・ジョブズの言葉を借りるなら「You can’t connect the dots looking forward. You can only connect them looking backwards」であり、過去から未来にかけて展開される我々の物語は、事後的に解釈することしかできません。我々は物語の主体であって、作者ではないのです。
そのため、我々が自身の物語に介入し未来を創造するには、それを俯瞰して既にあるものから何が起こるかを予測し、それに自身を最適化するのではなく、まさに今この瞬間をもってその一挙手一投足を主体的に行使し、過去の因果から切り離された、非連続的かつ飛躍的な一歩を踏み出すことこそが必要です。
我々の未来は明日の天気とは違い、そこには主体とその意志や期待が存在し、またそれ無くしては何物もあり得ないのです。
我ながらほんといいこと言う
松田:それで言うと、
中垣:笑
大森:もったいな笑
松田:
大森:なんで受験勉強できたの?笑 意味が分かんないだけど。
松田:自我が芽生えてなかったんじゃないですか?
中垣:笑
大森:自我芽生えんの遅過ぎでしょ。
中垣:例えばさ、まあ研究室にもよるし周囲の人にもよるけど、仮に松田にすごくフィットするポストが与えられたとしたら…?
大森:いや、そこまで辿り着けないっていう話なんでしょ?
中垣:もちろんそうなんですけど、それができたとして…
松田:いやー、どうやろ。僕が最後の最後、これを落としたらほんまにあかんっていう単位を落とした具体的な瞬間っていうのがあるわけなんですけど、
誰でも行けることがミーム化している印哲にさえ行けない
大森:あ、そうなんだ。
松田:で、どのようにしてその単位を落としたかって、そもそも
大森:うんうん。
松田:で、僕はその授業一回も出てなかったんですけど、
大森:うん。
松田:で、返ってきたメールが、「事情はよく分かりました。後期では印哲に行きたいということなので、そこに行って何をしたいかを400字以内でこのメールに返信してください」って内容だったんですけど、
中垣:笑
松田:なんて言うのか、いまいちしっくりこなかったんですよね。別にだらだらしてて返信できなかったとかじゃなくて、
中垣:実存的…笑
大森:それはさ、ズルをしていることに対する後ろめたさとかじゃ…
松田:ないですね。
そんな感情あるわけない
大森:じゃあ単位を取るためだけにその文章を書くっていうことが…
松田:そうそう。
大森:なるほどね。
松田:そういう次第なので、研究者になるならないは僕の選択肢ではなかったですよね。まあそれさえ乗り越えてたら、研究者もわりとしっくりくる生活だったのかなとは思いますけど。
中垣:でもあれやで、大学の教授って教養学部で教えなあかんねんで。
松田:まあそれは別にできると思うけど…なんか、
中垣:笑
大森:そうだ、大学の先輩から似たような話を聞いたことがあるんだけど…
松田:うそ、どんな方なんですか?
大森:その人は今作家で、
中垣:へー。
大森:で、今の松田くんは作家っていう職業に出会う前の先輩みたいなフェーズなわけじゃん。
松田:はいはい。
大森:けど彼の場合、小説は「書くか…」って思えたらしいから、
知ってた
“The only way to be truly satisfied is to do what you believe is great work, and the only way to do great work is to love what you do. If you haven’t found it yet, keep looking, and don’t settle. As with all matters of the heart, you’ll know when you find it. And like any great relationship, it just gets better and better as the years roll on. So keep looking, don’t settle.”
– Steve Jobs
Source: goodreads
松田:笑
中垣:でも、小説書き始める手前のその人と同じ段階って言いますけど、
なんでそんなこと言うん?
人生は、未来に背中を向けて、後ずさりしていくことと似ている。未来は見ることができない。背中にぶつかるものが、非難の石つぶてなのか、会場を揺るがす声援なのか、未来に進み、目にすることができたときにやっとわかる。今は見えないものを信じられる者だけが、未来に向かって後ろ向きに進むことができる。見えないものを恐れる者は一歩も未来に進めない。
Source: 野矢茂樹編(2013)『子どもの難問』中央公論新社
大森:まあ確かにね、一生そうなやつって結構いるんだろうなと思う一方で、松田くんに何か見つけた方がいいんじゃない?って思うのは、
松田:はいはい。
大森:一方最近お客さんと話してて問題だなと思ってるのは、どれだけお膳立てしても新規事業したいって言わない人もいる、みたいなのがあって…
松田:うんうん。
中垣:あー。
大森:日々のビジネスを回してるだけで僕は幸せです、家庭もあるし…みたいな。要は、社会に対してコミットしたいっていう気持ちがそこまで無いって人もいて、
中垣:笑
大森:
松田:はいはい笑
大森:だから、やりたくないことがはっきりしていくだけだともったいないなって。
中垣:それはそうですよね。だから、一度極貧になるしかないのかなって話はしてるんですけどね。
大森:えーでもさ、あまりに追い込まれたときって、
松田:あー、それはそうなんですよね。
大森:起業する人の動機として、貧しい家庭で育ったから誰よりも金を稼ぎたいっていうパターンとかよくあるじゃない。
松田:あー、それはね…
大森:それって道を限定しちゃってるじゃん。
松田:あんまりこう、
大森:そうそう。
悲劇のノー結論
2020年9月10日
Aux Bacchanales 紀尾井町