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経済学に対する愚痴と、おすすめの入門書

経済学の「なんでそうなるんだよ」に文句を言いながら、初学者にもおすすめの入門書を紹介します。

3 years

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中垣:実際のところ、大学で経済学を学んでさ、今どれくらい覚えてんの?

太郎:おれは経済学部じゃないよ、ちなみに。

中垣:あっ…法学部?

太郎:そう、法学部。

みなと:僕が経済。

c アマルティア・センの『不平等の再検討』

中垣:じゃあみなとはさ、どれくらい覚えてんの?

みなと今やってもテストの点数は全然取れないと思う

中垣例えば教科書を見返したら「あー、はいはい」ってなる?「教科書を一週間で読んで、その内容を解説してください」って言われたら、できる?

みなと:あー…できるとは思う。

中垣:だからあれか、一応その、一通り理解した経験はあんねや。

そらそうやん

みなと:そうそう。あくまで基礎中の基礎理論みたいな感じだけどね

中垣:そうなんや、じゃあ今度本持って来て聞くわ。あの10時間のやつ、まじでむずい…というか解説がかなり粗いねん。

井堀利宏(2018)『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』KADOKAWA
Image: Amazon.co.jp

井堀利宏(2018)『大学4年間の経済学が10時間でざっと学べる』KADOKAWA

みなと:そうだよね。

太郎:かえって色々捨象されている可能性はあるよな。

中垣:例えばなんかさ、まずシンプルにおれが引っかかったのは、需要曲線と供給曲線って横軸に供給量とか需要量があるやん。普通に数学の考え方でいくと、x軸を動かしたときにy軸がどう動くかって見方をするけど、あれってそうじゃないやん

太郎:あー、そうそう笑

大学入試のための政治・経済 価格 – 共立女子大学・共立女子短期大学

中垣:縦軸の価格を動かしたときに横軸の値がどうなるか…やんか。あれがきもすぎて

太郎:分かる分かる笑

中垣:「そこをまず説明しろよ…」みたいな。

太郎:あれ、なんで軸があんなことになってんだっけ?

みなと:それ僕も知らないかもしれない。数学的な考え方でいくとさ、f(x) じゃないの?ってことだよね。

中垣:そうそう。あれ f(y) やねん。

太郎てかあれ、関数って言えるのかな?

みなと:いや、たぶん関数じゃないんだよな。

太郎:要は「二つの動き合う数の関係性をプロットしました」みたいな。

みなと:そうそう。数学的な素養のある人にとって一番気持ち悪いのは、まず最初のそこだよね

中垣:そうやんな。

みなと:僕も最初のそこがすごい引っかかって。なんかあれ頭の中にあるモデルありきで、このx軸とy軸を描けますみたいな感じになってるよね。

太郎:効用の曲線とかきもいよね笑

みなと:あー、気持ち悪いね笑 限界効用の逓減とかも、なんでかあの形になってるけど…

限界効用の逓減
Image: PRESIDENT Online

金持ちが「1万円」をぞんざいに扱う理由 PRESIDENT Online

太郎:笑

みなと:たぶんそもそもの前提として自分の感覚がベースになってる感じがあるというか、それを数学的な記号を用いて表現しよう…くらいの感じで生まれた理論だから、最初からかなりフワッとしてる感じはあるよね。

中垣:しかもその理論ですら、それなりにえらい人が考えた結果なわけでしょ。でもあの10時間の本では「これです、覚えましょう」みたいな感じで出されるから、「…ん?」ってなる。

みなと:そうなんだよね。どちらかというと経済のおもしろいところは、「こういう仮定をおいて、こう積み上げていくと、こういうことになりますよ」「で、じゃあここからどう発展させていきましょうか」っていうような、ある意味ではちょっとした仮想ゲームみたいなところにあると思うんだよね

中垣:うんうん。

みなと:だから「これです、覚えましょう」とか言われたら、絶対におもしろくないだろうなとは思う。

太郎:むしろ「神取ミクロ」とかの方がいいのかな。

みなと:あれはたぶんすごく絶妙なラインだね。

中垣:何それ?

みなと神取先生の『ミクロ経済学の力』っていう本があって…

神取道宏(2016)『ミクロ経済学の力』日本評論社
Image: Amazon.co.jp

神取道宏(2016)『ミクロ経済学の力』日本評論社

みなと:ただね、あれはたぶん、経済ではない他の学部の大学生向けという感じの内容で…

太郎:あー、なるほど。おれはあの本めっちゃ好きなんだけどね

みなと:分かるよ、すごいおもしろい本だとは思う。ただ僕はしっくりこなかった派なのよ

太郎:あー、そうなんだ。

みなと:なんか、もっと数式がばーっと書かれてる方が、話が早くて分かりやすいんだよね。

太郎:あの本さ、TPPの説明とかをしてくれるじゃん。

みなと:うんうん。

太郎:ああいう社会の出来事とかに関して、「この理論って不完全な部分もあるんだけど、こういうふうにも使えるんですよ」みたいなことを、すごく誠実に解説してくれてる感じがおれは好きだった

みなと:そうだよね。中垣にざっくりと説明すると、神取先生っていう東大の先生が書いた、口語体の、なるべく一般の人にも分かりやすいようにっていう感じの教科書があるんだよ。ただ言っても結構分厚いから、社会人が読めるかというと…

アカデミック界隈の「前提知識無しに〜」「どなたでも〜」はまず間違いなく嘘

太郎:いやー、あれ相当体力いるよね。留学から帰って来て暇だったときに図書館でずっと読んでたけど、それでもかなりしんどかった。

みなと:そうそう。たぶん土日に勉強の時間として「さあ、読むぞ」ってやらないと無理だと思う

中垣:そうなんや。

みなと:あとはなんかね、帯とかがクソ胡散臭いんだよね。「東大生が総立ち、感動、拍手」みたいな。

東京大学・駒場キャンパスで講義のあと大教室に拍手が沸き起こる、門外不出の”カンドリ先生のミクロ経済学講義”がいま、再現される!

Source: Amazon.co.jp

神取道宏(2016)『ミクロ経済学の力』日本評論社

太郎:嘘だ笑

みなと:ふざけんなって感じだよね笑

太郎みんな寝てるわ笑

西川:これ私も持ってたかも。なんか勉強させられました。

みなと:あれ、西川って…

西川:私、後期で農業経済学に行ったんで。

太郎:なるほどね。

中垣:それって何すんの? 米どんくらい作ったらどんくらい儲かる…みたいな?

😅

西川:いや…農学部の文系科目を集めたみたいな感じです。農業史とか、農村の経済学とか。

中垣:ほーん。

西川:ちゃんと勉強してはいないんで、内容はわからないんですけど、でも持ってました。もう捨てちゃったかもだけど。これすごい分厚かったですよ。

みなと:うん、普通に500ページくらいあるよ。

太郎:おれはこれ好きだわ。

みなと入門書としてだったら『高校生のための経済学入門』みたいなやつの方がいいよ

小塩隆士(2002)『高校生のための経済学入門』ちくま新書
Image: Amazon.co.jp

小塩隆士(2002)『高校生のための経済学入門』ちくま新書

太郎:あー。

みなと:僕はまさに高校生のときにそれを読んで、「ああ、経済学部行きたいな」って思ったな。

中垣:なんで高校のときに、それを読もうと思ったん?

みなと:なんでだろうな。詳しいきっかけは分かんないんだけど…僕は別に数学は得意じゃなかったけど、例えば物理とかの、ある仮定をおいて、それ以外は固定してある変数を動かして、ひとつずつ現実の世界を説明していく手法っていうのは結構好きだったのね

中垣:はいはい。

みなと現実世界に理論を適用していく感じがおもしろいというか。で、なんか高校の授業で需要曲線と供給曲線の話が出たのかな、それで「あー、おもしろいな」って思って、なんか読んでみようかなって思って、本屋で適当に買って…って感じだと思う。

中垣:熱心やね。

みなと:…そうか?

中垣:高校のときとか、いわゆる何々学みたいなのに繋がるようなことは何も興味無かった。なんか、世間の文句をずっと言ってた

西川:笑

みなと:笑

2020年10月16日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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