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悲しみよ こんにちは

本当の悲しみは強いられる運命にではなく、誰のせいにもできない積極的な選択の中にこそ潜んでいるのです。

12 months

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酒井:年末年始の過ごし方って決まってます?

中垣おれあんまり地元に友達がおらへんからな…実家に帰るとは思うけど、帰っても案外やることないねんな。

松田:そうか、実家に帰って地元の友達と遊ぶのもなくもないのか。

酒井松田さんって地元の友達とかいるんですか?

松田:一人だけ…いや、微妙やな。でもまあ一人だけおるかな。

中垣:なんか前に遊んでたよね。男と女と二人ずつくらいでって言ってなかった?

松田:あー、はいはい。えっとね、おれは地元にK君っていう友達がおるねんけど、前に帰省したときにK君と久しぶりに会って二人で飲んでてんな

中垣:はいはい。

松田:それで途中から「誰か呼ぼか」って話になって、K君はずっと地元におるから友達も多いねんけど、何人か声かけた結果、おれが中学生のときにめっちゃ好きやった子を呼ぶことになってんな

松田:せやけど田舎やから、最初に二人で飲んでた鳥貴族は24時に閉まってまうわけですよ。まあその代わり、ビルの二階に入ってるその鳥貴族、帰るとき一階まで見送りに来てくれるねんけどな笑

酒井:えー、すげえ笑

松田:で、その子らが来るから店を変えようって言って鳥貴族を出て、駅前のローソンでタバコ買って、店の前で一服しながら呼んだ二人が来るのを待っててんな。

中垣:笑

松田:そこでK君が「せやけど今からどこ行く?」って言うわけ。なんか聞くと、地元の駅前には夜遅い時間までやってる飲み屋がまじで無いらしいねんな。ほんで、朝までおるならカラオケに行くしかないって言い出してんけど、おれはカラオケがほんまに嫌いやねん

酒井:笑

松田:で、「カラオケならおれは絶対に行かへんで」って、松田がわがまま言い出してんな。でもK君からしたらさ、せっかく二人呼び出したし、その二人は朝までおるつもりで来るのに…なわけ。「そんなこと言うても二人来るで」って。

酒井:そうですよね。

松田:でもおれはカラオケはどうしても嫌やなって思って、結局一人で家に帰ったっていう、そういう話があるんですよ。

中垣:やば。帰ったんや…笑

酒井:笑

松田:そのとき歩いて帰りながら「いやー、完全に頭おかしいけど、でもおれにはこうするしかなかってんなぁ…」とか思ってて。「後悔とかは全然無いねんけどなぁ…」って、自問自答しながら帰った。

酒井:やばいなぁ。

中垣悲しみやな、それは

松田:そりゃ悲しかったよ。

中垣:でも悲しいってそういうことやんな。

松田:そうそう、ほんまにね。

中垣:前に河東にすすめた『悲しみよ こんにちは』、あれは出だしが「私には悲しみというものが分からない」みたいな感じで、最後が「悲しみよ こんにちは」やねん。要は最後に悲しみが分かるっていう話やねんな

略してカナコン

フランソワーズ・サガン(2008)『悲しみよ こんにちは』新潮文庫
Image: Amazon.co.jp

フランソワーズ・サガン(2008)『悲しみよ こんにちは』新潮文庫

中垣:そういうふうに一冊を通して悲しみを描くねんけど、そこで描かれるのはえも言えぬ感情というか、親が死んで悲しいとか振られて悲しいとか、そういうシンプルな悲しさではなくて、自分もそれに対して何かしら加担しているんだけれど、結局のところそうせざるを得なかったときのその何か、それが描かれてるねんな。

酒井:あー。

松田:やるせないってこういうことか、って感じやんね。

中垣:そう、そうやね。

松田:親が死んだとかやったらさ、それは素直に悲しんだらええねん。でもさっきの話の場合さ、悪いのはほとんどおれやし、さりとてそこでカラオケに行けたかと言うとやっぱり無理やったし、実際のところ行きたかったのかと言われても、別にそういう話でもなくて…

中垣:うんうん。

松田結構悲しかったね。なんか、ほんまにカラオケであること以外に行かへん理由がなかったもん。K君のことも好きやし、すごい好きやった子も来るわけやし…それに、おれは東京に出てしたいことをしていて、まあその線で身を立ててはいないにしても個人的にはしっくりくる生活を送っていて、地元で朝まで飲んだからって、そこで田舎の価値観で殴られてるような気分になる恐れもなかったと思うねんな。

中垣:うんうん。

酒井:笑

松田:つまりどういう文脈になっても、おれにしたら楽しいイベントやったはずなわけ。カラオケであることにさえ目をつぶればめっちゃ楽しかったはずやねん。

中垣:まあそうやんな。そうやんな…

酒井:なるほどな笑

松田辛かったなぁ

こういうタイプの悲しみ、みなさんも経験ありますでしょうか

2019年12月13日
ANTICO CAFFÈ AL AVIS 東京ミッドタウン

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フランソワーズ・サガン
HeaderImage: CR

『悲しみよ こんにちは』の作者、フランソワーズ・サガン。

CR MUSE: FRANÇOISE SAGAN ON AND OFF THE PAGE – CR