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スコープと意思決定にまつわるコンサルのジレンマ

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中垣:先週松田と話してたコンサルの話の続きをしたい。

松田:はいはい。

中垣:おれは今2年目なわけやけど、当初言っていたような仕事辞めたいって気持ちは最近はあんまりなくて、それよりもうちょっと、やっぱりコンサルではできないんことがあるんじゃないかってことを考えてて

c 7割しか頑張れない人間の苦悩

嶋田:はいはい。

中垣:よく言われるけどひとつには、コンサルは言っても意思決定をしないから、なんしか腹決めてやるみたいな、そういう前提の働き方がまずできない。どこまでも説明可能性の高い判断しかできない。「誰が何と言おうとこれでいくんじゃ、ケツはワシが拭くんじゃ」みたいな、そういう直観的なことができないってのをまず思ってる。

嶋田:あー。

中垣:もうひとつは、どこまでいっても仕事が案件単位になるから長期的なコミットができないねんな。もちろん長いプロジェクトもなくはなくて、システムやったら10年とかあったりするねんけど、まあ基本的には長くても2~3年とか、短かったら半年とか。たぶん戦略なら1ヶ月だってとか全然あるよね?

嶋田:プロジェクトとしてはそうやな。

松田:へー。戦略案件の方が短いもんなん?

嶋田:せやな。

中垣:だから戦略は金にならないって言うんやけど…つまり、そこの矛盾って全然起きるわけよ。長期的なことを考えたらこうしたほうがいいんやけども、コンサル目線の案件単位で考えると、この3年だけならこうさせたほうが儲かるから…っていう。

嶋田:はいはい。

中垣:例えばで言うと、今入れようとしてるシステムは、実は5年後には絶対にオワコンになるから入れるべきではなくて、今はもうちょっと我慢して、しかるべきタイミングでちゃんと構想策定してシステムを考えるべきだと。

松田:うんうん。

中垣:そんなの長い目で見たら明らかなんだけど、でもおれらがとってる案件はこの3年で業務を効率化することだから、今はこのシステムを入れましょうと。で、どうせ数年後にそのシステムはダメになるから、そのときは改めて案件取りにいきましょう、みたいな判断になるわけ。

嶋田:うんうん。

中垣:ビジネスとして考えたら、それはもう仕方ないねん。

嶋田:そうやね。

中垣:そういう制約があるから、なんかこう、そこの矛盾を抱えながら仕事をすることになるわけ。もちろんお客さんのことを思って、どうすればお客さんにとってベストかってことを考えるんだけども…

嶋田どうしても、構造的に自分ごとになり得ないっていう

中垣:そうそう。あくまで我々のスコープの中で、お客さんのことを考えましょうってなると、まあ楽しくはない。

松田:なるほどねぇ。

中垣:やっぱりそこには自分を投影したいというか、例えばユニクロは今世界で2番目やけど、これを世界一のアパレルメーカーにするんじゃって柳井さんは言ってるわけやん。おれもたぶん、立場が立場ならそういう気持ちで取り組めると思うねん。

嶋田:はいはい。

中垣:でもそういうのってコンサルだと無理だよねってことを、すごい思ってるねんな。それでちょっと気になってるのが…マッキンゼーってどうなんすか? やっぱ違うとこもあんの?

マッキンゼーのウェブサイトのデザイン、ssenseの次くらいに超好き

SSENSE

マッキンゼー・アンド・カンパニー – McKinsey

嶋田:どうやろ、コンサルやからそこができひんみたいなことはないかなとも思うねんな

中垣:うんうん。

嶋田:もちろん今はチーム単位で現場にいて、話をするんも会いに行くんもほんまのトップのトップが相手じゃないし、たまに会ってもプロジェクト中に一回くらいの話やからさ…そういう意味ではプロジェクト単位でプツン、プツンって切れる感覚はあんねんけど…

松田:うん。

嶋田:なんやろ、それこそCEOカウンセラーが仕事みたいなとこはあって、ほんまにちゃんと見てるお客さんとかって、そのお客さんのカウンセラーとしてうちの中に誰々がずっと横にいる、みたいな関係やん。その上で、今このタイミングでなんかしたほうがいいってなってプロジェクトが走ってるところもあるし。

経営者って自分が一番上やからさ、どこまでいっても最後は自分で決めなあかんやん。しかも自分と同じ熱量で会社に対して戦略的に思考してくれる人もいない…ってなったときに、そういう相談相手としての意義をコンサルに見出してるお客さんもいるんじゃないかな

Source: commmon

c 経営者の本質

中垣:うんうん。

嶋田表向きはプロジェクトが走ってなくても、ずっと連絡はとってて、その背景があって中長期的に今のプロジェクトが入ってるから、もちろん自分達がほんまの意思決定に加わるのはごくごく一部やけど、それで短期的に切れているって感覚はあんまないけどな。

中垣:確かに、お客さんとのリレーションが続いてるプロジェクトもあれば…っていうのはあるねんけど。

嶋田:でもそれさ、コンサルやからじゃなくない? 結局どこの業界でもさ…

中垣:まあまあ、内部にいてもそういうことはあるよね。

太郎:まあそうだよね。

嶋田見えてるレイヤーの話な気はするけどな

太郎:でも確かに、学生のときにインターンで一緒に仕事をしてたコンサル出身の人は「いや、金をもらってるのはここまでだから、ここまでをやるんだよ」っていう、金の切れ目が縁の切れ目っていうスパッとした割り切り方をしてた。

中垣:そうそう、その感覚はあるなって。スコープの意識がめっちゃ強いねん。

太郎:そういう考え方がスタンダードなんだっていう驚きと寂しさみたいなのは、その人と話してて感じたな。

国のスコープ…

中垣:他にも例えばシステムを入れるプロジェクトとかやと、最初に要件定義って言って、今お客さんがやってるマーケティングの業務ではここを手作業でやってて、それを効率化したいよねみたいなことをいろんな業務から洗い出してまとめるねん。で、それを機能的にはどう実現するかっていうシステム要件に書き換えて、そこから開発を始めるねんな。

松田:うんうん。

中垣でも、案件によっては要件定義までしかしない、場合によっては業務側での要件定義までしかしないで、システム要件から先はSIerなりお客さんの会社のシステム部門が担当することになるねんな。

システムインテグレーター – Wikipedia

松田:はいはい。

中垣:でもほとんどの会社は、業務側の人は意思決定もできてイケてる人が多いんやけど、システム側の人って必ずしもそうではないねんな。意思決定ができないわけ。

一般論な

嶋田:なるほどね。

中垣:ほんまは我々がもっとシステムのところまで提案して「こういう方向性は?」って言ったほうが、プロジェクト的にはスムーズに進むの。でも我々としてはその契約は取ってないし、そこまで言っちゃうとお客さんも「じゃあもっとやってください」ってなって、そうなると当初の契約の部分が破綻しちゃうから、それやったら別で契約してもっと払ってくれって話になるわけ。だから言えない。

嶋田:なるほどな。

中垣:だからうちのリソースの中で口出すとしたら「システム担当のあの人変えたほうがいいですよ」くらいやねんけど、でもそんなこと言えないわけよ。

嶋田:なるほど、確かに言えないよな…でも、うちはそれ結構言うけどな。

どっち?

中垣:そう、そこがちょっと気になっててん。もちろんマッキンゼーとうちとではカウンターパートのポジションって結構違うと思うねん。戦略やとより CXO に近い人がカウンターになるわけやけど、うちのプロジェクトやと相手側の一番偉い人はマーケティングしてる部署の部長さんとかなわけ。そうなると、お客さん自身が自分の会社を背負ってる感覚も違ってくるんかなって

嶋田:あー、それはあるかもな。

中垣:そうそう。それにマッキンゼーとかってほんまにクソ高いから、頼む時点でかなりの信頼があるというか、まじでうちの会社をどうにかしてくれっていうのもあると思うねん。でもうちってどちらかというと、お客さんのリソースが足りないから外注して…みたいな感じがあるねんな。

ほんまにクソ高い

嶋田:はいはい。

中垣よく「高級派遣」って揶揄されるけども、そのいわれはこっちの方が強いと思う。そうじゃなくてある種のブレーンとして雇われてると、もうちょっと入り込んだことまで言えたりするのかなっていうのも気になってた。

嶋田:まあそれはそうやな。「普通のことを普通に言うな」って言われてるし、言わないのは罪みたいな文化は確かにあるかもしれへんな

藤木:忖度的な、「これは言っても変わらないだろうな」みたいなのはないの?

嶋田:もちろんある。そのときはまず誰に言うかを考えるかな。本当にやばかったら「もっと上の人にこれを言ってください」って言うとかね。

波頭亮(2004)『思考・論理・分析』産業能率大学出版部
Image: Amazon.co.jp

マッキンゼー出身のコンサルタントによる、論理的思考のための最強の一冊。これだけ買って、手元にある「ロジカルシンキング」を謳う本は全部捨てろ

波頭亮(2004)『思考・論理・分析』産業能率大学出版部

波頭亮 – Wikipedia

2020年11月13日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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