Categories
ことば 思索

絵本って意味あんの?

3 years

5 minutes read

🐹まだ全然分かってないもののひとつに絵本があるんだよね

松田:はいはい。

🐹絵本と本の違いって何なんだろう?って。絵があると子供に伝わりやすいというのはあるだろうけどさ、それだけならある程度で伸びしろが尽きると思っていて。

松田:あー…?

🐹:なんか…大人向けというか、機微の分かる人に向けた内容ならいくらでも工夫のしようはあるけどさ、子供っていう理解の幅が限られた相手に伝えられる内容って、何百年もやってれば描ききれてるんじゃね?というか、なんで今でも新しい絵本が生み出され続けているんだろうって。

子供は機微が分からないとかいう偏見

日本の絵本の歩み – 国立国会図書館国際子ども図書館

松田:笑

🐹:でも実際のところ絵本って、なんなら普通の本よりメジャーなものなんじゃないかとまで思うし。

松田:うーん…つまり、絵本が延々と更新され続ける理由が分からんというか、そんなに更新し続けるほど、幅広いテーマを扱うポテンシャルがあるんかという話やんな

🐹:そうそう。

松田:個人的に思うのは…例えば『ぼくを探しに』っていう絵本知ってる?

シェル・シルヴァスタイン(1979)『ぼくを探しに』講談社
Image: Amazon.co.jp

東大の学生相談所の受付の方は、僕が見てきた中では「タンク ルイ カルティエ」がもっとも似合っていた女性なのですが、彼女も「この本素敵よね、私も好き」とおっしゃっていました

シェル・シルヴァスタイン(1979)『ぼくを探しに』講談社

🐹:ううん。

松田:たぶんお母さんの本棚にはあると思うよ笑 全国のカウンセリングルームにある系の本やから。

🐹:じゃあありそうだな。

c 臨床心理における個別性と普遍性

松田:おれはその本が結構好きやねん。で、本の内容自体はそれこそ言語でのみ説明してもというところやねんけど…

🐹:まあそうだよね笑

松田:ただ、その本のテーマを完全に言語にのみ頼って描こうとすると、どうしても輪郭がはっきりし過ぎてしまうところがあると思うねん

🐹:あー。

松田:これに限らず絵本に見出し得る魅力のひとつとして、テーマの輪郭がどこまでもぼやっとしているというか、最後はこちらでその輪郭を確定させなければいけない、スポットライトが当たっている範囲がどの辺りなのかは分かるんだけど、それを自分に当てはめるとどういうことになるのかについては自ら決定しなければいけない、そういう主体性を引き出される感じがあると思っていて

🐹:あー、なるほどね。

松田:あれがただのテキストなら「はあはあなるほど」となるだけで、その内容を積極的に自身に適用しようとはならないのかなと思うな。

🐹:なるほどね。今のを聞いて思ったのは、言葉にするとバチっと明確になるような部分に余白を持たせるという意味で、絵の部分が結構大事なのかなって。絵があると一見中身があるようで子供も入りやすいけど、そこで考えさせるきっかけになるというか。

松田:うんうん。絵があることでそこに何かがあるという確信は持てるから入りやすいんだけど、それが何かは主体的に見出さなければならないというか。

🐹:うんうん。

松田:だからまあ、絵本もいいんじゃないのとは思うよ。扱い得るテーマの幅広さは文字の本と全く同じだけあるんじゃないかなと思う

🐹:うん、納得したわ。でもなんか…絵本コーナーってちびっ子とお母さんがいがちだから行きづらいんだよね。

松田:それなら神保町に「Book House Cafe」っていうのがあるねんけど、ここは絵本だけのお店やから、その点暗黙のコンセンサスがあっていいと思うよ。

神保町 絵本 ブックハウスカフェ
Image: Book House Cafe

お店のご案内 – Book House Cafe

🐹:へー。

松田前に探してる絵本があってここに行ってんな。3歳くらいのクリスマスに親が買ってくれた絵本で、「タイトルは分からないんですけど3冊組のケーキを作る話で~」って言ったら「これですかね」って言ってすぐ出してくれたっていう。

長尾玲子(1995)『あっちゃんとゆびにんぎょう』福音館書店
Image: Amazon.co.jp

小さめのサイズと表紙の色味が気に入っていた。中身は知らん

長尾玲子(1995)『あっちゃんとゆびにんぎょう』福音館書店

🐹:えー、すごい。それすごいね。

松田:そうやねん。今コロナで大変らしいから行ってあげるといいよ。

絵本専門店が新型コロナで「SOS」 人が人に出会う場所「なくしちゃいけない」 – J-CAST トレンド 

🐹:え、行こう。

松田:他に好きやった絵本ってあるかな…

🐹小さいときはお母さんが歌を歌ってくれてたな

松田:あ、そうなん?

🐹:絵本ってなんか歌がついてるやつがあるじゃん。文の後に音符マークがついてる感じの。

松田:あー、はいはい。

🐹:お母さんが歌うのが好きだったから、その部分をめっちゃ歌ってくれてた

松田:へー、すごいね。

🐹で、私は布団の中で踊るっていう

松田:そっちもすごいね。

🐹:でも物心つくかつかないかくらいだと、表紙は覚えてても内容は全然覚えてないよね。

松田:そうやんな。前に『スイミー』をみなとと読んだけど、あれもあらためて読むと結構よかったね。むしろキッズが読んで味わい尽くせるのかはなはだ疑問やで。

c あらためて『スイミー』を読んでみた

🐹:へー。

松田:すごくいい話やった。それこそ絵本の良さが活きてると思ってて、言葉で説明が尽くされていると「はいはいそうだよね」っていうふうに意味内容の理解こそ早いけど、それを自身の思考の体系にインストールして自在に使えるようになるのはまた別なわけやん。主題を血肉にまですることを目標にすると、CVRが高いのは必ずしもテキストだけの本とは限らないというか。『スイミー』はそういう意味でも沁みるものがあったね。

レオ・レオニ(1969)『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』好学社
Image: Amazon.co.jp

レオ・レオニ(1969)『スイミー ちいさなかしこいさかなのはなし』好学社

🐹:へー。

松田:あとは『100万回生きたねこ』とかね。あれも今読むと学ぶことがあるかもしれんね。

佐野洋子(1977)『100万回生きたねこ』講談社
Image: Amazon.co.jp

佐野洋子(1977)『100万回生きたねこ』講談社

🐹:はいはい。衣装がころころ変わるやつだよね。

松田:うん…まあそうね。

🐹:笑

松田:今はもうどっかいったけど、駒場に住んでたときは本棚に入ってたわ。

🐹:へー、好きなんだね。

松田:ただあれな、100万回ってかましたくせに本の中で紹介されるケースは数個やから…

🐹:笑 『100回生きたねこ』くらいでいいよね。

松田:そうやねん。広げた風呂敷が大き過ぎた感は否めないよね

2020年12月11日
Aux Bacchanales 紀尾井町

この記事をお楽しみいただけた場合、ワンクリックで任意の金額から支援することができます。

このリンク先でカートに入れた商品は、その売り上げの一部が commmon に還元されます。

また「誰が、何を何と同時に購入したか」は完全に匿名化されており、「何がいくつ販売されたか」以上の情報をこちらから確認することはできなくなっています。ご安心ください。


シェル・シルヴァスタイン
HeaderImage: POETRY FOUNDATION

『おおきな木』『ぼくを探しに』などで知られるシェル・シルヴァスタイン。作家・イラストレーターとして知られるほか、1969年・1984年にグラミー賞を受賞したシンガーソングライターの顔も持つ。

Shel Silverstein – POETRY FOUNDATION