中垣:
直前に帰った松田がそう言った
明石:
中垣:うんうん。
明石:例えばですけどここ2〜3年、女性取締役がいないスタートアップは出資を受けられない、というような流れが急に出てきたんですよ。いずれ近いうちに、
中垣:はいはい。
明石:そうなったときに、じゃあ企業としてはフェミニズムないしジェンダーにまつわる様々な問題について関心が強いから女性取締役を増やしているかと言うと必ずしもそうではなくて、
中垣:いや、そうですよね。
明石:これはフェミニストや問題の当事者からすると不本意なことかもしれないけれど、やはり割合としては後者の方が多いはずなんですよ。だから結果として当初の想いのようなものは失われて経済のゲームに組み込まれてしまっているんだけど、
中垣:話を聞いてると、別にそれでいいような気もするんですよね笑 それこそ制度を作る側の人間として、太郎はどう思うよ?
太郎:今おっしゃっていた、まずムーブメントが起こりそれに制度が追いつくことでしか世の中は変わらず、そこでは当初のピュアな想いとのギャップがどうしても生じてしまうということは、僕の人生における最大の関心事でもあるのね。
人生における最大の関心事、皆さんはお持ちですか?
太郎:今までに何度か名前を出してる、青木昌彦っていうもう亡くなった経済学者がいるんだけど、彼は
青木昌彦(2014)『青木昌彦の経済学入門 制度論の地平を拡げる』ちくま新書
太郎:これは例えば、エスカレーターで左側に並ぶのは、誰かが最初に左に並びはじめて、それに賛同した人々が模倣することで小規模ながらルール化して、これを繰り返すことで定着したと。このような
ミームじゃん
中垣:はいはい。
太郎:あとは中垣の感じている違和感の解釈としては、
中垣:うん、それに近いね。そこで質問なんやけどさ、ごく個人的な違和感とかはともかく、想い→ムーブメント→制度みたいなプロセス自体は仕方がないというか、
太郎:
中垣:いや、おれもすげえそう思うわ。さらに言うと、そこに理想論を突きつける必要はあまりないような気もしていて。
太郎:はいはい。
中垣:それこそ全てはエンタメ説じゃないけど、イデオロギー同士が戦って人が死ぬみたいな悲劇的なことさえ避けられれば、全て趣味・憂さ晴らしだと思えばいいんじゃないかと。
太郎:うんうん。
中垣:「男性ガー」「いや、そんなことはないぞ」って言い合ってるのも趣味だと思っておいて、「まあそれで社会が良くなるならいいんじゃね?」くらいの気持ちでいた方がいいなと思う。
太郎:おれも、
中垣:つまり世の中には、課題発見の直観力を持った最初のコア人材はもちろんのこと、無責任ではあるけどパイが大きいリツイート要員も必要だし、重労働を強いられる制度設計要員も必要で。
太郎:あとはロビイングする人とかね笑
中垣:そうそう笑 そのそれぞれが各々の動機はともかく、
太郎:おっしゃる通り。
中垣:そうすると、例えばスタートアップの女性取締役の話でも、
太郎:さっきの女性取締役の話で言えば、名の知れた企業が自社の取り組みを公表すれば他の企業も追随し得るし、それ自体は政府が作ったルールではないものの、遵守するためのインセンティブないしディスインセンティブはうまく働いているよね。
明石:それはその通りで、スタートアップや投資の世界がこうなったのも、女性取締役を置かないとLPからお金が集まらなくなってるからだと思うんですよ。元をたどればファンドに資金の運用を任せている企業に対して、ジェンダー等の問題へのコミットメントを求めるムード、あえて強く言えば圧力があるから、企業としてもきちんとコミットしているファンドに投資したいし、となるとファンドとしてもそのようなスタートアップに出資したいとなるわけです。
太郎:ただまあ、ごく個人的には中垣に近い感情はあって、
中垣:それっていいんかな?
太郎:そっちの方が話が通じる人が増えて単純に楽しい笑
中垣:確かに、そういうコミュニケーションコストのだるさは、当事者としてはかなりありそうやんな。
太郎:これはあくまで僕個人の感想でしかないんだけどね。
中垣:でも実際何か意思決定をするときも、
太郎:そうなるといいよなぁ。
中垣:そうね。
太郎:まあこれは「おれさみしいんです」って言ってるようなもんだから、あんまり意味は無いんだけどね。
明石:笑
2021年1月17日
Aux Bacchanales 紀尾井町
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