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人生 思索

悲しいときは泣いたらええんやで

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みなと:松田ってさ…大泣きするみたいな、全面的に感情が発露するようなことって最近いつあった?

松田:えっと…それで言うと大泣きしたことはまずなくて、ただそういうポテンシャルのある経験ならまあなくはないって感じやけど。

みなと:はいはい。

松田:ひとつにはほら…例えば『臨済録』とかを読んで、それが自分の思想の体系の芯の芯にコネクトされたときの「あー…」ってやつ。

道流、你欲得如法見解、但莫受人惑。向裏向外、逢著便殺。逢佛殺佛、逢祖殺祖、逢羅漢殺羅漢、 逢父母殺父母、逢親眷殺親眷、始得解脱、不與物拘、透脫自在。

道流、你如法に見解せんと欲得すれば、但だ人惑を受くること莫れ。裏に向い外に向って、逢著すれば便ち殺せ。仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺し、羅漢に逢うては羅漢を殺し、父母に逢うては父母を殺し、親眷に逢うては親眷を殺して、始めて解脱を得、物と拘らず、透脱自在なり。

諸君、まとめもな見地を得ようと思うならば、人に惑わされてはならぬ。内においても外においても、逢ったものはすぐ殺せ。仏に逢えば仏を殺し、祖師に逢えば祖師を殺し、羅漢に逢っ たら羅漢を殺し、父母に逢ったら父母を殺し、親類に逢ったら親類を殺し、そうして始めて解脱することができ、なにものに束縛されず、自在に突き抜けた生き方ができるのだ。

Source: 入矢義高訳註(1989)『臨済録』岩波文庫

入矢義高訳註(1989)『臨済録』岩波文庫

c 言葉の意味

みなと:うん、分かるよ。刺されそうになっているというか、自分でもって刺そうとしているというか…

そこまでは言っていない

松田:あるいは『ナショナルジオグラフィック』を読んで知った何かを自分の課題だと思ったとき、それもやはり同じような感情にはなるかな。

ナショナルジオグラフィック

みなと:なるほどね。

松田:あとはディズニー映画も泣きそうになるかな。ただまあ…ちょっと特殊ではあって、自身と世界を肯定的に確信するというアイデアに共鳴してそうなってはいるんだけど、いかんせんディズニーにはEDM的な部分もあるから、そこで必要以上に感情を煽られているのは大きいと思う。

みなと:分かるよ笑

松田:でも、なんでまた?

みなと:なんかさ…今までを思い出しても、昨日みたいにずっと大泣きしたみたいなことって一度もないわけ。だってやばいじゃん、2時間もずっと泣いてたんだよ?

エヴァ見てスイッチ入ったらしい

松田:うんうん。

みなと:母親が死んだときもあそこまでは泣かなかったというか…もちろん母親が死んだときも悲しいっていう気持ちはあったんだけど、ちょうど思春期のど真ん中だったのもあってか、「とは言え自分はこんなことでは泣かない」みたいな、そういう消化の仕方をしちゃってて

松田:うんうん。まあ全然知らんけど…でも変に気丈に振る舞っちゃって、自分の中で決着をつけられずに放置しちゃうってことはありそうだなと思いました。はい。

みなと:うん。あと逆に、当時も妹はめっちゃ泣いてたんだけど、それを見てなおのことそういう態度になっちゃったというか…具体的な行動として何をするじゃないけど、でも自分が妹のことを守ってあげなきゃみたいな、そういう思いを感じてたんだよね。

松田:うん、はいはい。

みなと:あとは父親も父親で辛いだろうなとか、当時はそういう中途半端な距離の取り方をしちゃってて、昨日はそのことも思い出してたな。

松田:うんうん。

みなと:要は心の中に残ってた宿題というか、決着をつけずに置いておいたものが全部想起されてきたというか…

松田:なるほどね。

みなと:僕さ、辛いこととか嫌なことがあったとき、それを全部ひとつの箱に入れるような癖があって、それで一個出てくると他も全部出てくるんだよね。だからその箱は僕にとってパンドラの箱なんだけど…昨日はそれを開いてしまった感じがあって。

松田:あー…うんうん。

河合隼雄(2017)『無意識の構造』中央公論新社
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みなと:でもね、それは自分にとって必要なことだったというか…とりあえず一度開いた以上は、その箱に入れたことによってごまかしていた体験にも体当たりしようと思っているというか、自分の中でひとつひとつ整理をつけていこうかなとは思っていて

松田:はいはい。

みなと:あとは、そうやってひとつの箱に全部入れちゃうような整理の仕方はあんまり良くないんだな、とも思ったな。きっと当時悲しかったときにもっと悲しんだらよかったんだよね。辛いことに対して、それでも頑張るって言って気を張るというよりは、心から素直に悲しむことが大事なんだなって。

松田:うんうん。

みなとそれこそがまさに生の生々しさというか…もちろん頭では分かっていたんだけど、でも実際には自分はごまかしてたんだなって、そういう気持ちになった。

自分の人生の責任は自分で引き受ける、いいと思います

松田:なるほどね。

みなと:でも昨日は本当に久しぶりに感情が前面に出る状況になって、それでどうしていいか分からなかったんだよね。それこそずっと過呼吸になってたし。だからそういうとき、松田ならどうしているのかなって。

松田:それで言うと、おれはそこまでの程度でそんな感じになったことはないよ笑

みなと:そういうことだよね笑

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河合隼雄(1998)『こころの処方箋』新潮文庫
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2021年3月21日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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