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TOKYO 建築 食事

東京の希望、阿佐ヶ谷

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西川:阿佐ヶ谷ってさ、なんでそんな飲食店が多いの? 外食する人が多いの?

c 賃貸と街の話

松田:そらまあ多いんやろうけど…でもなんでかってなると、はっきりとは分からんな。いずれにしても様々な飲食店があるっていうのは、それだけで豊かなことやんね

西川:うんうん。

松田:つまり、それを支える嗜好の多様性を街が持っているわけでさ。ただなんでかって言われると…難しいな、おれもよく分からん。

中垣:うーん、確かにね…

西川:今住んでるとこは飲食店が少ないんだけど、よく考えるとそれも不思議で、外食をする経済的な余裕がある人はたくさん住んでいるはずなんだよね

中垣:うちの周りも飲食店少ないわ。人口が多ければ立地するという話でもなさそうやんね。

松田:そうそう。もっとこう住人の意識から違うというか、家で作って食べるのとほぼフラットな選択として外食したり、あるいは店屋物を買って帰ってる感じがあるねんな

中垣:そう言えば高円寺も似た感じあるよな。

松田:あー…うん、高円寺もそうやね。駅の北側の商店街のあの感じやわ。飲み屋というよりはむしろ、ただただ外でご飯を食べるためのお店が多い気がするねんな。

高円寺庚申通り商店街

中垣:しかも、どこも安くて美味しいっていうね。確かにあの感じって結構特殊やな。確かにそれって何かの指標っぽいけど…まあジェイン・ジェイコブズを読んでくださいとしか言えんわ。

松田:笑

ジェイン・ジェイコブズ(2010)『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会
Image: Amazon.co.jp

c ジェイン・ジェイコブズ(2010)『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会

ジェイン・ジェイコブズ – Wikipedia

中垣:そもそもさ、あの本で述べられている4原則って何やったっけ…

条件1:その地区や、その内部のできるだけ多くの部分が、二つ以上の主要機能を果たさなくてはなりません。できれば三つ以上が望ましいのです。こうした機能は、別々の時間帯に外に出る人々や、ちがう理由でその場所にいて、しかも多くの施設を一緒に使う人々が確実に存在するよう保証してくれるものでなくてはなりません。

Source: ジェイン・ジェイコブズ(2010)『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会

中垣:まあ多様性が大事ってことやね。

都市の多様性の条件として述べられているのでそりゃあそうなのです

西川:はいはい。

条件2:ほとんどの街区は短くなくてはいけません。つまり、街路や、角を曲がる機会は頻繁でなくてはいけないのです。

Source: ジェイン・ジェイコブズ(2010)『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会

松田:街が細かくてうねうねしてるってことやね。

西川:うんうん。

条件3:地区は、古さや条件が異なる各種の建物を混在させなくてはなりません。そこには古い建物が相当数あって、それが生み出す経済的収益が異なっているようでなくてはなりません。この混合は、規模がそこそこ似通ったもの同士でなくてはなりません。

Source: ジェイン・ジェイコブズ(2010)『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会

西川:へー。

松田:これはもう完璧に満たしてるね。

条件4:十分な密度で人がいなくてはなりません。何の目的でその人たちがそこにいるのかは問いません。そこに住んでいるという理由でそこにいる人々の人口密度も含まれます。

Source: ジェイン・ジェイコブズ(2010)『アメリカ大都市の死と生』鹿島出版会

中垣:これは東京ならどこも満たしてるよ。

西川:うんうん。

中垣:この4つか…なんか全然不足はありそうやけどな。

松田:まあ十分ではなさそうやね笑 でもやっぱ阿佐ヶ谷はいいよ。昨日商店街の入り口を車で通り過ぎたやん? あの商店街はほんまにやばくて、平日ももちろん、土日に至っては「表参道かな?」っていうくらい賑わってるねんな。

阿佐谷パールセンター商店街

中垣:笑

松田:しかも別に電車に乗ってまで来る場所じゃないから、あれは全部住んでる人が出て来てるんやと思うねん。ほんでお昼になると、マクドも王将も、あほみたいに人が並ぶのね。

中垣:へー。

松田:だから…たぶんやねんけど、タイではみんな基本的に外で食事を済ませますみたいな、そういうノリで外で食事をしてるっぽいねんな。

中垣:そういうことね。でもそれってなんか、いい意味ですごく村っぽいというか、他人に健全に期待できてる感じがあるよね

c お金と利己心

松田:そうそう。しかもそれだけじゃなくて、食べログで評価高い系の飲食店もわりとあるし。

西川:へー。

この中だと和菓子のうさぎや、バゲットのSONKA、らーめんのいろはやが好きです

阿佐ヶ谷 グルメ 人気ランキングTOP20 – 食べログ

中垣:実際あの商店街、入り口から覗いただけでも超楽しそうやったもん。さながらUSJって感じあったで。

西川:笑

松田:あれは中に入ってもあの印象のままやで。個人的にはZIPPOをたくさん置いてる「しんかい」っていうお店が楽しい。

【保存資料】ビンテージZippo 1933 オリジナルファーストモデル 1933年製未使用 – 楽天市場

中垣:でも吉祥寺に住んでるときも、そういう感じは少なからずあったな。有名な肉屋にいつも人が並んでて、何もなくても歩いてるだけで楽しい感じ

松田:そうそう、あの感じやね。あとそれで言うと、吉祥寺はどこまでいってもアトレとかキラリーナの感じが強いけど、それがよりrawに近くなったのが阿佐ヶ谷やと思うねんな。

中垣:うん、そう考えると阿佐ヶ谷は希望かもしれんね。しかも高円寺みたいに変な文脈もついてこないやん、インドみたいなやつもおらんやろうし。

西川:笑

中垣:あとね…ceroっていう、もっとも低い解像度で言うとシティポップ的な音楽をやっているバンドがあるんだけど、そのリーダーの高城さんって人がすごい人で、大森さんはこの人のことが超好きなのね。

松田:はいはい。

中垣:で、その人がRojiっていう音楽バーを阿佐ヶ谷でやってて、なんでそんなところで?とは思っててんけど、もしかしたらそういうポテンシャルを感じているのかもしれない。

松田:へー、なるほどね。

Roji 阿佐ヶ谷
Image: リクナビNEXTジャーナル

「30代になり、自分の“役割”変えなきゃなと」人気バンドceroの髙城晶平が阿佐ヶ谷のバーで働く理由とは? – リクナビNEXTジャーナル

中垣:だから…阿佐ヶ谷にPOPEYEを呼べたら、これは勝ちなんじゃない?

松田:あー、間違いない。

分かりましたかマガジンハウス?

中垣:ただあれやな、もし commmon が阿佐ヶ谷に拠点を作ったら、松田もう抜け出せなくなるで。

松田:せやねん、でもそれはそれで嫌やねんな。おれはどこまでいってもスカイスクレイパーの方が好きやねん。結局は鉄骨とガラスの方がいいよ。

中垣:笑

ル・コルビュジェ(2007)『伽藍が白かったとき』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

ル・コルビュジェ(2007)『伽藍が白かったとき』岩波文庫

松田:他に好きなところやと、飲食店が多いのは駅前だけじゃなくて、駅からかなり離れた住宅街の中にもちょろちょろとあるねん。住宅街の中に突如現れる、謎に常に人が入ってる茶店とか、駅からならバスに乗るか迷うくらいのとこにある、有名なカレー屋さんとかね。

中垣:それってさ、ちょっと藤沢っぽくない?

松田:あー…確かにね。藤沢で河東と行ったって言うてたステーキ屋あるやん? あそこまで歩いてあれが出てくる感じとか、ちょっと近いところはあるな。

中垣:うん、やっぱあの感じやんね。みんな結局ああいうのが好きやねん。

松田:これ、新しくなった渋谷のパルコに初めて行ったときの気持ちにも似てるかもな。あらゆるパラメーターにおける多様性があって、誰も排除されていると感じないあの雰囲気

中垣:あれもそうやんね、宮下パークのフードコートとか。

松田:うん、そうそう。

あそこにマクド入れる判断したやつ偉過ぎるよな

c 宮下パーク、渋谷ストリーム、パルコ、スクランブルスクエア

中垣:だからさ、「代々木上原が好き」みたいなのも雑誌とかではそういう豊かさの文脈で語られがちやけど、でも実際は全然違うよね。あんなん排他性の塊やもん。

松田:うん、間違いない。代々木上原が好きとか言ってるやつは死ねとしか言えんね。

中垣:ほんまに。

うーん、排他的

西川:なるほどね。でも確かに、代々木上原ってまじでお店入れないよね。

中垣:ね。店に入った瞬間店主と客に上から下まで舐めるように見られる、そういう感じやんね。「…いらっしゃい?」って。

西川:そうなんだよな。中の人にとってはそれで楽しいんだろうけどさ。

中垣:でもそう考えると、ヒルズとかって否定されがちやけどむしろいいよね。あそこまで大きくしちゃうと、もういろんなやつ入って来るもんね。

松田:地方のデパートのエレベーターの前の椅子にずっと座ってるババアみたいなやつ、言うてヒルズにもおるもんね。

中垣:いるいる笑

松田:しかもそもそも、そういう人をことさらに排除しようという空気があるわけでもないとは思う。まあもちろんね、レジデンスに住んでる人とか入ってるテナントがお金を突っ込んでいるからこそ、そういう外れ値に対するレジリエンスが担保されているのではあるんやろうけど…

中垣:つまり六本木の反社のおかげやね。

c 市場原理の競走馬の話

西川:そう言えば中垣さんって、今までどんなところに住んできたんですか?

中垣:えっと…順に言うと、吉祥寺・目黒・両国・王子・本郷・茅場町、それで今は西麻布やね

西川:へー。

2021年2月28日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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阿佐ヶ谷 七夕まつり
HeaderImage: 阿佐ヶ谷パールセンター

毎年八月の五日間、阿佐谷商店街組合の主催で開催される阿佐ヶ谷七夕まつり。期間中はアーケードの入口に巨大なくす玉飾りが設置され、またアーケード内には各商店の手作りの巨大な張りぼてが飾られる。
特にこの張りぼての飾りつけは、阿佐ヶ谷地区への集客を目的として開催された1954年の第一回から続く伝統であり、後に商店街でのアーケード設置のきっかけにもなった。

令和元年(2019年) 第66回阿佐谷七夕まつり – 阿佐ヶ谷パールセンター