かのこ:私、
c 上野千鶴子(2020)『近代家族の成立と終焉 新版』岩波現代文庫
松田:はいはい。これはどういう本なん?
かのこ:これは上野千鶴子先生の代表的な論文を集めたやつで…
みなと:
松田:逆に上野千鶴子知らんとかある?
みなと:え、知らんよ…
かのこ:最近では、何年か前の東大の入学式の祝辞が話題になってたね。それで私はちょっと、
松田:あー、はいはい。なんかすみませんホモソサークルで。
ちなみにサイト閲覧者の男女比は2:1です
かのこ:なんか…結果としてみんな「結婚良くね?」みたいな感じになっとったんが、私としては
松田:はいはい。
かのこ:現代の教養を体現しようみたいなノリのくせにそこがそんな感じなのはどうなの?って。
言ってない
松田:はい。
かのこ:でも私は、なんで自分がモヤモヤしているのかについてうまく答えを出せなかったんですよね。で、その答えがこの本にあると。
松田:へー、じゃあ読もうかな。
かのこ:このうち…まあ『ファミリィ・アイデンティティのゆくえ』は微妙な論文なんやけど、例えば
目次
Ⅰ 近代家族のゆらぎ
一 ファミリィ・アイデンティティのゆくえ
二 家族の臨界――ケアの分配公正をめぐって
三 家族、積みすぎた方舟
四 女性の変貌と家族Ⅱ 近代と女性
一 日本型近代家族の成立
付論 「家父長制」の概念をめぐって
二 家族の近代
三 女性史と近代Ⅲ 家庭学の展開
一 「梅棹家庭学」の展開
二 技術革新と家事労働Ⅳ 高度成長と家族
一 「母」の戦後史
付論 戦後批評の正嫡 江藤淳
二 「ポスト思秋期」の妻たちⅤ 性差別の逆説
一 夫婦別姓の罠
二 生きられた経験としての老後
三 「女縁」の可能性
四 性差別の逆説――異文化適応と性差参考文献
Source: 岩波書店
初版あとがき
自著解題
初出一覧
人名索引
松田:細切れで読んでいける感じなんやね。
みなと:論文集なんだもんね。
かのこ:そうそう、あと
みなと:ふーん。
かのこ:…それで私は何が言いたいかというと、結婚という制度をよく考えたときにさ、
松田:はいはい。
日曜朝の広尾で言われても実感は湧かんけど
かのこ:それで
松田:うんうん。
かのこ:だから結婚という制度のメリットは、夫婦のどちらかの年収が103万円以下のときにだけ生じるものなの。
みなと:なるほどね。
かのこ:それ以外のメリットって特になくて…だって
松田:はいはい。
かのこ:だから相手を専業主婦/主夫にしようと思わん限り、結婚という制度にメリットはないわけ。それを超えてなお結婚を良いっていうお前らは、
松田:いや、ちょっと待ってや笑 そういう話になるんであれば、あの文脈では別に結婚じゃなくてもええねん。
かのこ:あ、そうなん?
みなと:うん、そうだと思うよ笑
松田:あれはあくまで、異性とのパートナーシップを、
自身が異性愛者であり、かつこれまでの話から、その場にいた全員が異性を性愛の対象とすると知っていたという前提のもとに「異性とのパートナーシップ」と表現しましたが、「でもそれだけでは、その場にいた人が同性を性愛の対象とする可能性は残っているよね」とか言われたらそれはそうだと思いますし、「そもそも他人と生涯にわたるパートナーシップを結ぶ上で性愛は必要条件ではないよね」とか言われたらそれもそんな気がしますすみません。
かのこ:それだったらさ、結婚の「婚」を「魂」にしてほしかった。
松田:なんやねんそれきっしょ。見たことも聞いたこともないねん。
みなと:笑
かのこ:いやいや…『あさきゆめみし』っていう源氏物語の漫画でも言ってましたよ。
松田:それもそれで知らんねん。
みなと:笑
大和和紀(2017)『源氏物語 あさきゆめみし 完全版 1』講談社
松田:だからあれは、
みなと:あの文脈では、結婚について何かが言いたいかというよりは…
かのこ:じゃあそれは明記しておくべきだよ、やっぱり。
松田:なるほどね。
なるほどね(だまれ)
かのこ:だってあの記事、あのまま区役所に行って婚姻届を出すぐらいのノリやったやん。
みなと:笑
松田:そんなことはないよ笑 関係の将来にわたっての蓋然性を高める手段として、今のところは結婚しかないけど、それに限らずそういう構造は悪くないっていう…
かのこ:うーん…でもなんか私はね、
松田:…この応酬、たぶんやけどかのこの方がきしょいで。
かのこ:そんなことないよ笑
松田:うがった見方過ぎひん?
かのこ:だってさ…サレ妻って言葉知ってる? 不倫をされた妻って意味なんやけど。
松田:あー、はいはい。
かのこ:私そういう人のブログがめちゃ好きでよく読むんやけど、ああいうのってどれだけ夫がやばいやつでどれだけ泥沼になっても、最高で慰謝料300万円くらいしか取れないの。
松田:へー。
かのこ:それに弁護士費用とか探偵費用とかも含めると、よくて100万円くらいにしかならないの。
松田:うんうん。
かのこ:…で、
松田:なるほど。
かのこ:まあそういうモヤモヤだったので、これで今回ここに来た目的は一応達成されましたありがとうございました。
まじでこれを言うためだけに来た
松田:笑
みなと:そうだね。てか…この人のこと知らないのって、そんなにやばいことなのか。
松田:うん。
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。女性学を生んだのはフェミニズムという女性運動ですが、フェミニズムはけっして女も男のようにふるまいたいとか、弱者が強者になりたいという思想ではありません。フェミニズムは弱者が弱者のままで尊重されることを求める思想です。
Source: 東京大学
上野千鶴子の東大「性差別」祝辞を元東大総長らはどう聞いたのか – デイリー新潮
松田:でもおれもそれ以上のことはあんま知らんな。上野千鶴子ってどんな人なん?
かのこ:フェミニズムを…始めた人かな? もちろんそういう人は何人かいるけど、
松田:それは日本において?
かのこ:そうそう。海外ではもっと他にいろんな人がいて、ファミリー・アイデンティティとかがなんとなく研究されていたのを、日本でも上野先生がやりましたみたいな感じ。
松田:へー。
かのこ:偉大な方だと思いますよ。
松田:そう言えばあれ、前に教えてもらったお砂糖の爆発みたいな本、あれおもしろかったわ。普通に解像度を上げてくれたというか、
かのこ:そうそう、あれは結構ハウツー本よね。
北村紗衣(2019)『お砂糖とスパイスと爆発的な何か 不真面目な批評家によるフェミニスト批評入門』書肆侃侃房
松田:「あ、そういう見方もあるんですね」みたいな、素直にそういう気持ちになったわ。
かのこ:
『お砂糖とスパイスと爆発的な何か』が発売されました – Commentarius Saevus
松田:しかもさ、いわゆる効力感を削がれるタイプの本でもないし。ほんまにそのまま、今日からやれるねん。
かのこ:そうそう笑
松田:ただあれやな、解像度が上がったことによるめんどくささはあるっちゃある。
かのこ:
松田:せやねん笑 今までなんとも思ってなかったのに
かのこ:ちょっとノイズではあるよね。
松田:まあでも、物を知るってそういうことやんなとは思ってるよ。
かのこ:だから今日のこの本も、ぜひ読んでいただきたいです。単行本が文庫化されてまだすぐだから、古本が出回ってなくてちょっと高いけど。
2021年4月18日
Caffè & Trattoria Michelangelo 広尾
この記事をお楽しみいただけた場合、ワンクリックで任意の金額から支援することができます。
このリンク先でカートに入れた商品は、その売り上げの一部が commmon に還元されます。
また「誰が、何を何と同時に購入したか」は完全に匿名化されており、「何がいくつ販売されたか」以上の情報をこちらから確認することはできなくなっています。ご安心ください。
2018年4月からNHK総合で放送されているバラエティ番組、『チコちゃんに叱られる!』。
好奇心旺盛でなんでも知っている5歳という設定のチコちゃんが、素朴かつ当たり前過ぎてかえって答えられないような疑問を投げ掛け、解答者が答えに詰まると「ボーっと生きてんじゃねーよ!」の決めぜりふと共に叱られる、クイズ形式のバラエティ番組。