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外国のこと 思索

【シリーズ イラン】取引における信義則

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今回はテヘランからライブ配信した内容を元にお届けします。

松田:取引全般ってさ、一般に結構怖いことやと思うねん。

みなと:うんうん。

松田:何が言いたいかって、相手のことを基本的に信用していないと、取引なんてできひんわけやん。お店で物を買うことにしたってさ、例えば、箱の中に入ってる商品はちゃんと機能するし、そうでなかったときにはちゃんと取り替えてくれるし…みたいな、そういう想定ができないと物なんて買われへんやん。

松田:だから「相手のことを信じましょう。相手は誠実に行動してくれます。自分も同じように誠実に振る舞います」っていう前提は、すごく大事というか、それなしには他人と能力や商品の交換なんてできひんやん。

みなと:はいはい。

松田:ただ海外旅行って、普通はそうではなくてさ…

みなと:一般的には結構そうだよね。タクシーではぼられるし、意味分かんないとこ連れて行かれて意味分かんないもの買わされそうになるし。情報の非対称性があまりに大きいからね

ビジネスクラスで移動して、現地ではハイヤーがいるくせに

松田:そうそう。要はそういうところでは、相手が不誠実に振る舞うということを想定せなあかんわけやん

みなと:うん、そうだね。

松田:でも人が不誠実に行動することを想定するって死ぬほど難しくて…だからまあ海外旅行は大変で、パッケージツアーが楽ですねって話やねんけど。

『ナショナルジオグラフィック 日本版』2017年6月号
Image: Amazon.co.jp

『ナショナルジオグラフィック 日本版』2017年6月号,日経ナショナルジオグラフィック社

松田:ところがやな、イランはちょっと事情がちゃうわけやん。イランでは、旅行者からぼったくるみたいなことは一切ないねん。ほんまに一切ない。

みなと:ほぼほぼ、一部の例外を除いてはほぼないね。

松田しかも、相手は最初から最も誠実な値段を提示しているから値切っても絶対値切れない。値切ろうとしても「そんなの無理に決まってるじゃん」って感じの反応になる。

みなと:うん。

松田:言ってみればさ、値切ろうとした時点でこちら非があるわけやん。疑ってごめん、じゃないけど。

みなと:うん、そうだね。

松田:つまり、相手からぼったくってやろうという意図は、そらもちろんよろしくないねんけどさ、値切ろうとするのだって同じくらいよろしくないわけやん。相手を信用していないわけやん。

みなと:そうだね。その力学がどっちに向いているかっていうだけで、基本的には相手を騙そうとしているというか、負かそうとしているというか…

松田:そう。なんだけど、イランではそれがほぼほぼない。個人的に一番びっくりしたのは、タブリーズのエージェンシーで航空券を買ったときやねんな。こういう条件のチケットって伝えたら、おれらが現金を取り出しもしないうちにまずチケットを発券して渡してきたわけ

タブリーズ テヘラン チケット
Image: commmon

全世界の航空会社このサイズにしろ

みなと:確かにね。

松田:あれ、ほんまにやばくない?

みなと:やばいやばい。

松田:そこで万が一おれらがお金を払わへんかったらさ、エージェンシーが丸々被るわけやん。でもとりあえず発券しちゃう。ほんでまたおれらも案の定というか、ドルしか持ってへんって言い出してんけど、そしたら銀行で両替してくるから待っててって言って、その両替までエージェンシーの人がやってくれたし。

そこで数万円の現金をまるっと預けちゃう君らも君らやで

松田:ほんまそんなんばっかりやねん。店でなんか買うときも、最後の最後まで「なんぼやで」って言ってくれへん。言われた値段を払うのが唯一にして最善みたいになってる。今日のホテルだって、今晩の部屋がほしいって言って、一泊でツインでって言って、カードキー渡されてからやっと値段聞いてるもん。「その内容ならこの額やけどええか?」って確認して、同意が取れてから先に進むって感じじゃないねんな。商品やサービスに対して払わなければいけない額が、交渉で上下し得るとは考えてなさそうやねんな

テヘラン エスピナスホテル
Image: Iran Welcomes you

東京なら10万円はする部屋に7,000円で泊まれる

みなと:あー、確かにな。それはちょっとあるような気がする。みんな、なんとなくのイメージは共有しているし、それ通りの額が提示されてくるって感じがある

松田:大体の額に対する共通の認識があって、みんなそれ通りに動いているというか。

みなと日本だったらさ、逆に全部書いてあるじゃん

松田:あー、全部書いてるな。あれはあれで本質的には同じか。

みなと:例えばホテルの料金とかも、ホームページ見たら全部書いてあるしさ。でもイランはホームページ見ても別に書いてない。

松田:でもなんか暗黙のというか、気分的な了解があるから、これが欲しいって言ったら「いくらだけどいいですか」っていう確認なしに手続きが進んでいく。袋に包むとか、部屋を確保するとか。ほんで最後になんぼだよって言われて、言われた通りの額を支払う。

市場原理がはたらいてないだけなんじゃね?

みなと:分かんないよ、もしかしたら僕たち、全部騙されてる可能性がある笑

松田:おれらが遭遇したイラン人全員がおれらからぼったくってたかもしれへん笑

みなと:でもなんだろう、提示してくる額にさ、ブレがないんだよ。ブレがないというか、妥当だと思える額しか出てこない。

松田これがもう、どれだけ楽なことか。値切るとか、値段を交渉するとか、それがどれだけ妥当な額なのかとか、そういうことを考えなくてもいいわけよ。なんかほんまに、あらゆる契約においてストレスがないねん。

みなと:そうだよね。逆の状況を想定してもらったらよく分かるというか、要は日本とほぼ一緒だよね。日本で値切ったりってしないじゃない。書いてあるもん、最初から。この額じゃないと売れないよっていうのが原則として書いてあって、それが高いと思ったら他のところに行くし、っていう感じになってるけどさ。

松田:そうそう。

みなと:イランはなんか…いや、もしかしたら商品のクオリティーの差が著しく小さいからなのかもしれないけどさ、価格を提示して相手と交渉するみたいなステージから始まるんじゃなくて、相手が何を必要としているかっていうのに対して、それに必要な額を最初からきちっと返してきてる感じがあるから、お互いに変な不信感はなく取引が終わるし、たぶん僕たち以外の人が同じものを求めても同じ額を支払わなければいけないんだろうなって思えるというか。

松田:まじでそうやんな。外国人やからぼられたみたいなこと、たぶん一回もないと思う

みなと:たぶんない。

松田:なんやったらバスにタダで載せてくれたのと、飴ちゃんまけてくれたのでちょっと得してる笑 外国人やから安くなることはあっても、外国人やから高く払わんとあかんってことはない。

タブリーズのバスは外国人は顔パスって感じあった

みなと:そう言えば昨日タオル高いって言ってたけど、あれたぶんイラン人でも同じ額だよね。

松田:そう、そうやねん。露店でタオル買おうとしたら200円って言われて、お前らさっき1kgくらい入ってる箱のビスケット90円で売っとったのに、なんでタオルが200円もするねんって思って買わんかってんな。ぼられてんのかなって思っててんけど、次に別の露店で同じメーカーの同じタオルの値段聞いたらまた200円って言ってて、そもそもがそんなもんやったんかって。

みなと:あれはシンプルに物の値段の差っぽかったよね。

松田:そうそう。イランはタオルが高い国っていう、それだけの話やった気がする。

2019年11月14日
テヘラン Espinas Hotel


イスファハーン Emarat Namakdan Cafe
HeaderImage: commmon

イスファハーンで一番おしゃれなレストラン、Emarat Namakdan Cafe。泊まったホテルの受付のお姉さんが「ちょっとexpensiveだけどとてもgood」だと言って教えてくれた。イランのEggs ‘n Thingsだと思ってくれればよい。邸宅の中庭を利用しており、石畳の床や大きなパラソル、中央の噴水など、オリエンタルな雰囲気が存分に楽しめ、店員さんもみなおしゃれ。
ただし出てくるメニューは串に刺さったケバブ。イランの外食の選択肢はほぼほぼこれしかない。