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仕事 思索 生きづらさ

人間的な豊さに目を向けるには

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中垣:世の中にある…なんて言えばいいんやろ、シンプルに言えばルールというかさ、理性主義的なというか、父性的な何かというかが…もちろん自分もそれに適応してるところは全然あるねんけど、でも中々受け入れられなくて

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『河合隼雄 全対話 Ⅲ – 父性原理と母性原理』第三文明社

中垣:つまり簡単に言うと、「期限を守れないやつはクソだ」みたいなのがさ…まあ分かる、そんなん当たり前やねん。でも当たり前やねんけど、それを守れない人だっているわけやん

松田:うん。

中垣:おれも守れないサイドやし、河東だってそうやし、もっとひどい人だっていくらでもおって…

c アスペルガー症候群って診断された

松田:はいはい。

中垣:そいつらは社会に出たらクソだと、ビジネスの世界ではあかんと。それは分かるねんけど、だからって切り捨てていいのかというか、じゃあできない人はどうなるのかというか…

松田:うんうん。

中垣:おれ今週、仕事サボって寝てたりしとってん。そしたらバレたんか知らんけど「進捗どうですか?」ってなって、昨日は「何時から何時まではこれをやって…」っていうふうに、時間を切ってタスクを振られてたわけ。

松田:はいはい。

中垣:でも周りの人はそうじゃないわけ。まあ真面目なわけですよ。

松田:うんうん笑

中垣:じゃあなんですか?おれは会社を辞めたらいいんですか?って感じ。昔から思っててんけど、おれは真面目じゃないねん。真面目な人のことが分からへん、なんでそんなことができるのかも分からへんねん

松田:うーん。

中垣:なんて言えばいいんやろうな、なんか真面目な人の正論っぽさが分からんというか…

松田:なんなんやろな、個別具体的な例がたくさんあって、あるいは社会の構成員一人一人がおってさ、その集合として全体があって、その全体を便宜的に解釈するというか、単純化して円滑にするためにルールとか一般論っていうのがあるわけやんか

社会は部分の集合としての全体であり、個人は全体の分割としての部分ではないというお話。

中垣:うん。

松田:なんて言えばええかな、逆にそのルールとか一般論を根拠に部分の差異を否定するのは違うというか

中垣:そうそう。

松田:まず個別具体的な事象があって、それを一般化したものとして言語的ラベリングがあるのに、そのラベリングを根拠に具体を否定し出したら意味不明なんと一緒やんな

複数のサンプルから回帰直線が導かれたとき、あるサンプルがその直線から大幅に外れていても、そのサンプルのリアリティはなんら損なわれることはないと言えば分かるかな。さらに言えばその外れたサンプルがあってこそ、まさにその回帰直線が導かれるわけです。

中垣:うん、そうそう。なんか言いたいのはそういうことで、ルールはあくまで、社会とかビジネスのゲームの上でのルールなわけやんか。だからそれが守れない人がいたとして、そのゲームの中で弱い人なだけで、それが彼の何かを表しているのでは全くないわけよ

松田:うんうん。

中垣:その上で「彼は仕事ができない」と言うのであればそれは勝手だしその通りなんだけど、往々にしてそれが、彼への個人的な感情に影響するというか、「だから彼が嫌いだ」みたいになるわけやん

フグの本質は美味しいところであって、毒があって調理が手間なことではないよ

松田:うんうん。

中垣:それがいまいち納得できなくて。人の本質はカオスで…というより本質なんてなくて捉えきれないものなんだけど、それを経済のもと合理化して円滑に社会を回していく上で、ある程度一般化してルールを決めてるわけやんか

松田:そうやんな。

中垣:なのにも関わらず、その一般論とかルールを根拠に人を本質的に見ようとするわけやん。そもそも究極的に言えば、そういうふうにゲームを切り替えた時点で素晴らしい人もダメな人もいないわけ

松田:うんうん。

中垣:一般化されたパラメーターの上でどちらが優れているかという話にしかならないわけ。カードゲームの攻撃力とか守備力とかの世界でしかないわけ

弱いけど絵が好きだから大切にしてるカードとかあった

松田:うんうん。

中垣そこにはその人の本質は何も投影されていないにも関わらず、そこに人格を見ようとするのはなぜなのかというか…そういう空気感がすごい気持ち悪くて

中垣:サボってたからダメでしたっていうのは分かるけど、だからどうしたというか、それでもそいつと飲むのが好きなら、それは別に飲めばええやん。

松田:うんうん。そうね。

中垣:というかむしろ、そこにこそ興味があるわけやん。「なんでやれって言われてんのにやらへんの?」って。それこそが知りたいやん。どうやってサボってたのか、寝てたのかパチンコ行ってたのか、カフェにいたのか…

「なぜ彼はそうしたのか」を問わずに他人を判断してはいけません

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河合隼雄『子どもと悪』岩波現代文庫

松田:笑

中垣:「せなあかんっていう圧力に対してどう感じてたん?」とか、そういうことにこそ興味があるわけ。

松田:うんうん。

中垣:それに世の中の音楽だって文学だって、かなりの部分がそういうところに依っているわけやん。そんなこと言うなら、世のビジネスマンはビートルズ好きとか一生言うなよって思うわけ

松田:そうね、間違いない笑

中垣ビートルズってどういう人達か知ってる?って笑

松田:こんなことを言ってもだからどうなるって話やけど、やっぱみんなアホなんやろうな。言語能力が低いねん。それってどういうことかって、ひとつの集合を分節していく上でレイヤーを複数持ててないねん。あるレイヤーで集合を分節したとき、他のレイヤーの可能性を同時に保持できていない

中垣:うんうん。

松田:言語能力が高ければひとつの集合を何重にも分節できて、物事をより多面的に認識できるねんな。でもみんなアホやから、最も単純化された形でしか集合を認知できてないねん

中垣:そうねそうね。

松田:その最も単純化されたものを知って、あたかも何かを知ったかのように思ってる。

中垣:そうそう。でもこれは身の程を知れとか、アホは黙ってろって話ではないねん。便宜的にゲームをシンプルにしたくせに、そこに複雑な人間性を見出そうとしてるのが問題で

松田:うんうん。

中垣そういう本質的な人格を見たいのであれば、単純化されたラベルに頼ることなく誠実に取り組めというか

松田:そうやんな。

2020年5月16日
Aux Bacchanales 紀尾井町