太郎:ミヒャエル・エンデの『自由の牢獄』、まだ表題作までは読んでいないんだけど…
松田:おれは逆にね、表題作以外はそんな真面目に読んでいないし、どんな内容だったかなんて覚えてないよ。
驚きである
太郎:あ、ほんと? なんかね、最初の
松田:はいはい。
太郎:で、それがなんでだろうって分析したときに…まだぼんやりとしか言語化できていないんだけど、そもそも話の筋って覚えている?
松田:いや、全然。そこの説明からお願いしたい。
太郎:えっとね…例えば音楽を聞いたりとか、あらゆる芸術に触れるとか、あるいは仕事をするとかの中でも、
松田:はいはい。
太郎:小さい頃に母親と引き離されて、父親に世界中引き回されてホテル暮らしをしてきたみたいな主人公だから、そういう幼少期の体験もあって、何をしても心から楽しいと思えないと。
松田:うんうん。
太郎:…っていう中で、
松田:はいはい。
太郎:で、それは世界のどこかにある光景で、絵を描いたやつはそれを目にしたに違いないと。そういうふうに主人公は直観して、
松田:あー、うんうん。
太郎:そもそもそこまでは、心情風景を中心に緩めなテンポで物語が展開していたんだけど、その絵に描いてあるのは実際に存在する場所で自分はそれを探すための探検に出よう、っていう
松田:うんうん、なるほどね。
太郎:それで一緒に探検に行く10人くらいを集めたり、そいつらが途中の過酷な環境で死んでいって、で、最後はたどり着いたのかそうでないのかよく分からない感じで終わるんだけど…
松田:うんうん。
太郎:なんだろうな、いろいろと頭の中で思いめぐらせているフェーズがあった後の、
松田:はいはい。
頭の中で様々に思いめぐらせた後に、行動によって実際に物事が展開していく様子は、テンポにおいても、またそれが一般化可能性の低いものである点においても、ちゃちゃっと描写するのが正しいのですね。
太郎:あとはこれって、三島が死ぬ前に書いた四部作のうち一番最初の
松田:それはどんな内容なん?
人に勧めた本は読んでいない、人から勧められた本も読んでいない、まじでなんなん?
太郎:これは、主人公と恋人が逢瀬を重ねるんだけど、その恋人はそもそも皇族と婚約をしていた人で、その逢瀬が世間にばれたせいで女性は出家してしまうんだよね。で、出家して奈良の山奥にいるから会えませんってなって、どうしようか悩んだ後に会うためになら死んでもいいって言って、寺に行っては面会を謝絶されて最後には死ぬんだけど、それもこう…
松田:うんうん。
太郎:それでまさにさっきの話なんだけど、カタログから取り寄せるしかなくね?ってなってからの小気味のよさみたいなものを、まあエンターテイメントとしてと言うとあれだけど、しっかりと質の高いものに仕上げてくれていて、そこがよかったなというか。
松田:うん、なるほどね。
カタログから取り寄せてテーブルに並べることに例えられるように、全ての可能性を純粋な可能性としてのみ検討するのではなく、その中のいくつかを不可逆に選び手元に引き寄せ、よりリアリティのある選択肢として検討することでこそ物事は大きく動き出すのだということを、直前まで話し合っていました。これについても近日中に公開します。
太郎:『遠い旅路の目的地』も『春の雪』も、
松田:うんうん。でも実際、それは間違いなくひとつの真実やんな。
これ超しっくりきたんですけど、みなさまはいかがでしょう?
2021年4月24日
Aux Bacchanales 紀尾井町
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