なつき:なんかさ、今「フィット感」って言われて思い出したんだけど、
松田:あー、あるね笑
commmon では、インテレクチュアルな認識とフィジカルな実態が乖離なく一致していることを分かりやすく「フィット感がある」と表現しています。
その究極の例は禅における悟りやプロスポーツ選手のゾーンであり、逆に「人生なんかしっくりきていない」「したいことをできていない気がする」など、あらゆる種類の迷いや悩みはフィット感が損なわれた状態です。
なつき:それらの解説をいつか是非聞きたいなと思っていたんだけど…まあフィット感はだいたい掴めているんだけど、他には
松田:はいはい。
なつき:おれが覚えているのは落合陽一の服について話してたときで、「まだ自分がかわいいって感覚が捨てられてないんじゃないか」みたいに言ってたと思うんだけど。
松田:あー、なんかそういう話あったな。
中垣:でもまあ振る舞いとか、ちょっと子供っぽいところがあるなとも思うよ。
河東:ニュース番組とかでもたまに拗ねるもんな。
中垣:変なプライドというか、せんでもいい対象への自己同一化みたいなのはあると思う。
Source: commmon
なつき:他にもね、おれがまだ掴みかねてる言葉があった気はして…
松田:自分がかわいい、か。
なつき:あー、それだ。
アイデンティティー【identity】
①人格における存在証明または同一性。ある人が一個の人格として時間的・空間的に一貫して存在している認識をもち、それが他者や共同体からも認められていること。自己同一性。同一性。
Source: 新村出編(2008)『広辞苑 第六版』岩波書店
②ある人や組織がもっている、他者から区別される独自の性質や特徴。「企業の―を明確にする」
松田:嘘でしょ笑 自己同一化っていうのはさ、前になつきがNハリのバケットハットを買ってすぐのとき、あれを被ったイラストかなんかをラインのアイコンにしてたやん。
ディスではない
なつき:あー、はいはい笑 じゃあ…特定の物にアイデンティティを感じてしまってる状態ってこと?
松田:まあ物もそうやし、あるいはおれが「東大中退なんです~」とか言い出したらそれもそうやろうし、要はそれがなんであれ、
人間はあらゆる複雑さの根源であり、それ自身が何かを定義することはあっても、何かに定義されるような存在ではありません。あなたは一挙手一投足によってのみ定義され、何者かである前に、すでに何かをしているのです。
なつき:あー、それは記号的に自分を語ろうとするってことなのかな? バケットハットとか、大学中退とか、ある種の断片的な記号というか…
まあ言い出したら、語ることは本質的に記号的すけど
松田:
なつき:ふーん。じゃあ何かに過度に自己同一化することはあまり良しとはされていないわけで…
松田:ないんじゃない?
なつき:commmon ではそれは一切否定されるの?
うち、そもそも教義とかないです
松田:いや、それは知らんよ笑 別にいろんな考え方があっていいんじゃない? ただ
なつき:あー…
松田:まあ難しいねんけどさ、例えばなつきが「ネオ・ニンジャやります!」って言ってそういう服装ばっかりしてたら、それはそれでちょっと違うやん?
なつき:あー、はいはい。
ネオ・ニンジャ
松田:つまり
なつき:はいはい。
松田:し、そういうふうに記号化された瞬間に実態から切り離されてしまい得るというか…それこそおれが「東大中退なんです~」とか言うてもさ、そんなん結構どうでもいいやん。
なつき:あー…
松田:
なつき:まあ確かに。
太郎:名前を付けるのなら印象派とかロココ期とか、そういう感じであってほしいよね。
みなと:そうだね笑
太郎:モネが自分のプロフィールに「印象派」とか書いてたらおかしいじゃん。
Source: commmon
松田:そういう意味で、自身を何かに自己同一化する精神構造は…個人的にはそんなに好きではないかな。
嘘です、大嫌いです
なつき:うん、なるほどね。
松田:あれやん、
なつき:まあ確かにね笑
松田:だから「自分がかわいい」っていうのも…まあなんやろうね、自分がどう思われているかが気になっているというか、自分が何者なのかが気になっているというか。
なつき:あー、
松田:あー、うんうん。なんかそんな雰囲気のことを中垣が言ってた気がするな、でもおれもそういうことやと思う。すごく狭い意味でエゴいというかさ。
なつき:でも…自分への興味は捨てないといけないんですか?
松田:たぶん今の話で想定されている自分っていうのは、もっとも偏狭な意味での、他者と二項対立的に存在している自分のことじゃないかな。
なつき:あー、なるほどね。
c 二種類の認知の膜
松田:自分への興味を捨てて、それとは背反なものとして他者への興味を持とうとする…つまり
なつき:はいはい。
松田:自分への興味が捨てきれていないって言うときに問題になっているのって、自分についての視野があまりに狭いことだというか…
なつき:うんうん。
松田:そのときって…なんやろう、自分という存在の外縁部がその辺りにまで延びている感じがあるというか。
なつき:はいはい。
松田:要はそれが自分ごとになっている…そう言うとちょっと分かりやす過ぎる気はするんだけど、でも結局そういうことやと思う。つまり利己的であることと全く対立しない形で利他的になれているわけやん。そういうふうに
ツイッターでポリコレシャウトをする前に、コンビニの店員さんに優しくしましょうね
なつき:あー…
松田:…ところで、なんでこんな話になったんやったっけ?
なつき:「自分がかわいい」とか「自分への興味を捨てきれていない」みたいな話から始まったかな。
松田:あー、そっか。だからあれやね、ここまでが自分だと思える領域が超狭いというか、
「自分がかわいい」を超えた先は「世界は多様で豊か、ぼくも自由」です
なつき:なるほどなるほど。
中垣:なんかもうちょっと普通の話をするとさ、同期が100人くらいおるねんけど、中には研修の時点で会社の文句言ってるやつもいんの。まじで意味分からんなと思って。それって要は、会社が対象であって自分ではないわけやん。文句あるなら辞めるか、変えていくためになんかネゴるかしろよって。
藤後:そういう人って私の膜を会社にまで広げるのが怖いんじゃないかな。
中垣:怖いんやと思う。
松田:そうそう。だから基本的にはそうやねん。私の膜を世界の膜に寄せていくのは怖いわけ。
Source: commmon
c 二種類の認知の膜
松田:だから「自分への興味を捨てなければいけないんですか?」ってなると、別にそんなことはなくて、
c 禅的公共観
なつき:あー、うん。
松田:てか自分への興味を捨てて利他的になろうとしてもね…ソマリアを想って節水させようとする小学校のババアティーチャーみたいな、あんなんにしかならへんやん。
なつき:笑 なんか今の話を聞くまでは、自分という視点の他に第三者的な視点を持つべきだ、みたいな話だと思ってたんだけど、というよりは
松田:うん…まあたぶんそう。いずれにしても、自分とそれと二項的に対立する他者がいて、それらを俯瞰する誰でもない第三者がいるみたいな、そういう考え方はちゃう気がするよな。
なつき:はいはい。
松田:私とあなたが主格分離的に存在する以上そこに対立は不可避だし、しかもそれを超えたところに全てを見渡す第三者を想定するって、あちらにもこちらにも矛盾が生じるのは当然のことやん。
なつき:うんうん、そうだよね。
松田:だからそうじゃなくて、
なつき:それでなんかさ、前に鈴木大拙か何かの話で…
松田:あー、あれね。
なつき:そうそう笑 それはつまりそういうことだよね。
松田:うん、せやね。
なつき:なるほどね、ようやくその言葉が腑に落ちた。あとさ、自己同一化に関連した話で最近思ったことなんだけど…
松田:はいはい。
なつき:おれは今の職種が経理系というか、会社の経営の数字を見ているような職種なんだけど、まあ
松田:へー。
なつき:で、一方で自分は大学名が知られているみたいなことがあって、それがすげえプレッシャーで。
松田:あー、はいはい。
はいはい
なつき:あんまり気にしていないつもりではいるんだけど、それでもやっぱり…
松田:「なつきくんは東大卒だから〜」みたいな?
なつき:…って、おれが勝手に思ってるみたいなところがあるなって。それが最近、仕事でしんどいことだね。
松田:なるほど。いやまあ知らんけどな笑
なつき:
はいはい
岸見一郎・古賀史健(2013)『嫌われる勇気』ダイヤモンド社
松田:でもさ、
なつき:まあ実際するんだよね。
松田:だからあれやん、
なつき:あー、なるほどね。
松田:しかも、
なつき:まあね。
松田:だからミスしてもいいんじゃない?
なつき:まあ確かに、それは分かりやすいな。
2021年5月9日
Aux Bacchanales 紀尾井町
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