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【シリーズ】原発事故からの復興の現状 #1

福島第一原発の敷地と帰還困難区域への立ち入りを通して、原発事故とその復興について、机上では得られないリアリティを知ることになりました。

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2020年11月22日と23日の二日間、commmonでは福島への視察旅行を実施しました。原発事故からの復興の現状をお伝えします。

富岡町

みなとなんかこの辺ニュータウンみたいだね

太郎:基本的には家を全部解体しちゃってるからね

みなと:あ…そういうことか、なるほどね。

富岡町 – Wikipedia

松田:はいはい。

太郎:で、今右手に見えている洋館風の建物が東電の廃炉資料館。明日、第一原子力発電所に行かない組が行くところ。

松田:はいはい。

太郎:これ、元々は原発が地域にどういう影響を与えているのかとか、そういうエネルギー系の広報をする施設だったんだけど、今は当然そんなことできるはずはなくて、改装して廃炉がどういうふうに進んでいるかを宣伝する施設になっている

東京電力廃炉資料館
Image: 産経新聞

「反省と教訓」東電が廃炉資料館 富岡町で30日オープン – 産経新聞

東京電力廃炉資料館

松田:へー。外観がこれっていうのがね笑

太郎:最初にそうしちゃったから仕方がないよね。


国道6号線

福島県浜通り 帰還困難区域
Image: ふるさとの手帖

帰還困難区域が残る、福島県浜通りへ。【市町村一周の旅】 – ふるさとの手帖

太郎:そろそろ中垣が言っていたゾーンだね。

今回の視察は、以前中垣がそのことを知らずに国道6号線の福島県内の区間をドライブで通った際、道沿いが荒廃していることに衝撃を受けたという話をきっかけに、仕事で福島の復興に関わっている太郎のアレンジのもと実現したものです。

中垣:そう、前に来たときもほんまにこんな感じやった

太郎:既に看板も出てるしね。

福島 帰還困難区域
Image: commmon

中垣:あー、これこれ。

山岡:ほんとだ。

太郎線量計そこにあるけど今どれくらい? 車内だからあんまりかもしれないけど。

放射線 線量計
Image: commmon

見た目がかっこいい

松田:あ、でも上がってる。今が毎時0.19マイクロシーベルト…どんどん上がってるわ。上野を出たときは毎時0.03マイクロシーベルトとかやったもんね

山岡:へー。

きむ:なんか感じる?

太郎:それは感じないよ笑

中垣:笑

みなと今この道を通ることは全然問題ないんだよね?

太郎:そう。でもこれにもなかなか歴史があって、当初は四角四面の運用をしてたんだよね。帰還困難区域だから立ち入れませんって言って、立ち入る場合は毎回身分証を確認して

松田:うんうん。

太郎:ただそれで大渋滞が起きて、住民からしてもどう一時的に戻るだけなんだから早くしろよっていうのがあって、特別通過交通制度っていって、とりあえず車が通るだけならOKにしようってなった

これまでの特別通過交通制度について – 経済産業省

中垣:ほーん。

太郎:で、あそこにあるのが…あ、もう解体始まってるんだ。

福島 SEGA WORLD
Image: commmon

松田:何あれ?

太郎:今右に見えてるのがさっき言ってた、Netflix が勝手に入った SEGA だね

世界の”現実”旅行 – Netflix

福島第一原発の周辺で… 外国人が「無断」で侵入 – NHK

きむ:Netflix が入ったから解体することになったの?

太郎:いや、そういうわけではなくて、こういう感じで残ったままだととにかく風評被害が続くからなんとかしてくれって声があるんだけど、とりあえず中小企業に関しては環境省が解体をするっていうスキームがあって、この建物を運営していたところは SEGA のさらに子会社の中小企業みたいな感じになっていて、解体に着手できていたはず。

きむ:なるほどな。

太郎:でも、大企業となると自身のポケットマネーでやってもらうしかなくて、今でもなかなか解体は進んでないよね

中垣:はいはい。

松田:…うわ、これローソンやん

みなと:あー、まじじゃん。

きむ:あ、これか。

福島 帰還困難区域
Image: commmon

中垣:おお…

松田:まあローソンのロゴがついたまんまやとね、印象悪いもんね。

中垣:すごいな、こんなんもうバイオハザードやん

松田:ね。


線量

太郎:今で線量どれくらい?

松田:毎時0.7マイクロシーベルトくらい。

みなと:めっちゃ上がってるね。

太郎:さっき外の電光掲示板を見ると毎時1.7マイクロシーベルトとかだったから、やっぱり車内だと4掛けくらいにはなるね。屋内と屋外では全然違ってくるんだよ

福島 線量計
Image: commmon

こういうのが各所にある

松田:はいはい、やっぱそうやねんな。

ここで過ごすことで健康被害を受けるわけではありません。国際的な合意では、放射線による発がんのリスクは、100ミリシーベルト(=10万マイクロシーベルト)以下の被ばく線量では、他の要因による発がんの影響によって隠れてしまうほど小さいため、放射線による発がんリスクの明らかな増加を証明することは難しいとされています。仮に毎時1.7マイクロシーベルトのエリアで1時間程度屋外で過ごしたとき、その被ばく線量は胸部X線検診(一回あたり60マイクロシーベルト)の20分の1以下です。

放射線 ガン リスク
Image: 環境省

放射線による健康影響等に関する統一的な基礎資料


特定復興再生拠点区域

太郎:この辺りは住宅だね。今ここは避難指示解除のエリアに含まれようとしてるから住宅の解体が始まってるところもあるんだけど、地権者との間で解体申請手続が進んでいないとなかなか手をつけられないこともあって、工事の順番には差があるね。

福島 住宅 解体
Image: commmon

中垣:うわ…

太郎:これでも2022年には避難指示が解除されて、人が歩けるようになろうとしてるんですよ

中垣:これでそんなん言われてもって感じやな。

みなと:歩けたとてって感じだよね。

太郎:そうそう、そうなんだよな…

せーので全員戻ってくるわけじゃないんですよ

原発被災地「内なるギャップ」 進まぬ帰還、遠のく目標 – 河北新報

太郎:ちなみに帰還困難区域の中でも、2022年から2023年に避難指示が解除されようとしている特定復興再生拠点区域っていうところは、帰る準備のための一時的な帰宅の頻度が上がるということで、地元からの要望を受けて通行証とかなしで勝手に立ち入ってもいいように規制が緩和されてる

特定復興再生拠点区域
Image: 環境省

特定復興再生拠点区域 – 除染情報サイト – 環境省

松田:へー。

きむ:この辺りに放置されてるガソリンスタンドって、中のガソリンは全部抜いてあるの?

福島 帰還困難区域
Image: commmon

中垣:あー、確かに。

太郎:それは全部抜いているはず。あとはプロパンガスとかもそうなんだけど、そういう危険なものは撤去しておきましょうっていうことになっていて、それを支援するための補助金もある

きむ:そらそうか、そうだよな。


福島第一原子力発電所の排気筒

松田:あそこに見えてるのが福島第一原子力発電所か。あのクレーンがニュースでいつも見てたやつね。

太郎:そうそう。で、その横にあるのが排気筒。事故で建屋内の圧力が上がってやばいってなったとき、ベントをしたのがあの排気筒からだね

松田:ほーん。

太郎一番高い排気筒は、ちょうどこの前地元の企業が上半分を切り取って低くしてたね。高いままだと台風とかで倒壊するリスクがあったから。

福島第1、排気筒の解体開始 事故時「ベント」で使用 – 日本経済新聞

松田:はいはい。

太郎:そういう地道な土木工事を、放射線量が高い中でどうやって進めていくか、細かく決めながら積み重ねていってるって感じだね

松田:なるほどね…

太郎:それが廃炉なんですよ。

圧力容器最深部は火星より遠いのです

2020年11月22日
福島県

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福島第一原子力発電所 排気筒 解体
HeaderImage: TEPCO

福島第一原子力発電所における排気筒解体作業の様子。損傷・破断箇所がある排気筒の耐震上の裕度を確保するために計画され、新規に開発された解体装置を用い、排気筒上部での作業は無人化された。
円滑で確実な作業のために、高さ18メートルの排気筒模擬施設を使った実証試験が事前に行われている。

福島第一原子力発電所における1/2号機排気筒解体作業の様子(9月1日公開分) – TEPCO