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いいと思うのなら対価を払え / いいと思うのならタダにするな

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松田中垣が前に言ってたプレジデントの記事、あれすごいよかったね。

【楠木】インターネットの時代になって、情報材を扱うB to Cの商売の実態は、ほとんどの場合、広告業もしくは販促業です。広告業の生命線はユーザーの数です。これはラジオやテレビの時代からまったく変わっていない。見ている人がたくさんいるほど、プラットフォームとしての価値が高まり、広告主を集めやすくなり、広告収入が得られます。どうしたらユーザーの数を集められるか。いちばん手っ取り早いのはタダにすることです。こうした成り行きで、「ネットの情報はタダ」が当たり前になりました。

とにかくスケールさせなければならない。しかし、ユーザーから直接カネは取れない。十分な規模に至るまでには時間がかかるので、情報サービスのスタートアップ企業の多くは、まずは「赤字を掘る」ことになる。それはそれで一つの手口なのですが、赤字を掘ったその先にきちんと商売が成り立つかどうか、長期利益につながる首尾一貫した戦略ストーリーがなければいけない。

筋の通った戦略もなく、集めた原資をひたすらプロモーションに投資し、漠然とした楽観にもたれて目先のユーザー数を伸ばすことにかまける会社が多いですね。広告で儲けようとしているのに、自分が広告費を払う側に回ってしまっている。揚げ句の果てに、一定のユーザーを集めたところでどこかに事業を売却して、手じまいにする――これを最初から目的としているフシがあるスタートアップも珍しくありません。

私に言わせれば、これは商業道徳に反しています。しかし、当人にその意識はない。それどころか、「先端的」なことをやっていて、称賛される価値があるとさえ思っている。ずいぶん規律が緩んでいると思いますね。

Source: PRESIDENT Online

何でも無料のインターネットは、「商業道徳」を無視しすぎている – PRESIDENT Online

中垣東浩紀と楠木建のやつやんな。あれいいよね。

松田:あれ読んで『ゲンロン戦記』買ったわ。

東浩紀(2020)『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』中公新書ラクレ
Image: Amazon.co.jp

東浩紀(2020)『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』中公新書ラクレ

松田:なんかあの記事読んで、やっぱりああいう課題感って誰しも持ってるんやなと思ったわ。

中垣:そうやんね。なんかそれに関してじゃないねんけど、Twitterが2023年までに売り上げを2倍にするねんて

松田:へー。

ツイッターが年間売上高の倍増目指す、向こう3年で-株価急伸 – Bloomberg

中垣:これまではプラットフォームとしての大きさのわりにお金を稼いでいなかったけど、サブスクとかチップ機能とかを導入するらしいよ。

あー、commmon と同じですね

松田:確かに。一時期はディズニーが買うとかなんとかって話もあったくらいやもんね。

ツイッター買収、ディズニーも検討か 報道 – AFPBB News

中垣:あー、そうなんや。でも結構おかしいよね、ずっと続いてるしユーザー数も多いのに。

松田:そうやんな、十分に稼げていないって言われてもユーザーの実感からは乖離があるよね。だからまあ、あの記事の中で言われていた話はTwitterもそうで、ユーザーから直接対価を受け取っていない以上、ことさらにマネタイズを意識しないとあれだけ大きくてもお金にはならへんって話やんな

中垣:まあそらそうやねんけど、でも確かにそこのギャップってあるよね。そう考えると広告って謎というか…

松田:うんうん。

中垣:つまりユーザーからはお金を取らずに良いサービスを提供するってなったとき、結局広告モデルしかないっていうのがね

松田:そうそう、おかしな話ですよ。あの記事でも、GoogleとFacebookは新しいマーケットを創造したわけではなくて、ただ別のところに出稿されていた広告にとってかわっただけだって言ってたよね。

【楠木】YouTubeなどの再生数が生みだす広告経済的な価値は、いずれ落ち着くところに落ち着くでしょう。そのことを一番よくわかっているのが、当のYouTubeのはずです。

この四半世紀ほど、GoogleやFacebookがあれだけヒト・モノ・カネをぶんまわして試行錯誤したのに、「マネタイズ」の方法としてはいまだに広告や販促しか見つかっていない。これだけやって見つからないということは、おそらく今後も見つからないでしょう。Facebookは売上高のほとんどすべてが広告収入です。

ところが、アメリカでは広告市場の規模はほとんど変化していません。ネットは新しい広告需要をつくったわけでなくて、新聞やテレビといったオールドメディアからシェアを奪っただけです。本当の意味で市場を創造したわけではありません。

Source: PRESIDENT Online

中垣:あー、そうやんね。ゼロサムゲームやもんね

松田:そう、そうやねん。ゼロサムゲームをやっている以上そこに希望はないねん。

マット・リドレー(2013)『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』早川書房
Image: Amazon.co.jp

マット・リドレー(2013)『繁栄 明日を切り拓くための人類10万年史』早川書房

中垣:さらに思うのはさ、前に「データがなんぼのもんじゃい」って話をしたけど、自分としてはどっちの立場もあると思ってるのね。

中垣:極端な話、アーティストにデータは要らんわけやんか。

Source: commmon

c データってそんな大事?

松田:はいはい。

中垣:ひとつには、データが有用だというのはもちろん分かるねん。去年二人でやってたインスタのフォロワー分析だって、そもそもからして楽しかったし。

様々のブランドアカウントのフォロワーリストを比較することで、ブランド同士に相違相関を見出すという遊びをしていました

松田:うんうん。

中垣:なんだけれども、ユーザーにとっては無料でサービスを享受できて当たり前っていう価値観が広がると、企業側もそういう形でサービスを提供するしかなくなくなる、つまり広告モデルに頼るしかなくなるわけやん

松田:うん。

中垣:で、その広告モデルって要はユーザーのデータを集めてそれに最適化した広告を配信することやから…つまり、データを扱うことが手段じゃなくて目的になっているというか、そうすることでしかお金を稼げなくなっているというか

松田:あー、はいはい。

中垣:だから、どこかで次のイノベーションが起きたとき、みんなが「あれ…これ要らなくね?」って気付いて一気に終わりがくるモデルな気もする。データで広告配信が最適化されても別に生活が豊かになるわけじゃないって人々が気付いて、ならお金払って自分の欲しいものを手に入れた方がいいっていう、当たり前のことに気付いた瞬間にね

みなと:そうだね。

松田:あとはサービスを無料で享受できることの何が気持ち悪いかって、前に次郎とおれで話した、社会を変えるとか言う前に、今日の夕飯をセブンで買うのかファミマで買うのかあるいはコンビニでは買わないのか、そういう些細な一挙手一投足が世界を決定しているという責任を意識するとこから始めろよって話に沿って考えたときに…

松田:「社会は変えられる」って言うとき、その「社会」という表現は複数の個人からなる全体を想定しているわけだけれども、その全体が個人の集合として定義されている以上、社会が変えられる変えられない以前に、あらゆる個人の何気ない一挙手一投足はそれがなんであれn分の一の重みで全体に貢献しているわけで、そこを認識するのが先じゃね?って思ったのね。

次郎:あー、なるほどね。

松田:自分とは離れたところに「社会」なるものがあって、積極的な意志を持って初めてそれにはたらきかけられるというのではなく、こちらがどういった意図を持っていようが、そのことに自覚的であろうが無自覚的であろうが、お前の一挙手一投足はまさに世界を形作ってるんだよって。

Source: commmon

c 社会を変えるんじゃないんだよ、お前が変わるんだよ

中垣:うんうん。

松田そういう一挙手一投足への責任って、無料のサービスを利用するときにはほとんど意識されなくなっちゃうやん

中垣:そうやんな、それはすげえ分かるわ。

YouTubeでしょうもない動画を見るということは、そのしょうもない動画で生計を立てる誰かを肯定することなのです

c よいものが売れる vs 売れるものがよいもの

松田:例えば2chのまとめサイトみたいなしょうもないものを存在せしめて、それに携わる人を食わせているのはまさにユーザーのビューなんだけれども、当のユーザーからすると無料やし暇潰しにはなるから別にそれでいいっていうふうに、その選択への責任って全然意識されないやん。お金を払ってたらそうはならへんはずやねん

中垣:要は給食やんね。

松田:うん…え、給食?

中垣:誰も喜ばないけど存在してるそれって、すごく給食っぽくない?

松田:あー、なるほどね。それで言うなら、あんまり美味しくはないけどそこそこの量がある給食は無料で、それが嫌な人は自分でお弁当を持って来てもいいですって状況なら、今言ってることとまさしく同じやと思う。そういう状況って、誰にとってもしっくりきてないものがなんとなくまかり通ることを許してしまうよね

中垣:そう、そうそう。

みなと:でも働いていて思うんだけど、正当な価値をお支払いいただくのって結構難しいよね。

松田:はいはい。

みなと:それこそ鉄なんて安くて安定的に供給されなければいけない商品だから、その価値を訴求するのがすごく難しくて…やっぱり付加価値を丁寧に説明して納得してもらうしかないのかな

あまりにも長かったのでカットしましたが、鉄の価値の評価云々については15分以上話していました

中垣:いや、でもそこじゃないと思うねんな。確かに付加価値を説明するのは難しいねんけど…

松田付加価値なんてなくても、それに対しても相応な額を払うっていうのが大事なんやんね

中垣:そうそう。

松田:インフラ的で無料に近いことが期待されるものに、新たに付加価値を付けてきちんとお金を払ってもらえるようになっても、インフラ的なものは無料に近いことが期待されるという本質的な問題は解決されてへんねん。

みなと:いや、確かにそうだね。

松田:ただまあ、じゃあその適正な額がいくらかなのかは知らんけどな。

中垣:で、その適正な価格っていうのはまさに今の価格なんじゃない?

みなと:結果として、ってことだよね。

中垣:うーん、なんか解けない問いを解こうとしてる気がするねんな。確かに鉄はエッセンシャルなものだし無いと困るんだけど、それは鉄を使って製品を作っているあなた方も同じでしょう?と。

みなと:うんうん。

中垣:そこのところを10年20年スパンのビジョンとして握れたらより適正な価格への調整は可能かもしれへんけど、それを踏まえてもなお値下げを強いられて今の価格なのであれば、それはもうどうしようもないよね

みなと:なるほどね。

中垣:で、そのまま鉄の生産が徐々に縮小していったとき、それ以上に生産が減ると困るっていうギリギリのところでやっとお金が入って、そこで過不足なく必要な分だけが確保されるんじゃない?

みなと:あー…

アダム・スミス(2020)『国富論 上』講談社学術文庫
Image: Amazon.co.jp

アダム・スミス(2020)『国富論 上』講談社学術文庫

中垣:だから鉄の話とネット上のコンテンツの話はまたちょっと違う気もする。

松田:鉄はネット上のコンテンツと比べるとよりエッセンシャルで、だからギリギリのところで腰を上げるやつがいるって話やんな。

中垣:そうそう。

みなと:うーん。

松田:どうやろう、個人的にはそういう形で均衡がとれるかは怪しいというか、これより先は買い支えないと本当にまずいという判断をできる人が十分にいるかは分からん気もするけどな

中垣:あー。

松田:それこそ『肩をすくめるアトラス』みたいにさ。

c 『肩をすくめるアトラス』の一番いいシーン

みなと:なるほどね。

2021年2月26日
Clubhouse

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