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21世紀を生きるのなら井筒俊彦は読まなきゃ

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西川:それ、分厚いね。

松田:これは井筒俊彦の『コスモスとアンチコスモス』っていうやつで、表題作以外にもいくつか、いろんなところでの講演とか文章が収録されてるね。

西川:ほうほう。

井筒俊彦(2019)『コスモスとアンチコスモス 東洋哲学のために』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

井筒俊彦(2019)『コスモスとアンチコスモス 東洋哲学のために』岩波文庫

 東洋文明では、言語を超越する認識のあり方を、長い歴史の中で発展させてきた。だが、西洋近代知に支配されたこの社会は、その非言語的な本質を言語的に定義しなければ批評性を得られない矛盾を生み出した。この〈言語〉という〈フレーム〉によるゲームは、不完全な解釈によって常に成立しえない可能性がある。
 しかし、近年の計算機技術の発展は、言語を介在せずに現象を直接処理するシステムを実現しつつある。人工ニューラルネットによる事象の非言語的変換は、現象同士の直接的な関係性に基づいた統計的な情報処理手法による外在化が可能であることの、確かな手がかりの一つだ。
 この「非言語的直接変換システム」のパラダイムでは、東洋文明の古典の知見が、あたかも計算処理の繰り返しの末の自然的未来を予見していたように映る。

Source: 落合陽一(2018)『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』PLANETS

こう述べたあと『コスモスとアンチコスモス』を参考に、華厳哲学と、それが援用される、西洋形而上学的な二項対立を超克した先のEnd to Endについて説明しています。

落合陽一(2018)『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』PLANETS

c AI時代の働き方とプライバシー

松田:井筒俊彦に関してはさ、おれはずっと『意識と本質』って言い続けてると思うねんけど…

西川:あー、なんか言ってたね。

松田:そうそう。『意識と本質』から始まって『意味の深みへ』『コスモスとアンチコスモス』の3冊が岩波の青から出ているんやけど、それを読んどけば井筒俊彦の気持ちが分かるようになる的なね。

西川:そうなんだ。じゃあ読んでみよ。

井筒俊彦(1991)『意識と本質』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

初めて読んだときは本当に感動した。世界の根源的豊かさを知りましたね

井筒俊彦(1991)『意識と本質』岩波文庫

井筒俊彦(2019)『意味の深みへ』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

井筒俊彦(2019)『意味の深みへ』岩波文庫

松田:それで井筒俊彦が素晴らしいのはね…すごい読みやすいねん

西川:あ、そうなんだ。

井筒俊彦の文章は決して難解ではない。論旨は明快である。私たちが踏み留まることを強いられるのは、文脈ではなく、彼独自の術語の前なのである。術語の表記が難しいのではない。コトバ、意識、文化、意味など彼が選ぶ表現もむしろ平易だといっていい。問題は意味の広がりと深さ、あるいは多層的次元に波及する力動性にある。

Source: 慶應義塾大学出版会

井筒俊彦入門 神秘主義と神秘道 – 慶應大学出版会

松田:ただもちろん、彼の扱っている主題が分かりやすいから文章も分かりやすいというのではなくて、主題がどういった内容であれ、井筒俊彦の言語能力をもってすれば華麗に…

西川:解きほぐされる?

松田:いや、別に解きほぐされるというわけでもないねんけど…なんしか器用やねん。彼の文章は、読んだ上で「つまりこれはどういうことだろう?」とかってなることがないねんな。

c 言葉の扱い方

西川:はいはい。

松田:なんやろうね…読んでいる字面と、そこから得られた頭の中で理解される内容との間にギャップがないというか

西川:うんうん。

松田:これが例えば、その辺にあるドイツ語を日本語に訳しましたみたいな小難しい文章やと、「そもそもその日本語メイクセンスせんぞ」みたいなことがあり得るけど、そういうのがないねんな。著者が伝えたい内容と、字面と、読者が理解する内容との間に乖離がないねん。

西川:へー。

松田:ただ問題は、扱っている主題自体が非常に広範で複層的やから、読んでるうちに何の話かよく分からなくなってきちゃうよね。部分部分で言ってることは分かるねんけど、それが何の話か気付いたらよく分からなくなってる、そういう感じ。

西川:なるほど。

松田:だからまあ興味さえあれば、文がそもそも読みにくいみたいに、テクニカルなところで気持ちを削がれる類の本ではないし、とりあえずのところ最後まで読み通すことも難しくないから、それを何度も重ねることで意味内容についての理解が深まっていくことが期待できると思う。すごく健全な読書体験やね。

西川:それはいいな、じゃあ読んでみます。

松田:さっきは3冊紹介したけど、どうせ読むなら『意識と本質』がいいよ。

井筒俊彦がいう「コトバ」はある事物を指示する道具ではない。むしろ、「コトバ」が混沌から実在を呼び起こす創造的エネルギーだと彼はいう。

「存在はコトバである」と彼がいう時、「存在」は事物があることを意味するのではない。「もの」をあらしめる働きを指している。「存在」の一語を超越的絶対者と同義にもちいたのはイブン・アラビーである。この哲人の世界観に従えば、花が在るのではない、「存在」が花するといわなくてはならない、と井筒俊彦はいう。

Source: 慶應大学出版会

井筒俊彦入門 『意識と本質』 – 慶應大学出版会

c 言葉の意味

c 溶けていく境界線と永遠のベータ版

西川:うん、そうする。なんか字面と内容が一致するって話じゃないんだけど…この前お父さんとイタリアに行ったんだけど、彼がイタリアに行った理由は、お父さんと同じ、イタリア人の心理の先生達との交流がメインだったのね。

西川のお父さんはイタリア人なのか、心理の先生なのか、あるいはいずれもなのか…

松田:はいはい。

西川:それで私はそれについて行ったから、毎晩その交流会…まあ交流会って言っても一緒に晩ご飯食べるだけで、要はあの人は遊んでるだけなんだけど、その晩ご飯の席に心理の権威みたいなイタリア人のおばさんがいたんだけど、彼女がイタリア語しか喋らないの

松田:へー笑

西川:国際学会にも出てる人だから英語も分かるし喋れるんだけど、でもその場では一切喋らなくて。で、それがなんでかって…まあ字面の話とはまたちょっと違うんだけど、自分が何かを伝えるときに、母国語が一番間違いがないと。

松田:はいはい。

西川:しかもその人は心理の先生だから、より気持ちを伝えることに重きを置いているらしく、それもあってできるだけ母国語で喋ると。

松田:うん、まあ分からんではないよ。基本的にはこう、心象風景とその言語的表現に乖離はない方がいいわけで…とは言えそういうシーンなら英語を喋れよとは思うけどね笑

西川:そうなんだよ笑 しかもうちのお父さん、英語もできないしイタリア語もできないから、ポケトークとか使ってんだよね。なんかもう…見るに堪えなくて。

松田:やば笑 ポケトークとイモトのWi-Fiは情弱専用機でしょ。

言いつつ端末のデザインは嫌いじゃないし翻訳エンジンは一部DeepLみたいだし、決して悪くはない説はある

ポケトークS 公式サイト限定カラー – POCKETALK

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西川:すごかった、私も初めて見たもん。「おれポケトーク使ってるから大丈夫だよ」とか言ってたけど、何が大丈夫なのか全然よく分かんないし。

松田:笑

2019年11月29日
ANTICO CAFFÈ AL AVIS 東京ミッドタウン

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言語学者・哲学者・思想家として世界に名を響かせた井筒俊彦。子供の頃に父から禅を学び、その後イスラム哲学に傾倒したが、西洋とイスラム世界の衝突を目の当たりにし、その解決の糸口として東洋哲学を確立した。
「多様性」や「他者との共生」を訴える井筒の思想は、不寛容と憎悪が増す今、再びその意義を強くしている。

イスラムに愛された日本人 知の巨人・井筒俊彦 – dailymotion