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「テーマから演繹してドラマができるわけじゃないやん」

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匿名:まあ小劇場の世界がさ、おれが友達付き合いで観に行ってるみたいに、客も何かしら演劇に関わってる身内みたいなところはあるから、結局そういうのがうけるっていう負のループはあるねんけど…

c てめえでてめえの脚食ってんじゃねえよ

中垣:うん。

匿名:なんて言うんかな、客の観たいものを見せるっていう不幸な共存関係にはまってるというか…

松田:うんうん。

匿名:なんか… おれが就職を目指しているテレビドラマ業界にもそれがある気がするねん。「テーマが大事です」みたいなことをすげえ言われんのね、「企画書にテーマを書いてください」って。それが昨今のドラマ業界で企画をプレゼンするときのキーらしくて。

松田:はいはい。

匿名:でも、一応そういうもっともらしいテーマは作れるねんけど、そこから演繹してドラマができるわけじゃないやん

中垣:うん、そうやと思う。

匿名:ドラマ自体はディテールを積み重ねていった先にあるものやん。ストイックにセリフを絞り出していって仕上がった作品を評論家の偉い人が観て初めてそういう一言でまとめることに意味があるというか…

松田:うん、それはそうやんね。向きが逆やんね。

太郎:だから悲しいのは、結局は前言語的確信が大事なんだけれど、とは言え、ある人間が「いいね」と思ったものを他の人にも追体験可能なようにするには言語が必要で、それをうまくやるには…まあむずいんだけどね。

松田:笑

太郎:それこそ commmon でよく批判されているように、「説明されているから価値がある」みたいに思っちゃうってところもあるわけで。

松田:いや、説明が大事っていうのは間違いないと思うで。だから要は、前言語的確信を大事にすることと説明することが大事っていう話をどう接続するかやねんけど…まあ話はシンプルで、大事なのは説明を聞いて頭で納得することではなくて、実際に自分が経験したことを、自分の言葉で説明することだよっていう。

太郎:あ、そう。そうなんだよ笑

Source: commmon

c 一方で言語的説明も超大事

中垣:一方で、そうであっても古い物の価値はあるというか…

松田:うん、それはそう思う。加工物も結局はオリジナルがあってこそ作れるわけで、十分に必然性のある見た目を生成してくれる装置というか、そこの幅を担保するリソースとしてオリジナルは大事やもん。

中垣:そうやんね。

松田:それこそ例えば、今日本にある建物を全部壊して、その上で理想的に年季の入ったヴィンテージ風建物でリプレイスしちゃうと…まあ今度はそれのエイジングが始まるからそれはそれでいい気もするけど、でもいったんは理想によって漂白されちゃうというか、理想的な「いい感じ」の出てくる元になった多様性みたいなのはなくなるわけやん。

Source: commmon

c オリジナルの持つ複雑性とそれを複製する難しさ

匿名それを最初に説明させられるのがすげぇ苦痛で

松田:分かるわぁ。

我々の社会が抱えている最大の格差ーそれは経済資本の格差ではなく「モチベーション」と、そしてその根底をなす「アート的な衝動*72」を持ちうるかの格差である。現行人類のコンピュータに対して優れている点は、リスクを取るほどに、モチベーションが上がるところだ。これは機械にはない人間だけの能力である。逆にリスクに怯え、チャレンジできない人間は機械と差別化できずに、やがてベーシックインカムの世界、ひいては、統計的再帰プロセスの世界*73に飲み込まれるだろう。

*72ここでいう「アート的な」モチーべションとは、個々人の文脈において、それをせずにはいられない欲求・衝動を指す。
*73VC的な社会が、人間という乱数生成装置の創発性が駆動する動的な社会になるのに対し、BI的な社会は、確率過程によって定義されるプロセスが、何度もその処理を繰り返すことによってある一定の値に収束する現象に象徴されるような、自然に収斂された変化の少ない世界となるだろう。

Source: 落合陽一(2018)『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』PLANETS

落合陽一(2018)『デジタルネイチャー 生態系を為す汎神化した計算機による侘と寂』PLANETS

中垣「説明可能性の高いデザインが嫌い」ってやつ読んどいてや。佐藤オオキとか吉岡徳仁みたいな日本人デザイナーって、例えば白ベースでテクスチャだけ変えるみたいな、そういう説明可能性の高いデザインが多いやん。「視覚でじゃなく、触覚で感じてほしいんです」みたいなさ。

c 【聞いてください大森さん】説明可能性の高いデザインが嫌い

匿名:あー。

中垣:でもそうじゃなくて、デザインって本来はマクラーレンのあの曲線を生み出すことじゃね?って話をしててん。まあそうであるべき…とまでは言わんけど、でもそういうデザインの方が好きと思えるわけ。

匿名:うん。

何にも似ていない

720S SPIDER – Maclaren

中垣:もちろんデザインをしてる当事者がそう考えているかは分からないけどね。自分のデザインを世間に説明するために、そういう言語化をテクニカルにしているのかもしれないし。でも今言ってたのはほんまそうやと思う。そういうアプローチってプレゼンにしか使えないよね

匿名:そうそう。そんな一言で表現されるコンセプトをいくら並べても…って、数日前のグループワークでもすげえ思った。でも大学で意識高くやってきた人というか、いわゆる業界研究をちゃんとやってきた人って、そういう抽象的なだけの議論をやりがちで、みんな架空のドラマの架空のテーマについて議論し出して、おれの顔はみるみる死んでいくっていう

松田:笑

匿名「あれこれちょっと落ちたかもな」っていう、そんな感じがある。

松田:笑

中垣:それは超分かるな。もう業界問わずそうやと思うねんけど、みんなそこまで賢くないというか、そこまでの解像度でものを見られないから、ある程度一般性の高い言葉で表現する必要があって、でもそういう言葉を使った途端にほとんどの情報は消え去ってしまっていることに人々は気付いていなくて

c フレームワークの濫用は人類への冒涜やぞ

匿名:あー。

中垣:逃げ恥だってね、そんな一言のコンセプトを弄っただけであのニュアンスは作れないよね。

逃げるは恥だが役に立つ
Image: Amazon.co.jp

逃げるは恥だが役に立つ – Prime Video

匿名:うん、そうそう。

中垣:インテリアの感じもすごいリアルやったし、あとは恋ダンスの振り付けをあれにするとか、現場ではそういう解像度で作品を作っているんだけど…っていう。

みくりさんの衣装、すごい東京っぽかった

匿名:もちろんみんながみんなプラクティカルなテクニックばっかり言ってても仕方がないとは思うねんけど…でもなんかね、哲学ばっかり言ってても、技術が伴わないとどうしようもないよね。

松田:うん、間違いない。

匿名:まあ分かるねんで。結局仕事って説得やから、説得の場でそういう説明の仕方が出てくるのは分かるねんけど…でもそれって、中身を作るときとは関係がない話やん

松田:うんうん。

匿名:なのに、中身を作る場でも本音ベースの話ができひんのはどうなんやろうというか。

中垣:うん。

匿名:例えばドラマのことなんてよく分からない、でも商品が売れるんであれば広告は出しますよっていうスポンサーに説明するとき、そこで自分の言葉でゴリ押したらそれはあほやん。

中垣:うんうん。

匿名:なんだけど、企画を考えようぜっていう場とか、あるいは中垣ならクライアントに提案する内容を社内で揉む場とか、そこで話が通じひんかったらなんやねんこの会社ってなるやん

中垣:そうなったらもう辞めるしかないよね。でもまあ…そこに線引きはないんじゃない? 究極的には自分しかいなくて、自分とコミュニケーションがスムーズにできる度合いのグラデーションがあるだけで。

匿名:あー、まあそれはそうかもな。ただ…なんやろう、大学の勉強だけをしてるとみんなこうなるんかな、みたいなことはすごい思って

松田:はいはい。

中垣:うん、それはそうやと思うで。受験の弊害というか、義務教育的なものの弊害というか。それはよく言われる話ではあるけど、でもほんまにそうで、なかなか根深い問題やなとは思う。

c 言葉の意味

松田:まあまあ。

中垣:あと今の話に関してはさ、目的のためにどこまで手を汚していいかみたいな見方もあるとは思っていて…

匿名:あー。

中垣:そこはどうなんやろうなって。例えば松田ならそれはしないと思うし、それはそれでありやねんけど、でもそうするとレバレッジは効かへんわけやん。そこがどうにかならんのかなってことは、いつも考えてるね。

松田:おれも考えてるよ笑

目的のための手段としてなら何をしてもいいと思っていますが、信念のために信念にもとることをするのは間違っていると考えています。

Ayn Rand(1964)『The Virtue of Selfishness』Signet
Image: Amazon.co.jp

Morality is a code of black and white. When and if men attempt a compromise, it is obvious which side will necessarily lose and which will necessarily profit.

Source: Ayn Rand(1964)『The Virtue of Selfishness』Signet

Ayn Rand(1964)『The Virtue of Selfishness』Signet

中垣:笑

匿名:おれらのこういうのって、結局なんか…例えば宿題をやってこられないとか朝起きられないとか、そういうことにも通じてるような気はするねんな。

松田:うんうん。

匿名:世間的にはそうすることが普通でも、自分が意味を見出せなかったらやらんっていう。「おれにはできないことがある」って言って

松田:笑

c 【助けてください大森さん】人生ドン詰まりなんですけど

中垣:でもおれはね、一応のところそれをやっていて。

匿名:うん。中垣は結局のところそこに適応できる気がする。

中垣:そのときに自分に言い聞かせているのは「まだ2021年だから…」っていう。

匿名:どういうこと?笑

中垣:つまり、19世紀とか20世紀に社会問題と戦ってた人もそう思ってたと思うねん。「なんでこんなおかしなことになってんねん」みたいなね。

匿名:あー、じゃあ生まれてくる時代を間違えたってことですね。

中垣:いや、それは2200年に生まれても、その時代なりの問題はあるから。

匿名:まあそれはそうか。あー…

松田:笑

2021年4月7日
Clubhouse

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