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選択をするとはどういうことなのか

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松田:今着けてるこのペンダントあるやん? これのチェーンについてここ2週間くらいずっと考えててんけど、やっと理想的だと思える仕様のチェーンを決められて、その内容で工場にオーダーをして、今はその納期を待ってるとこなのね

みなと:うんうん。

松田:でも今日は今日で着けたいとは思ったから、机の上にあった適当な紐にぶら下げてやってきたわけ。

次郎:なるほど。

松田:そしたらさ、理想のチェーンではない暫定的な紐であるにしても、なんしか実際にぶら下げることで見えてくるものはあって…それでなんと「オーダーしたあのチェーンが理想だと思ってたけど、全然ちゃうかったわ」って気付いてしまったのね。

次郎:おお…

みなと:やっぱあれなのかね、松田って僕が知る限りでも大学生の頃からいろんなジュエリーを着けては捨てをやってきてるから、単純に解像度が高くて検討がつくみたいなことなのかな。

あー…いや、メルカリで売ってます

松田:まあ実際に着けたときにどういうエクスペリエンスを得ることになるかが、着けなくても分かるところはあると思う。だから実際には着けずにPDCAを回して切り捨てたわけやけど。

次郎:笑

松田:なんだけど…ここで重要なのが、実際に仕様を決めて発注するまではしていないと、頭の中だけでとは言え、きちんと検討する対象にはなり得なかった気がして、そのことについてちょっと話したいねん。

みなと:あー、なるほどね。それはなんだろう…それを工場に発注することによって、自分の選択として具体化されるからってこと?

松田:うん、まあそういう感じかな。やっぱり実際に注文までしてみないと、それが良い悪いの判断の対象として、そもそも俎上に上がってこない感じがあるねんな

みなと:あー…カタログの中の一製品ではなくってこと?

松田:そうそう。可能性としてのみ存在しているものではあかんって感じ。やっぱりね、ただカタログにのみ存在しているものと、今手元に存在してい得るものとの間には大きな隔たりがあるというか…うーん、これなんて言ったらええんかな。

みなと:うんうん…選択し得るものとしてあるかどうかって話だよね。

松田:うん。実際に手を伸ばせるところにある選択肢と、そうではない選択肢の違いは大きいというか。それで…大事なのは、実際に手を伸ばせるところにある選択肢として目の前のテーブルに置かれていないとそれを選ぶことはできなくて、それは、より様々にある選択肢をカタログから選ぶ感覚とは違うというか…まあなんか、上手いこと言われへんねんけどね。でもそうじゃないと真剣に検討できない感じがあるというか、なんしかそういう感覚がすごくあるねん。

受注生産とかプレオーダーとか嫌い

みなと:あー、でも言ってることはちょっと分かるな。

松田可能性が可能性としてのみ存在してることには意味が無いというか…

みなと:うんうん。

松田:とは言えもちろんね、完全にソリッドでリアリティのあるものにのみ意味があるわけでもないねんけどさ。

みなと:なるほどね、でも分かるよ。可能性が可能性としてのみ存在してるっていうのは、世界のみんなっていう目線から見たらそれでいいんだけれど…例えばまあなんでもいいんだけれど、自分が何かに対処するにあたっては、「こういう手段もあり得るよね」っていうのがいくつもある中で、実際にはテーブルの上に置いた選択肢しか選べないというか…

思っていることじゃなくて言い得ることを言うやつも嫌い

松田:ある一定以上のリアリティを持てるところにまで降ろしてこないと、それは実際的な選択肢にはならないというか…まあこう言うと普通やねんけどな。

みなと:うんうん。

同種の別の物が複数ある中でそのうちのひとつを選ぶということは、そのひとつに他への排他性を見出すことであり、そのためには全ての選択肢が十分に比較されなければいけません。
しかし私たちが日々実際に行うあらゆる選択は、スペックシートを見比べて明快に結論が導き出せるものではありません。そこでは重要なパラメーターだと思っていたものがそうでないと判明したり、また逆に、全く予期していなかったものがパラメーターとして現れることが多々あります。
そのため何かを選択するということは、一般的に考えられているように全ての選択肢をスペックシート上で見比べてその中からひとつを選ぶようなものではなく、むしろ、選択肢を段階的にときには十分な根拠もないまま絞っていき、しかしなお不可逆に手元に近づけていくようなものではないでしょうか。

松田:つまりさ、カタログにいくつもの選択肢が載っていてそこから選ぼうとしている状況って、幼稚園で「大人になったらケーキ屋さんになる」って言ってるのに近いねん。

次郎:うんうん、やっとしっくりきた笑

松田:それって「だからなに?」でしかないやん。そうじゃなくて、もっとリアリティのあるものとしてじゃないと実効性のある検討ってできなくて、そのためには手元のテーブルに持ってこないとあかんねん。

判断を導かない情報に意味は無く、行動を導かない判断に意味は無く、結果を導かない行動に意味は無い、そうですよね?

みなと:うんうん。

松田:それで今回は、実際に工場に発注するということがそれだったわけ。まあでもこれに関しては、手元に届いていないだけで実際には買っているのに等しいねんけどな。

次郎:おれがストンときてなかったのはそこというか、もう十分にソリッドじゃんって思ってたからっていうのはあるね笑

松田:まあそれはそう。この例に関してはテーブルどころかほとんど手元にあるからね。でもやっぱりそれくらいまで近くに置かないと、それを選択肢として判断することはできないねん。最終的にそれだ、またはそれではないと言い切ることができない。

みなと:うん、分かる分かる。そうだよな…

松田:やっぱカタログにのみある状態から直接選ぶのって無理な気がするねんな

みなと:うん、そうだよね。でもそれってなんでなんだろうな。実際に現実のものにはなっていないというステータスは同じなのにね。

松田:あとおれにとっては服とかもそうで、ほとんどは欲しいと思って買ってるねんけど、たまにあくまで前判断的に買って、2~3日で「これは違うわ」っていう判断をしてすぐに売って、そのことに非常な満足を覚えているみたいなことがあるねんな。

お金無いのに何してんのほんま

みなと:あー…なるほどね。

松田:そこで一度買ってみてるのも、一段階引き寄せて手元のテーブルに並べてるって感じやねんな。それをすることで初めて、それが違うということを知ることができるねん。あくまで、最初は良いと思って買ったのに着てみたら違うかった、とかじゃないねん。もう少し近くで、よりリアリティのある選択肢にしないと判断ができないって感じやねん

次郎:あー…うんうん。要は買わなかったら分からないままだったってことだよね

松田:そう、だから決め打ちでコストを割いてみるしかないっていうね。

みなと:試着みたいなものなのかな?

松田:まあそうも言えるねんけど…

みなと:でも確かにそうだね、試着っぽくもないよね。試着ってもっと遠い気がする。

次郎:試着を超えてより…ってことだよね。

松田:そうやねん、試着ってかなりカタログ寄りやと思うねん。もうちょっと近くで、よりリアリティを感じられないとあかんねんな。

みなと:いやー、そうだよな。

ここでのリアリティは単純に所有することへのそれではなく、同種の別の物から排他的に選ぶことへのそれなので、予算の多寡には関係なくこの問題は発生する気がします。もちろん、自分にとって必要のないものでクローゼットの大半が占められている状況に違和感を覚えない鈍感な方であれば別かもしれんすけど。

松田:ただ…実店舗での試着じゃなくて、返品がイージーなAmazonでとりあえず買ってみて手元で検討するみたいなのは近いかもしれんね

次郎:なるほど…

みなと:たぶんね、普通の人は松田みたいにポンポン返品しないんだよね。

松田:おれそこはアメリカの気持ちでやってるねん。

次郎:笑

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みなと:松田によく「まあ返品したらいいから」とか言われるんだけど…普通は返品しないからね。

松田:笑

みなと:でもそうだよね、試着でもないあの感じはなんなんだろうね。もうちょっとうまく言いたいんだけど…

松田:前にさ、系を閉じるみたいな話があったやん? あれも結構似た話やと思うねんな。

みなと:うんうん。

松田:あのときは、どこかで線を引いてそこまでをもってそれとしてきちんと凝固させることを、系を閉じるって言っていたと思うねんけど…

みなと形あるものにするというかね

中垣:ただヒップホップの曲も、それだけでひとつの閉じたものでもあるわけ。それで次にTikTokの音源やねんけど、TikTokにはある種コラージュ的な二次加工・三次加工された曲が上がっているわけだけれど、これがあいみょんとかヒップホップと違うのは、TikTokに上がっている曲っていうのは閉じることがないのね。再編集され続けて、それに名前がつくことはないわけ。

松田:なるほど、確かにね。今ここで言っている「閉じる」とか「境界」っていうのはさ、いったんのところそれはそれとして、ひとつの全体として名前をつけるということやんな。

中垣:そうそう。そうすることによって、それが対象として語れるようになるというか。

松田:一度境界が閉じられたものは、それ以上の改変を受け付けないし、それまでの改変も不可逆になる感じ。

中垣:そうそう、まさにそう。

Source: commmon

c 溶けていく境界線と永遠のベータ版

松田:そうそう、でもそれってすごい大事なことやと思うねん。さっきの話でいくと、カタログの中で可能性が可能性としてのみ存在することはTikTokの音源的なものに対応すると思うだけど、やっぱりそうじゃなくて、やはり何かを選ぶというか、段階的に不可逆に囲い込んでいく感じにこそ意味があるというか…

みなと:うんうん、すごい分かる。もうずいぶん前の話だから例に出すのもあれなんだけど、東大を志望するときの「最初の2年間が教養学部だから、何を専攻するか後から自由に選べるし」みたいな選び方、ああいうのってすごく良くないなって最近思ってて。

松田:うんうん。

みなと:仮説が無いというか、自分のテーブルに何もないまま、カタログだけ持って次の段階に行こうとしているのに違和感があったというか

松田:あー、分かる分かる。

みなと:本当はそのカタログの中から何かを選んで、それを自分の血と肉にしていくことが重要で、えてして人生における選択ってそういうものだと思うんだけど、どうなりたいか分からないから全部を手元に置いておいて、でもどれも食わないみたいな、それって全然意味が無いというか…

松田:そう、意味が無いねん。

じゃあもう受精卵に戻れよって話じゃないですか? ねえ?

次郎:まあ自戒も込めて言うと、そこから今度コンサルとか官僚になるのも…ひたすらカタログを持ち歩いている感はあるのかもね

松田:やっぱね、なんかゼロ仮説的な態度が嫌やねん。意志も期待も持ってへん感じ。

みなと:うん、分かる。

松田:要は純粋に帰納的に何かを知り得ると考えているのが間違ってるねん。「とりあえずいろいろ試してみればいい」とか言ってるときの、とりあえずは丸腰で、そこで得られた“““純粋な”””経験から帰納的に導いていけばいいっていう、これが間違ってるねん。

デイヴィッド・ドイッチュ(2013)『無限の始まり ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』インターシフト
Image: Amazon.co.jp

では、その知識はどこで生まれるのだろうか? 経験論では、感覚的経験から導出するとしていた。しかし、それは誤りだ。理論の真の源は推量であり、知識の真の源は批判と推量の繰り返しである。われわれは、既存のアイデアを改良する目的で、それらを整理し直し、組み合わせ、変更し、追加することにより、理論を創造している。実験と観測の役割は、既存の理論の中から選択することであって、新しい理論の源となることではない。

Source: デイヴィッド・ドイッチュ(2013)『無限の始まり ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』インターシフト

デイヴィッド・ドイッチュ(2013)『無限の始まり ひとはなぜ限りない可能性をもつのか』インターシフト

次郎:あー、うんうん。まあ「選択肢の海の中に降りたら何か良いものが拾えるだろう」みたいな、そういう他律的な期待を抱いているっていう…

みなと:「…いや、自分から選びにいくんだよ?」って話だよね。

次郎:A・B・Cの中からAを選んじゃって、後からやっぱりB・Cが良かったって後悔すると嫌だから…って言うと、それはもう永遠に選ばずじまいだから。

みなと:そうそう。

ミヒャエル・エンデ(2007)『自由の牢獄』岩波現代文庫
Image: 岩波書店

ミヒャエル・エンデ(2007)『自由の牢獄』岩波現代文庫

松田:選択肢の海って言ってもね、海に飛び込むためには既にゴーグルを着けている必要があって…もう始まってるわけ。それは自分で着けたんであって、それが何を意味するかはもう一度ちゃんと考えたほうがいいよね。

次郎:うんうん笑

みなと:ただちょっと…だから何?みたいな話になっちゃったな。まああれかな、どこまでも自分で選択しているんだし、しなきゃいけないんだよって話なのかな。

松田:だからとにかくやってみるっていうのは、そういう意味においてのみあり得るし、その意味においては誰もがしなければいけないねん

次郎:あー、うんうん。

みなと:うん、そうだね。

松田:それはカタログからサンプルを取り寄せることであって、カタログのページを眺めることではないねん。そうやって小さいながらも不可逆な選択を繰り返して、それでいいから、少しづつ形作っていくことが大事やねん。カタログを一通り眺めるっていうのは存在しないわけ。

みなと:そう、存在しない。とにかくやってみる以上、もう一度カタログを開いて最初の距離感に戻ることは絶対にできないし、その覚悟を持たなきゃいけないんだよっていう

2021年4月24日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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