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仕事 生きづらさ

【シリーズ】お悩み相談室 #3

4 years

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中垣:なんか…最近モヤってることとか悩みとか、気になることとかないの?

匿名モヤってることなら無限にあるけど…

松田:笑

中垣:聞くで。

他人の悩みを食って命をつなぐタイプの妖怪

匿名:東京から離れて今の職場で1年働いてみたんだけど、やっぱり東京の方が暮らしやすいなって

松田:そんなん最初から分かってたやろ笑

c やっぱり東京が好き

匿名:そもそもなんで今の職場にしたかって話なんだけど…

みなと:それ聞きたいわ。僕ももう東京離れて工場勤務になるんだよね。

中垣:みなとは製鉄やから、同じくドクラシック製造業やで。

匿名:僕はそもそも工場にすごく興味があって、労働の阻害がまさに行われているところを見ておきたいっていう、すごく邪な好奇心から今の会社を選んだんだけど。

【労働疎外】

 人間の労働は本来,自己の主体的・創造的エネルギーを発揮して自然に働きかけ,その工夫と努力が対象化された生産物の他人による享受を通して,人間が共同的な存在であることを確証する営みである。しかし賃労働を基礎とする資本主義の下では,生産手段と生産物は資本家の所有に属しているため,労働の成果は労働者を支配する新たな資本の蓄積に寄与し,労働の過程は物的資本としての機械に強制された苦役となる。

Source: コトバンク

労働阻害 – コトバンク

みなと:なるほどね笑

中垣:これから、業界全体が沈んでいくのならそれを見たいし、復活を果たすのならそれはそれで見たいしね。

匿名:そうそう。今まで日本を支えてきた産業が沈んでいくのなら、どのようにして沈んでいくのかも知りたいし

松田:はいはい。

匿名:あとは車が好きだったっていうのもあるしね。それで1年間やってみたんだけど、やりがいを見出そうと思えば見出せるし、一生やっていこうと思えば全然できるだろうなとは思うんだけど、やっぱり生産分野は今後どんどん切り離されていくと思うし…

中垣:そうやんね。

匿名:そう考えると時流に遅れているなという気持ちにはなるというか、今の勤務地に家族を呼んでそこに根を生やして生きていく決心はつかないでいる

松田:うんうん。

匿名:もともとは結構雑な感じで考えていて、合わなかったら辞めればいいし楽しかったら続ければいいじゃんって思ってたんだけど、今そこが微妙なところなんだよね。

みなと:なるほどね。

匿名:別にこのままでもいいんだけど、でも決め打つにはちょっと早い気もして、東京に戻って働いていけるならそうしてもいいようにも思うし…

c 選択とその排他性

中垣:今はどういう部署で働いてるん?

匿名:半分は生産管理をしながら、生産管理系のエンジニアみたいな感じだね。現場に近いところで作る車に合わせて工程を組み替えたりとか、サプライヤーから始まって実際に車がL/Oするところまで、物と情報の流れを整理して無駄を見つけて改善するとか。

中垣:おもろそうやな。

みなと:うちの会社でも一番おもしろいとこだよ。

匿名:その辺りのやりがいはある。あとうちではひとつの生産ラインで複数の車種を作ってるから…

中垣:同じラインって…全く同じラインなん?

匿名:そう。去年までは 某高級セダン しか作ってなかったラインで、今は 某コンパクトカー とか 某ミニバン とかの生産もしてる。

中垣:そんなことできるんや。

松田:すごいな。

フォードもびっくり!

匿名:もちろん莫大な設備投資はしてるんだけどね。そういうことの検討とかもしてる。新しく出た 某セダン が全然売れてないから、ラインでの生産の割合を減らすとかね。その減産にあたってシステムを組み替えたりコンベアをどうするかを決めたりっていうのが、今の僕に与えられてるテーマ

松田:絶対楽しいやん。

匿名:ただ…確かにおもしろいんだけど、最近きついなと思っているのが、原価を安くするためには人を抜けばいいっていう発想は一般的にあると思うんだけど、その発想が現場レベルにまですごく落ちていて、現場が自ら人を抜くことに注力してるような構造になっているというか…

松田:あー、はいはい。

匿名:それを見ているのがちょっときついというか、人を抜くっていうことが目標になってるのもどうなのかなっていう。

みなと:うんうん。

匿名:もちろん短期的には期間従業員の人数で調整するから、正規雇用者の人数には影響はないんだけど、でも極端な話、その先はどうなるか分からないわけで。

松田:うんうん。

匿名:それなのに人を抜くための創意工夫を現場でしてるっていうのが「うーん…」というか、資本主義を感じ過ぎてきついというか

みなと:なるほど。

中垣:でも普通に考えたらさ、現場の人的にはそれが目標にはなり得ないやん。何がインセンティブでそういう感じになってるん?

匿名:それはね、人を抜くとか作業改善とかに対して、会社から報酬が出るようになってるんですよ。あとは現場のチーム単位で目標があってチーム同士で競い合うような形になってるから、気付かないうちに自分の首を絞めちゃってるよねというか…

もうカイジじゃん

松田:へー。

中垣:確かに、持続可能性は高くないね。

匿名:まあ僕が違和感を覚えているだけと言えばそうなんだけど、それにしてもサイコチックだなというか。

中垣:会社のそういうスタンスが嫌ってこと?

匿名:うーん、どうなんだろう…まあただのちょっとした違和感なんだけど、当たり前のこと過ぎて誰も気にしていない、とにかく原価は安ければ安いほどいいし、毎年は打ち出される生産性に対してのKPIは達成しなきゃいけないしって感じが、年が明けたくらいからよく分からなくなってきたというか

松田:なるほどね。

匿名:それに原価下げるって言ったって、例えば 某高級セダン なんてもうモデル末期で改善しろがほとんど残ってないんだけど、それでも上から目標は打ち出されるから、ウィンドウを貼り付けるウレタンの量をできるだけ少なくするとか、そういう設計規格ギリギリまで攻めるようなことしかできてないんだよね。

松田:へー。

匿名:まあ「資本主義を勉強させていただいてます」って感じなんだけど…うーん、何が違和感なんだろう。とにかくここであと40年も働くのは怖いなというか。

みなと:なるほどね。

中垣:そこを飲み込んじゃうと…って感じか。その違和感を大事にしたい気持ちがあるというか

匿名:まあそうだね。

松田:なんかディストピアっぽいよね。その思想って、我々生身の人間はどうなってんの?みたいな。

ハンナ・アーレント(1994)『人間の条件』ちくま学芸文庫
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匿名:そうそう。現場の人だって一人一人生きた人間なのに、それを交換可能な機械みたいに捉えていて、それに誰も自覚的でないっていう。

中垣:でもまあ業界がオワコンやからそうなってるって部分はあると思うけどね

匿名:それはそうだね。生産性を上げるのも、同じ人数で今の2倍の生産をするようになるんであれば前向きなんだけど、今と同じ生産を半分の人数でやろうって言うから、人を抜く方向で頑張ることになるんだよね

中垣:「もっといい車を作って売ろう」っていう30年前とはちょっと違うってことやんね。

匿名:やっぱりEVの波っていうのは厳しいよね。誰にでも作れちゃうから。

アシュリー・バンス(2015)『イーロン・マスク 未来を創る男』講談社
Image: Amazon.co.jp

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松田ガソリン車ってとにかくエンジンの開発に、時間もお金も経験も必要なんやもんね

『その時歴史が動いた』の豊田喜一郎の話、あれは感動したね

匿名:そうそう。あとはハイブリッド車も難しい技術ではあるから、まだ日本のメーカーに強みがあるんだけどね。

中垣燃料電池はどうなん? あれやと日本でもトヨタがやってたりするし、トラックとかの用途があるから絶対に残るやん。

トヨタチーフエンジニアが語る、燃料電池自動車の価値–EV時代にみる水素のメリット – CNET Japan

匿名:まあ希望はあるけど、でも市場が小さいからね。

松田:うーん。

2021年2月某日
某所

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