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思索

パートナーに求める条件

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中垣:なんかこのあいだ永田から連絡が来てんけど、「彼女に何を求める?」って言ってて。

松田:笑

何も求めません

中垣:仕事柄やっぱり看護師と仲良くなることが多くて、その無邪気さ…じゃないな、なんて言ってたっけ。まあなんしか、最初はそういう部分に惹かれるんだけど、話していくとやっぱりあほなところが気になって別れてまうみたいな話をしてて

松田:あー…

中垣:それで、そこで言うあほとはどういうことなのかと。教養とかそういう話なのか、あるいは別に溌剌としていたらそれでいいんじゃないかとか…まあそういう話を諸々して。

松田:はいはい。

中垣:それでおもしろかったのが、永田の母親も松田の母親と同じになってるっていう。陰謀論にはまってるって言ってた。

松田:笑

c 母親が陰謀論者やねんけど…

中垣:だから、自分の場合は彼女のドグマに捉われていない感じがいいって話をおれがしたら、「おれは母親のドグマを解きほぐすのに大変だから…」って言ってて。

松田:笑 永田って今何してんの?

中垣:なんかおれもよく分からんねんけど、専門のプログラムをやるために、 K大 病院に所属しながら別の病院におるらしいよ。

松田:へー。

中垣:それで、コロナの世の中になってからは市民と会ってはいけないって言われてて、結構守ってるらしいよ。

松田:笑 でもなんか…先週も中垣の同期の話が出てたけどさ、同じような相手の方がいいとか、やっぱおかしいと思うねん。永田もね、相手があほやとか言うて諦めたらあかんわけ

そういうポジショントークです

c 傾聴に値してぇ

中垣:うん。

松田:同じような環境で育った、話の通じる相手がいいって言うけど、それが実際のところ意味してるのがどういうことかはよく考えなあかんねん。

中垣:うんうん。

松田:だってね、仮に相手が自分と全く同じ人格なら、そいつと付き合う意味は無いわけ。何を言っても何が返ってくるか分かってるし、誕生日プレゼントに何をあげたら喜ぶかも分かってる、そんなん意味が無いねん。それなら付き合う意味が無いわけ。

中垣:そうやんね。

松田:だからバックグラウンドがより被っている相手がいいって言っているのは、振れ幅小さめのイージーな案件がいいって言ってるだけやねん。キャパが小さいことの表明でしかないねん。

中垣:そうそう。

松田:そうやんな。だいたいパートナーって結局は相手の人格を丸ごと飲み込むことになるねんから、部分の一致についてどうこう言うことに意味が無いし、共通項って言ったってグリットの引き方次第で多くも少なくもなるわけで…

中垣:そうそう、ほんまそうやねん。

松田:だからやっぱ共通項なんてクソやで。もう「誰でもいいと思ってる人」でいいよ。

みなと:あー、なるほどね。

松田:とんでもないヤリマンが混ざる可能性はあるけど。

河東:笑

中垣:いや、でもそれくらいの方がいいと思うよ。こっちが嫉妬さえしなければ付き合いやすそうやで。

Source: commmon

c 愛の対象をめぐる問題

松田:結局のところ、どういうものであれ他人との交渉に意味があるとすれば、それは両者の相違から生まれるものやねん。その上で、でもその違いは自分が扱えるギリギリの大きさのものがいいっていうのは…

中垣:矛盾してるよね。

松田:そう、矛盾してるねん。相似によって生まれていると思っている価値は、実際には相違から生まれてるねん。それをどこまで引き受けられるかは、現在の自分のキャパシティと、それをどこまで拡げていけるかによっていて、そこが問題の焦点やねん。

中垣:うん。

松田:なのに他人との交渉において破綻が生じたときに、やっぱり自分と似たような人がいいっていうのは、それは間違ってるねん。

中垣:物とか商品とかじゃないねんから、このスペックに見合ったものを適切な価格で買うとかそういう話じゃないやんね。常に変化し得るものなのであって…

曲がりなりにも人を主題にするのであれば、それが意志と期待を持った存在であり、静的なものとしては想定できないことを忘れてはいけません。

歴史の干物、「時」の影ぼふしを随喜渇仰して居る人々は、「過去」に膠着して一歩も前進し能はぬのである。干物はどうしても蘇息せぬ、影ぼふしはどうしても自分で動き出し能はぬ。それ故、彼等には現在も未来もない、また主観を飛び越えるほどの元気もない。彼等はいつも過去の影を背負つて居るので、而してその影の重きに堪へ得ないので、過去をぬけ出て、現在にはひることが出来ぬ。ましてそれから未来への飛躍を試みんとする意気に至りては、露ほどもない。本当の歴史は飛躍の連続である、非連続の連続である。独尊者はいつも現在の刹那において過去から未来へ躍り出る。彼は現在の一刹那において黒暗暗の真只中を切り抜ける。此一飛躍の中で所謂る「過去の歴史」なるものが、溌剌たる生気を取り返すのである。独尊者の巨歩は実に此の如く堂堂たるものである。何ものの閑人ぞ、敢て彼を干乾しにはせんとする。又何ものの「現実」主義者ぞ、彼を「過去」の棺桶の中に封じ去らんとする。

Source: 鈴木大拙『時の流れ』

鈴木大拙 『時の流れ』

松田:だから…これはつまり人生やね。そういう蓋然性の不十分さに耐えられないのであれば、それはもう人生にさえ向いてない。死んだ方がいい。

中垣:うん、そうやと思う。

ごめん永田、嫌いにならんとってな

松田:しかもこれよくよく考えてほしいねんけど、辛いだろうけど引き受けろみたいな話じゃ別にないわけ。そもそもの最初から見出していた価値は、当初思っていたように蓋然性の十分さから生まれたものではなく、むしろその不十分さから生まれたものやねん。それを認めるだけでええねん。

中垣:そうそう、そうやんな。

黒柳徹子(1993)『トットの欠落帖』新潮文庫
Image: Amazon.co.jp

黒柳徹子(1993)『トットの欠落帖』新潮文庫

2021年10月10日
Aux Bacchanales 紀尾井町