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経産省のしていること

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中垣コロナ関連やと経産省は何をやってんの?

太郎:えっとね…医療器具の調達とかを企業相手にしてるかな。あとは中小企業がやばいから、持続化給付金関連とか。

おれの人生の持続可能性も誰か考えてくれ

c 【助けてください大森さん】人生ドン詰まりなんですけど

中垣:やっぱその辺なんや。DXの推進とかはやってへんの?

太郎:あー、それは元々やってるよ。

METI DX – 経済産業省

松田:マスクとかの調達ってさ、経産省が「調達します」って言って、具体的に調達に動くのは誰なん? 経産省から企業なりブローカーなりに連絡するんやんな?

太郎:うん。「何日までに何億枚欲しいんだけど作れますか」って直電する。それがキャパ的に無理なら無理でその調整とか、それをどこに配るかとかもこっちで決めて、運送業者に頼んで配達してもらう。そういうオペレーションを一手にやってる

松田:それはさ、企業は頼まれた通りにするわけやけど…お金は誰が誰に払ってるん?

太郎:あー…それはマスクが最終的に届く病院が払うんだけど、そもそもマスクを生産するのに補正予算が付けられてるから、そこから補助金も払われてる。

松田:あー、はいはい。日本国内の企業がラインを作ったら…みたいなやつやんな。

令和2年度「マスク等生産設備導入支援事業費補助金(マスク生産設備導入)」の公募について – 経済産業省

太郎:そうそう。まあ最後の民民の契約は、それはそちらでしてもらうという感じなんだけど

松田:なるほど…

太郎:いろんな病院があったとき、そこの意向を聞かずに一方的に送りつけるというのは…まあ一部で「本当に足りていますか?」みたいなコミュニケーションはあったと聞いているけど、さすがに病院から要請があって…というのが基本だよ。うちはあくまでハブだから

松田:あー、そうそう。つまり、国が音頭をとって民民で契約が結ばれるように指示を出すっていう感じなんか。

太郎:そうそう。他に例えば停電したときなんかもそうで、今すぐ電気が必要な病院と電力会社を橋渡ししないと、電力会社はどうすればいいか分からないから

松田:需要と供給をつなぐだけであって、結果的に行われる取引に介入したりはしないんか。

太郎:それはさすがにそうだよ。

松田国が仲介することで、新たな金銭的なインセンティブが発生するとかでもない?

太郎:ないない。放っておいたら遅いから、スピードを上げるために仲介する感じ。

松田:なるほどね。

太郎:停電もマスクもそうだったな。そんなことが行われるなんて、おれも入る前には知らなかったけど。

松田:へー。

太郎:でも確かに、誰かがこれをしないといつまで経っても停電もマスク不足も解消されないよなとは思う

松田:はいはい。

太郎:そういうこともやってるって、あんま対外的には言わないんだよな。別に言ってもいいのにとは思うんだけど。

松田:そうやんね。例えばさ、「国がお金を出すので言う通りに動いてください」とかなら、分かりやすくインセンティブがあるわけやん。でもそうではないねんなって。

太郎:そうだね、相当ドサ回りしてる気はする。

松田:その仲介のおかげで売る先が見つかったから売るって感じなんやな。特に新たなインセンティブは発生しないのが意外というか…

太郎:まあね、実際国が言ったからその通りにしているってところはあると思うよ

松田:あー、やっぱりそれはあるんや。まあ自分が言われてもね、素直にやる気になりそうな気はする

太郎:笑

松田:脳内でプロジェクトXのBGM流れ出す感じ。

Source: 中島みゆき公式チャンネル/YouTube

中垣各省庁はwithコロナとアフターコロナのヴィジョンみたいなのって考えてはいるん?

太郎:うーん、まあそうだね。そもそも総理が喋っていることは官邸官僚が考えてることが多いし、勉強会というか審議会をやると、外部の意見を聞きながら取りまとめた文書ができるわけだけど、それも基本的には官僚が作文してるからね。

中垣:なるほどなるほど。

中垣:前から気になってるねんけどさ、委員会とかって…それこそ落合陽一とか、エッジの効いた人も出てたりして、きっとすごいことが話としては上がっているんだろうし、そういう人らをフックアップできるくらいには担当者の意識も高いわけやん?

松田:あー、それすごい思うな。あれはおれらの生活の何に反映されてるんや?

中垣:そう、それが生活レベル…というか我々の目に見えるレベルに落ちてくるには時間がかかっている気がするんだけど、それはどうしてなんだろうって。

太郎:そうねぇ…どうしてなんだろうね。

誰も分からん

中垣:誰がそれを止めてんの? トップの官僚レベルではそういう高い意識はあって、もちろんボトムにもそういう意識はあって…ってなったとき、それを止めてるのは誰なん?

太郎:うーん、なんだろう…明確にこうだとは言えないんだよな。

中垣:アプローチが制度からしかできないから、それを制定するのに時間がかかるって感じ?

太郎:それはあるかな。法律を書くにしても、内閣法制局に行ってうんちゃらかんちゃら揉まれて…みたいなのは当然あるし。あとは何だろうね、省内のシステムをひとつ変えるのにしたって決裁はいろいろ必要だし、実際にそういう仕事をやる人って結局はすごく下の方の、ヴィジョンの高い人とは別の部署で働いている人達だから、そこまで理念が降りてきていないというのはあると思う

c 官僚の言葉づかい

中垣:はいはい。

太郎そもそも人が少ないし

松田:そんなことより手元でしないといけないことが多過ぎるっていうのもありそう。

太郎:それもあるね。

中垣:理念が降りてきていないって普通に大企業でもあるあるやと思うねんけどさ、一方で企業の場合はそれをすり合わせるために年一の総会をしたりするわけやんか。

太郎:うんうん。

中垣:あるいはベンチャーとかやとそこが共有できてるから意思決定のスピードが早くて…みたいな話があったとき、官僚組織のそもそもの課題感ってどんな感じなのかというか…

太郎:何が一番いけないのかってところをあえて端的に言うと、政治家と官僚って全然違う選出のされ方をしていて、丁寧にすり合わせなければいけないとは言っても上は頻繁に変わるし、相手は国民に選ばれてるというのもあって、上が言ったことはその都度その通りにしなければいけないし、いくら経産省が「こういうことを目指して社会を変えていきます」って言っても、その時々に政治家の言った通りにみんなで動かないといけないっていうのはあるよね

中垣:あー、そうなんか。

太郎:なかなかこう、腰を据えたヴィジョンを各々の職員が見続けられるかっていうと、ちょっとね。

松田:うーん。

太郎:聞いた話だと、ある政治家が地方視察に行く計画が持ち上がり、どこを回ったらいいかって話になったとき、担当者としては課題があるところをしっかり見てもらって政治家に腹落ちしてもらった上で意思決定してもらいたかったんだけど、どうしても、既に取り組みが形になっているところに行って成果をアピールする形の行程になったとか…

松田:なるほどね。

太郎:そこで齟齬が生じたりはするよね。

松田:それはさ…やっぱりこう、「しんどいなぁ…」って感じなん?

太郎:まあそうね、しんどさはあるかな。

中垣:それが大企業なら見切りをつけて辞めていく人もいるだろうけどさ、官僚ってそうはいかんというか…どういうモチベーションでやってんの?

太郎:あー…でもなんだろう、言っても100%歯車が噛み合わないわけではなくて、噛み合ったら噛み合ったで大きく動くというか、要は一億二千万人を説得しなくても数十人さえ説得すれば物事を動かせるというのはあるから、そこはおもしろいかなという気はする

松田:そこがはまったらレバレッジは強力に効くって感じやんな。

太郎:そうそう。で、ずっと自民党政権だからはまりやすくもあって。

中垣:レバレッジが効く感じってやっぱりあるんや。

太郎:あるある。自分が考えた原稿がそのまま政治家に読まれて、そのままテレビに流れて、そのまま「あ、そうなんだ」って受け入れられるわけだから

中垣:まあそうやんな。

太郎:だから、細かいところでカッコ付けたがるのが政治家だって話はあるけど、それを決定的に無理だと感じたことは…おれはないかな。

松田:うんうん。

太郎:ただ、コロナで予算をひたすら出し続けさせられた財務省の人とかは、相当腹に据えかねる部分はあるかもね

中垣:あー。

太郎:なんでこんな予算を出さなあかんねんという、相当忸怩たる思いを抱えながら、でも官邸が言うことは仕方がないということでやり続けているんじゃないかな。

松田:へー。

中垣:やっぱそうなんか。

松田財務省って要は国の金庫番やんな?

太郎:そう、金庫番。

松田:つまりそこには、言われた通りに金勘定をやっておけばいいというのではない、ある種の矜恃みたいなのがあるわけや?

太郎:あるある。おれらがどれだけ…例えば福島のことが大事だと思っていても、それらをいったん全部テーブルに並べて「本当に必要性を十分に説明できますか?」ってスタンスでくるからね

松田:はいはい、なるほど。それを無視した形でコロナに予算突っ込みましょうとなると…

太郎:それはもう、トップオブトップからそう言われたら抵抗はできない

松田:とは言え、金庫番の矜恃からすると心中穏やかではないと。

太郎:そうそう。

松田:なるほどね。

太郎:おれから見えている範囲だと、そのジレンマを一番抱えてるのは今は財務省な気がするな。

2020年9月18日
Aux Bacchanales 紀尾井町


経済産業省
Image: PAKUTASO

2001年の中央省庁再編により、通商産業省から移行する形で設置された経済産業省。経済・産業の発展および鉱物資源、エネルギー資源に関する行政を所管している。