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ことば 学ぶ 思索

禅的公共観

部分でありながら同時に全体でもあり、そこに矛盾が生じていない。そのような人格が持つ公共観について説明します。

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「利他/利己」や「公/私」などの二項対立をめぐって、収拾のつかない議論を展開しきった後の会話です。

白濱:前にポイ捨てについての話があったけどさ、松田って「公共」っていう概念は持ってるの? それによって自身が動機付けられるようなというか。

こう‐きょう【公共】

社会一般。おおやけ。「―の施設」

Source: 新村出編(2008)『広辞苑 第六版』岩波書店

c ポイ捨ての是非を検討する

松田:「公共」って言うとどうでしょうね。ある行動の是非を判断するときに、そもそも因果応報的に回り回ってくるものだから…という認識はありますが、自分の行動を規制するものとしての「公共」みたいなものはあまり考えないかもしれないです。

白濱:なるほど。

松田:…いや、ちょっと待ってくださいね。そもそもの話として、僕は白濱さんが「公」と「私」の二項対立の間でモヤってる感覚、それがいまいち理解できていない気がするんですよね

白濱:あー…

松田:なんかね、公私って感じじゃないんですよ。とにかくまず私がいて、その一挙手一投足は因果の繰り返しで世界の隅々にまで影響力を及ぼしている、そういう認識が最初にあるんですね。

c 社会を変えるんじゃないんだよ、お前が変わるんだよ

松田:その影響力は逓減していくものとは言え、極々わずかながらの影響であればそれが及ばない先はないと。これを信じている…というか「シンプルにそうじゃん?」と思えているので、そういう意味では「公共」というものをことさらに意識しなくても、公共の福祉に著しく反する行動はとらないと思いますけどね。

白濱:うーん、まあそうね…

松田:あるいは僕ね、外国人からめちゃめちゃ道を聞かれるんですよ。それがなぜかは知りませんが、その度に結構丁寧に説明して、10分15分くらいの距離なら全然連れて行くんですよ。

白濱:はいはい。

松田:そのときは相手に自分を重ねているじゃないですけど、すごくスムーズに相手に自己同一化ができている気がするというか…要は「私」がコストを割いて「彼」に貢献するという二元的な感じじゃないんですよね

白濱:あー…

松田:なんかね、人格が重ね合わせになってるんですよ。相手の効用の先に自分の効用がそのままあるというか…利他的な道徳の持つ外向きの矢印っぽい感じ、あれが特にないんですよね。

白濱:なるほど、そうね…確かに松田の考える公共性ってそういう整理になるのかなとは思った。僕はなんか優等生思想なんだよね、他人に対して何かをしてあげたいって感じで。

松田:はいはい。

白濱:その上でそれが自分に返ってくるかどうかは特に考えないから、今の自分にとって相対的に低いコストでできることならしてあげるっていう感じになるな。

松田:うんうん。

白濱:つまり自分が他者にコミットしたいという気持ちなんだよ。でも今の松田側の話は、それとはちょっと違っておもしろい気がしていて…このサイトもそうだけど、松田は独りよがりにならないところがあるなってすごい思うのね。

松田:あー、はいはい。

白濱:話すときもすごく丁寧に話すし。それにcommmonだってもっと衒学的になってもいいはずじゃん、松田の今までのインプットの量と質からすればさ。

げんがく‐てき【衒学的】

学問のあることをひけらかすさま。ペダンチック。

Source: 新村出編(2008)『広辞苑 第六版』岩波書店

こういう言葉があるってことは、昔からこういうやつは嫌われてたんでしょうね

松田:あー…

白濱:なんかすごく他者を想定している気がするんだよね。でも松田本人の認識としては、あくまで自分が主語な上で、その認識のレンジが広いというふうに理解しているのかなとは思うんだけど、そこがまだよく分かっていない。

松田:…もう一回言ってください笑

白濱:つまり、僕がするみたいに「ユーザーフレンドリー」っていう気持ちでこのサイトを作っているんではなく…

松田:あー、それはそうですね。あまり「こちら」と「あちら」って感じじゃないんですよ

白濱:そう、それが不思議で。だから…変な問いにはなるんだけど、「結果として周りにとって読みやすい」このサイトに、松田がコストを割けている理由はなんなの?

読者の皆さまには断っておきたいのですが、これは別に松田が一人でやっていることではありません。
commmon はあらゆる種類の意見・提案・コミットメントを歓迎しており、まさにそれによってこそ今ここにあるものであり、それは理想論などではなくひとつの事実なのです。(みんなもっと来い)

松田:なんでしょうね、やっぱり全体へのスムーズな自己同一化があるんじゃないですか? 部分たる自分が、自身も含めた全体に、自身は部分であるということとの矛盾を生じない形で自己同一化できていると言うのか…

白濱:え、禅マスターじゃん。

松田:まあそうですね、これが悟りです。

白濱:笑

鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫
Image: Amazon.co.jp

鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫

松田:笑 でも自分でも思いますね。良くも悪くも変に素直というか、これでもし頭が悪かったら、悪い人にめちゃくちゃに騙されている気がします。

白濱:でもさ、僕にとっての「ユーザーフレンドリー」は、松田にとっては「ユーザー+松田」フレンドリーってことだよね? それって公共とは違うの?

松田:いや、たぶんちょっと違う気がするんですよね。僕にとってのそれは「ユーザー+松田」フレンドリーじゃなく、「ユーザー+松田=松田」フレンドリーですね笑

白濱:笑

松田:で、いわゆる「公共」にはイコールの先の部分はないんですよね。僕が部分であり全体であるというのは、まさにそういう意味に他なりません。

白濱:なるほど、確かにな。やっぱ禅マスターじゃん

松田:でもこの考え方、一般論としてはちょっと難しいかもしれませんね。

白濱:でもさ、松田はそれどうやって自分の思想にインプットしたの? だって普通に考えたら「ユーザー+松田=松田」っておかしいじゃん、四則演算できてないじゃん。

c 禅がよく分からん

松田:いやー、なんでしょうね。まあ「禅の師」に言わせると、悟りっていうのは気付きであって獲得とかじゃないんですよね。ロジックの先で納得することじゃないんです、just “Uh-huh” なんですよ。

「禅の師」っていうのはいいレトリックですね

白濱:はー…それは身体知されている感じなの?

松田:そうですそうです。「だってそうじゃん?」って感じですよ。

白濱:なるほど笑 でもその「だってそうじゃん?」はどうやって…というか、頭を使ってそう思ったわけじゃないの? それとも暮らしていてそう気付いたとかなの?

松田:うーん…まあこれも「禅の師」が言うにはですけど、そこはあくまで非連続なんです。確かにそこに向かおうとして頭は使っていますから、悟りと知的努力との間に時間的前後関係はあるんですけど、でもそれは因果関係ではないんです

白濱:へー。

松田:もちろん、時間的な前後関係が必ず再現されるんであればそれを因果関係と言うんじゃないか、というのが常人の考えるところではありますが、あくまでそうではないんです。その上で禅は「虚無主義はあかんぞ」「しっかり頑張れな」みたいなことは言うんですよ。

c Let’s 禅

白濱:笑

松田:それが禅のロジックですね。

白濱:でもやっぱり、頭で理解しようとする意思とか行動はあるんだよね。

松田:そうです、というか人間である以上それは不可避です

くりかえして言う。禅を概念化してはならない。それはどこまでも体験的に把握すべきものである。しかしわれわれ人間は、誰も無言ではいられない。何らかの方法で自己を表現しなければならない。ゆえに、もし経験に表現を与えることをやめるならば、われわれは一つの経験すら持ち得ないことになる。一切の伝達の方法を奪われては、禅は禅でなくなるであろう。

(中略)

人間は、永久に自己を表現しようとしつづけるがゆえに、人間なのである。人間は理性的な存在であるというのは、この意味にほかならない。

Source: 鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫

白濱:へー。でもあれだね、もしかするとクリエイティブアイデアが生まれる瞬間の感じにも相似できるのかもね。

松田:なるほど、まあ確かに。

白濱:たださ、「ユーザー+松田=松田」思想を「だってそうじゃん?」って説明すると、その先はどう繋がるの? 「だってそうじゃん、なぜなら~」っていう二行目はどうなってるの?

松田:…二行目はないですね。

白濱自明ってこと?

松田:そうですね。その上で「それはおかしいじゃん」「分かんない」って言われたら、まあそっかって感じですね。

白濱:笑

松田:でも禅問答ってそんな感じですよ、そもそも悟りは主語不在の一般論としては語り得ないので。自分の悟りは自分で開かないといけないんです。聞いて納得するとかじゃないんです。

白濱:じゃあ「何言ってんだお前は四則演算もできないのか。全く考えられないぜバカなんじゃないのか」くらいに言われたとして、それに対してムカつくなり、「え、確かにそうなのかも」っていう信念が揺らぎ得るような状況になって、それに対して反論しないとアイデンティティーが危ういってなったらなんて言うの?

松田:…いや、たぶんそんなことでは脅かされないですね。そもそも悟りは信念ではなく事実です、なので一度気付いた以上不可逆なんです

白濱:笑 もう分からんな。

松田…って「禅の師」は言いますね。ここで僕が禅マスターだとか言い出すと話がややこしくなるんで笑

白濱:笑 まあいいや。この後久しぶりに日産のショールーム行かない?

松田:いいですよ。GT-R見に行きましょう。

銀座 NISSAN CROSSING
Image: NISSAN

NISSAN CROSSING – NISSAN

2020年12月31日
LE CAFE DOTOUR GINZA

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