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富と名声の罠

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中垣:さっき河東が 某ビジネス本 』を読んでてんけど…

河東:おれは今までにああいう本を読んだことがなかってんな。で、読んでもよく分からんかったのが…おれの上司にもああいう本をよく読んでる人、つまりMacBookを速攻買い換えるような人がおるねんけど、あの人達はこういう本を読んでそれを自分の仕事に落とし込んではるんかな?みたいに思って、そのことを中垣とちょっと話しててんな。

松田:はいはい。

河東:本の中ではいろんなことを言うてるねんけど、個人の実感としてはその内容はどうもしっくりこないというか、そんなん理想論じゃね?みたいな、それを読んで明日からの行動が変わるようには思えなかったわけ

松田:あー。

河東:ってなったとき、あれを読む人は何を期待して読んでるの?というか…

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中垣:それについて思ってたことがあって…前に植竹とも話してんけど、あの手の本ってA4一枚でサマリが書けて、それで必要十分やと思うのね

松田:なんてことを言うてくれるねん…言うた以上はサマリを添えな記事にできひんやんけ。

書名と著者名は伏せ字にしました

中垣:笑 でもそれって ピー の本に限らず、まあ大体そうなわけやん。その上でたまにあるまじでバグってるやつ以外は、内容もおおよそまともなことを言ってるわけ

松田:まあそうやな。

中垣:「なるほど」とも思えるし、それなりのインサイトもある…のだけれども、A4一枚に2,000円も出すやつはいないのと、活字に弱い人のために具体例を挟まないといけないので、無理矢理に分量を増やすことになっていると。

松田:うんうん。

中垣:その上で何よりも大事だと思うのが、ああいう本を読んだときの感覚って多くの人にとっては、そこで得た知識を体系立てて吸収してどうこうというよりは、言うてしまえば「明日からも頑張れる気がする」とか、まあそれくらいなわけ。

松田:うんうん。

中垣:あるいは本の中で「こうあるべきだ」って書かれていたことに対して、それができていない人を思い浮かべて「あいつはクソなんだ」と思えるとか、あるいはその逆とか、いずれにしてもそういう発散の快感を得るために読んでいるのでしかないと思うねんな

松田:あー。

中垣:で、おれにとって都合のいい内容で著者の ピー を想像すると、やっぱり彼は自分への幼稚な興味を全然捨てきれていないんじゃないかと思うのね。

松田:うんうん。

中垣:つまり彼が言うように、この世の中は変わらなければいけないとか、人々が変わらなければいけないのだとして…まあそもそも、世の中とか人々が変わるという表現の具体的な指示内容はよく分からないんだけど、もし本当にそう思っているとして、そのための最も実践的な方法って彼が今やってることではないと思うねん

松田:「社会は変えられる」って言うとき、その「社会」という表現は複数の個人からなる全体を想定しているわけだけれども、その全体が個人の集合として定義されている以上、社会が変えられる変えられない以前に、あらゆる個人の何気ない一挙手一投足はそれがなんであれn分の一の重みで全体に貢献しているわけで、そこを認識するのが先じゃね?って思ったのね。

次郎:あー、なるほどね。

松田:自分とは離れたところに「社会」なるものがあって、積極的な意志を持って初めてそれにはたらきかけられるというのではなく、こちらがどういった意図を持っていようが、そのことに自覚的であろうが無自覚的であろうが、お前の一挙手一投足はまさに世界を形作ってるんだよって。

Source: commmon

c 社会を変えるんじゃないんだよ、お前が変わるんだよ

松田:はいはい。

中垣:「変わるべきだ」と述べたとしても、受け手の感覚ってさっき述べたようなものでしかないのだから、そのことがきちんと分かっているのであれば、より最適なはたらきかけがあるわけで。

判断を導かない情報に意味は無く、行動を導かない判断に意味は無く、結果を導かない行動に意味は無い、そうですよね。

みなと:うんうん、確かに。

中垣:でも、そうやってフォロワーを気持ち良くさせて自分がカリスマ的になることに快感を覚えるとか、あるいはそれが一番お金になるとか、そういうことに少しでも興味があるから、狭い意味での「自分」のことがどうでもよくなってないから、だからああいう話し方をするし、ああいう本を出すんだろうなって

松田:うん、まあ分からんではないな。自分のことに興味があるというか、いずれにしろそこに効用を見出しちゃってるから、そういうやり方が均衡のポイントになっちゃってるわけやんな。

中垣:何と何との均衡?

松田:つまり、ほんまにそういう理想があるのであれば徹底的な選択と集中のもと合目的的にのみ邁進すればいいのだけれども、とは言えカリスマの「 ピー さん」になることにも魅力を感じちゃってるんやと思うねん

みなと:うんうん。

松田:でも実際のところ「 ピー さん」になることの効用って、当初の理想からはやや外れたところで最大化されるから…

中垣:しかも完全に逆向きのベクトルっていうわけでもないのがミソやんね。それぞれに親和性が全く無いわけでもないから、気付かないうちにそっちに寄っちゃうっていう

松田:うんうん。

中垣:でもこれ、別に ピー のエゴさを糾弾したいというよりは、むしろ大体の人ってそういうもんやと思うねん。 ピー の場合も、自分は本当に理想だけを追求してて、全く純粋にそれに邁進してると思ってるんやと思うねん

松田:いやー、そうやんな。

中垣:ほんまに、まじでそう思ってるんやと思う。そこに気付くのはほんまに難しいねん。

松田:うんうん。

中垣:落合陽一にしたって、例えば書いている本のバリエーションとかはすごいし、そういう意味では目的達成のために緻密にやってる部分はあると思うねんけど…でもやっぱり喋り方に、せんでもええ対象への自己同一化は滲み出てるわけやん。これはどうやったら気付けるのかというか。

落合陽一はまあ、ウルトラマックス超賢いし、全然喧嘩したい相手ではないので…ということも込みで伏せ字じゃなくてもういいや

c 落合陽一がヨウジヤマモトしか着ない感じってどうなの?

松田:しかもこれ本人の意識としてはさ、狭い意味での「自分」なんて全く興味が無いと思ってるはずで、改めて問われて考えてさえ「…うん、興味は無いです」ってなると思うねん

みなと:うんうん。

中垣:そう、そうなると思う。

松田:でも知らんうちに他の効用からは区別できない形で、富なり名声なり、狭い意味での「自分」に効用を感じちゃってると。これはもう大変やで。

貧乏でよかった🤮

中垣:そうやんなぁ…それって別にさ、それこそ「今日の髪型なんかいいね」って言われて嬉しくなるくらいの感じやと思うねん

松田:うんうん。

中垣:わざわざ鏡の前で髪を触るような人じゃなくても、そう言われたら嬉しいやん。それくらい当たり前のことやと思うねん。

みなと:あー…

中垣:それくらい当たり前のものなんだけど、でもそれが邪魔になるときもあるわけで

松田:だからあれやね、「信者は不潔」とまで言ってのけた岡本太郎は偉いね。

中垣:あー、そうやね。

岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫
Image: Amazon.co.jp

また人はよくぼくのことを「教祖」だという。行動に断言的なところがあるからだろう。しかしここでも、信者は一人もいない教祖だ。信者なんて不潔だ。また親分子分の人間関係のお互いごまかしあい、利用しあういやったらしさ。

Source: 岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫

c 岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫

松田:『自分の中に毒を持て』は、そういうスタンスがかなり出ていてよかったと思う。でも実際、リーダーとフォロワーという関係ではフォロワーを救うことなんてできないでしょ?って話やん。

なつき:うーん。

中垣:そうやんね。本人的にそこが気持ち悪くはないんかな?

2021年1月某日
某所

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