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ファッション 思索

ヴィンテージよりカッティングエッジ

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松田ヴィンテージって結局は中の上の人のためのゲームというか、無理矢理に天井を低くしただけのゲームな気がするねんな。そもそも何かをヴィンテージとしてありがたがるとして、それってどこまでいっても、当時現行品としてそれを買っていた人の存在に担保されているわけやん。

中垣:まあどうなんやろうな。物に対して感情移入をするきっかけとしては、それがヴィンテージであることは強力やとは思うし。

松田:でもそれってヴィンテージじゃないとあかんの?

中垣:いや、別にヴィンテージじゃなくても全然いい。あくまで感情移入のきっかけやから、「昔好きだった子にもらったから大事にしてる」とか、そういうのと一緒。

松田:ならさ、ヴィンテージにしかできない仕事ってなんなん?

中垣:まあそれしかないっていうのはひとつにはあるけど…でもヴィンテージにしかできないことってなると、そんなものはないんじゃない?

松田:そうやんな。おれは個人的には、まあ断じ切るのにはやや抵抗があるけど…

中垣おれはヴィンテージなんて嫌いやで。超嫌い

松田:笑

中垣:もちろんさっき言ったように、物にストーリーを感じられるのってすごく大事やとは思うねん。iPhoneの画面が割れてるのが好き、とかね。

加工物のデニムみたいに、iPhoneの画面をいい感じに割ってくれるサービスを探しています

c ゴリラガラスの製法

松田:うんうん。

中垣:そういうのってすごく素敵なことだとは思うんだけど、その感情の持ち方として“““ヴィンテージ”””とか言い出しちゃうのって、あまりにも説明可能性が高いと言うか、自分なりのストーリーが欲しいのに他人のストーリーを拝借しちゃってないかい?的な、そういう矛盾があるとすごい思うな。

『WIRED×STEVE JOBS』GQ JAPAN 2013年11月号増刊, コンデナスト・ジャパン
Image: Amazon.co.jp

アップルに自社の哲学を仮託したふざけた広告が載っていた裏表紙を破り捨てた本

『WIRED×STEVE JOBS』GQ JAPAN 2013年11月号増刊, コンデナスト・ジャパン

松田:いやー、そうやんね。

中垣ストーリーが欲しいのなら自分のストーリーでいいやん? 「小さい頃から使っている箸を大事にしてる」みたいな、そんなんでええねん。

松田:うんうん。

中垣:そっちの方が大事なはずなのに、値段が高いとか他人もそれがいいと思っているとか、そういうことによって価値の一般性を担保したがるやつがあまりに多過ぎる。まじでどうでもいいよな。

松田:まだミーハーの方がいいよな。

中垣ミーハーはいいよ、いつの時代も肯定されるね

みんながどんぐり拾ってる中で稲作を始めたミーハーに感謝して今日もご飯をいただきます

中垣:いやぁ、しかしヴィンテージはやっぱりやばいよ。

松田:まあそらな、直感的に思うところを言っていいのなら「ヴィンテージは死ね」やねんけど…

中垣:だからあれや、ヴィンテージが存在していいのは博物館だけやで

松田:あー、確かに。1,000円で入場できるパブリックなスペースにあるのならそれはいいことやね。

中垣:単純に、かつて存在したのに今はない物の価値っていうのはあるからね。

松田:うんうん。歴史を保存するのは大事やもんね、キトラ古墳の修復と同じやもんね

キトラ古墳 – 国営飛鳥歴史公園

中垣:であるからこそ、やっぱり個人が所蔵している必要はないねん。

松田:確かに。

2021年1月16日
西麻布 中垣の家


明石現行をブティックで買うことの意味って大きいと思うんですよ

松田:いや、それは間違いないですね。

明石:ヴィンテージロレックスとかも流行ってるけど…

松田:あの価値観、僕は全然好きじゃないんです笑

Apple Watch ゴールドステンレススチールケースとミラネーゼループ – Apple

c テクノロジーに感じる情緒

明石:そう、僕も好きじゃなくて。それに今現行を買っておけば、それはいつかどこかでヴィンテージになるわけじゃないですか

松田:うんうん。そうやって結果的にヴィンテージになるものはレトリックとしてのそれではないわけで、自分としても一番しっくりきそうですよね。

明石:今までもなんとなくはそう感じていたんだけど、そのことをはっきりと確信した瞬間があったんですよ。

松田:はいはい。

明石僕は世代的に 某カリスマ がドンピシャなんですけど、高校生の頃から本当にずっと憧れてたんですよ。仕事とは関係の無いミーハーな夢が3つあった中で、そのひとつが 某カリスマ に会うことだったくらいで。

松田:あー、はいはい。

僕が近所でちょいちょいすれ違うのは…ノーカンですね

明石:だったんですけど、ちょうど一昨年、その 某カリスマ と食事に行く機会があったんですよ。それで扁桃腺の手術の3日後だったんですけど、這ってでも行くしかないと思って行ったんですね。

松田:まじかよ笑

明石:でも会ったその日の帰りに死ぬほどへこんでたんですよ。もちろん会自体は楽しかったんですけど、自分のレベルが低過ぎて…

松田:どういうことですか?

明石:飯食うとき、そりゃあ 某カリスマ の持ち物を上から下まで全部見るわけですよ。で、洋服とかスニーカーは雑誌とかで見る機会もあるけど、バッグってなかなか見られないじゃないですか?

松田:あー、確かにそうですね。どんなんだったんですか?

明石:このバッグがすごくて…当時、ちょうどヴァージルがルイヴィトンのディレクターになった頃で、僕なんかは「いよいよかぁ」くらいにしか思ってなかったんですよ。

VIRGIL ABLOH
Image: LOUIS VUITTON

VIRGIL ABLOH – ルイ・ヴィトン

松田:うんうん。

明石:で、その日の 某カリスマ のバッグは、ルイヴィトンにとって初めてのストリートとのコラボレーションだった、2001SSのスティーブン・スプラウスのやつだったんです。このコラボレーションは、今ルイヴィトンがやってる派手な感じのコラボレーションの初めだったんですよね。

ルイヴィトン スティーブンスプラウス 2001SS
Image: LOUIS VUITTON

Louis Vuitton et l’Art | LOUIS VUITTON

松田:はいはい、なるほどなるほど。

明石その2001SSのデッドストックのちっちゃな女性用ポシェットに、パラコードをつけてサコッシュ風にしてたんですよ。ちょうど一昨年ってそういうバッグがすごい流行ってたんですけど…

サコッシュ
Image: LEON

【まとめ】2018年最も流行ったバッグは、サコッシュで決まり! – LEON

松田:あー…まじか。なるほど。

明石:しかもヴァージルとのコラボレーションが発表された直後に、そういうストリートっぽいコラボレーションの源流のやつを使ってそれをやってるわけですよ。「ちょっと倉庫から引っ張ってきた」っておっしゃっていて。

松田:それは確かにすごいというか…うん、へこんだって言うのはすごく分かりますね。

ミーハー過ぎて圧倒される

明石:「これもう勝てないじゃん…」って感じですよね。それで聞いたら、やっぱりすごい数を寝かしてるらしいんですよ。

松田:うんうん。

明石:だから、彼は20年後のために今買ってるわけですよ。でも20年前のおれが今のおれに何を買ってくれてるかって考えても、そんなの何もないわけじゃないですか。

松田:いや、普通そうですよ笑

当時まだ6歳だった僕は見逃してください

明石:だから今から始めても20年後にやっとそのレベルになれるかもしれない…そう考えるとなんか絶望しちゃって。

松田:いやー、それこそよほど好きじゃないとできないと言うか、それができるからあれだけのカリスマなんでしょうね

明石:だから松田さんの言う「今売ってるやつをブティックに買いに行け」っていのもすごく分かるんですよ。

c エルメスのブレスレット、クレッシェンド

c エルメスのブレスレットの買い方

松田:現行を買うことを通じて数十年後のヴィンテージにコミットするっていうのは大事なことですからね。そもそも今誰かが買わないと、未来のヴィンテージは存在しないですし

明石:確かに、そうですよね。

松田:それと同じで、僕はヴィンテージマンションをありがたがる風潮も好きじゃないんです。秀和でも何でもいいんですけど、一番偉いのは今それに価値を見出しているやつではなくて、新築で出たときにそれを買うなり借りるなりしたやつなんですよね

と言いつつ秀和に住んでいますほんとごめんなさい

明石:いやー、分かるわ。すげえ言語化された。

松田:だから、僕はできる限りそちらにコミットしたいと思っていますし、そういう意味でミーハーはいつの時代も価値のあることだと思っています。

明石:はいはい。でもそうなんだよな、今いいと思う物を買い支えて、それを今から保守しておくっていうのは大事だと思ってて。

松田:うんうん。

明石:僕がヴィンテージロレックスが好きじゃないのはそこもあって、ロレックスってアフターサポートがしっかりしてて、容赦なく現行の部品に変えるじゃないですか

松田:あー、そうですよね笑

明石:「針変わってるじゃん」とか「文字盤変わってるじゃん」とか。だから今ヴィンテージロレックスとして出回っているものって、どこかのタイミングで正規のメンテナンスからは外れているわけですよね。

松田:うんうん。

明石:でもそれってロレックス側とは思想が合っていないわけじゃないですか、その辺りにも違和感を感じるんですよね。

松田:いやそうですよね。だからヴィンテージって、どこまでいっても二流のゲームでしかないと思いますよ

明石:笑

ヴィンテージは、現行に欲しいものがなくなったやつがある程度の公共心のもとで集めるくらいがちょうどいいんだよ

「時」の流れに沿うて歴史が展開して行くと云ふことを聞くこともあるが、こんな無意味なことはないと思ふ。歴史と云ふものがあつて、時を流れるとは考へられぬ。時は前述の如く、白紙を瀑布のやうに拡げて居て、そこを歴史が或る高処から落ちて来る。而してそれを吾等が見て居ると云ふものではないのである。白紙を掛けたやうな「時」と云ふものは本よりないのである。さう考へるのは抽象の結果である。随つて歴史が其上に何か跡づけて行くと云ふのは、本当の歴史の影を追つかけて飛びまはると同じである。手に入れたと思ふのは抜殻に外ならぬ。そんな抜けがらを捉へて後生大事と心得て居るものに限つて、生きたものを死んだものに仕替へてしまふ。即ち死骸のミイラを仏壇なり神殿なりに祭り込んで、その前に三拝九拝して、その中から後光の流れ出るのを待つて居る。鰯の頭の信心よりまだ馬鹿げて居るのみならず、こんな手合ひに限つて、自分の抽象した干枯びたミイラの押売りをやらうとする。自分だけの信心ならそれもさうで、別に他から何とも云はれず、またそれで趣きのあるものである。が、干物の押売をやる連中になると、その禍の及ぶところ誠に図り知るべからざるものがある。

歴史の干物、「時」の影ぼふしを随喜渇仰して居る人々は、「過去」に膠着して一歩も前進し能はぬのである。干物はどうしても蘇息せぬ、影ぼふしはどうしても自分で動き出し能はぬ。それ故、彼等には現在も未来もない、また主観を飛び越えるほどの元気もない。彼等はいつも過去の影を背負つて居るので、而してその影の重きに堪へ得ないので、過去をぬけ出て、現在にはひることが出来ぬ。ましてそれから未来への飛躍を試みんとする意気に至りては、露ほどもない。本当の歴史は飛躍の連続である、非連続の連続である。独尊者はいつも現在の刹那において過去から未来へ躍り出る。彼は現在の一刹那において黒暗暗の真只中を切り抜ける。此一飛躍の中で所謂る「過去の歴史」なるものが、溌剌たる生気を取り返すのである。独尊者の巨歩は実に此の如く堂堂たるものである。何ものの閑人ぞ、敢て彼を干乾しにはせんとする。又何ものの「現実」主義者ぞ、彼を「過去」の棺桶の中に封じ去らんとする。

Source: 鈴木大拙『時の流れ』

鈴木大拙 『時の流れ』

2021年1月17日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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ルイヴィトン スティーブン・スプラウス
HeaderImage: LUXURYLANA BOUTIQUE

2011年、スティーブン・スプラウスとルイヴィトンのコラボレーションで発表された「モノグラム・グラフィティ」。マーク・ジェイコブスのオファーにより実現したコラボレーションは、彼が女優シャルロット・ゲンズブールの家で見た落書きされたモノグラムのトランクにインスパイアされている。
2009年にはスティーブン・スプラウスの回顧展に合わせ、彼へのオマージュとして「モノグラム・グラフィティ」に加え「モノグラム・ローズ」が発表された。

Louis Vuitton Stephen Sprouse Graffiti Neon Green Keepall 50 – LUXURYLANA BOUTIQUE