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いいこと思いついた 思索 未来

おれらは将来アカウントになると思う

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前言語的確信に言語によって漸近するというスタイルなので、その場の雰囲気で口にしている部分も多々あります。「ここはこうなんじゃね」「いまいち言ってることが分からんぞ」とかがあれば、ぜひ次回以降に参加して指摘してください。

中垣:太郎が来るまで、名前は変えてもいいんじゃないかみたいな話をしててん。

太郎:はいはい。

中垣:そのときに何が問題になるかやねんけど、仮に名前がID的なものではなくただのカルチャーなのであれば、別に変えてもいいわけやん?

太郎:そうだね。

中垣:言うたら整形と一緒なわけ。もちろん、おれが明日からいきなり高橋になったら不便やねんけど、それは別に明日からいきなり二重になるのもそうなわけ。

松田:まあそうやんな笑

中垣:って考えたとき、とは言え名前が変わると、個人の信用が成立しなくなるんじゃないかって話になってん。ある人が昨日も今日も明日も一ヶ月後も同じその人であるっていう、そこの信用が担保できなくならへん?って。

結婚して妻の姓を選んで信用情報を清算した「愛沢」が出てきます

太郎:はいはい。

中垣:おれと会う約束をしていたのに「今日からおれは高橋だから」とか言ってバックレられる、そういうことが起きるとまずいわけやん。そういう意味で、つまり個人の人格の連続性を担保するためにも、名前とそれに紐付けられた本人の記憶の連続性は重要なんだけど、でもそれって別に名前じゃなくてもいいよね?って話もあって。

太郎:はいはい。

中垣:それが政府の発行するIDとそれに紐付けられた詳細な行動履歴なのか何なのかは知らんが、とにかくそこで登場する保険として、例えばある人と決まった時間に会ってラーメンを食べる約束をしていた場合、自分の代わりに別の人が送り込まれて、本人がいるのと同じだけの効用を担保する、みたいな個人保険はどうかと。そういうのがあれば信用って無理矢理にでも成立させられるんじゃないかって言ってた。

水商売周りでなら今すぐにでも始められそう

太郎:それはどうなんだろう、約束の場面にそいつが来るっていう予見可能性そのものが大事な気はするけど

松田:いや、まあそうやとは思うで。だからあくまで、期待される内容がなんであれその期待を十分に満たすような保険ということで、今のところは都合よく定義させてもらいたい。

太郎:あー、なるほど。

中垣:おれの代わりにめっちゃ美人が来るとかね。

何を期待されていると思っているのか

松田:だから、例えばおれが中垣と茶をしばくことを約束したとして、そこに期待することをより高い解像度で実現してくれるのであれば、それは中垣じゃなくてSiriでも何でもいいって話になってくるやん。

太郎:あー。

松田:その実現にどれだけのリソースがいるのかは知らんが、中垣と茶をしばくことにおれが期待する効用を十分に高い解像度で認識・再現できる機械があれば、そこでは中垣が中垣として信用を全うする必要はなくなるよなって。

太郎:なるほどね。ちょっと話がずれるかもしれないんだけど、外出して職場に通うことができないような障害を抱えている人が、ロボット経由で接客するみたいなことをやってるカフェが渋谷にあって…

ロボットカフェ DAWN
Image: 分身ロボットカフェDAWN ver.β

分身ロボットカフェ「DAWN」Ver.β

松田:はいはい。

太郎:何が言いたかったって、今の松田の話って全然ナンセンスではないなと思って。

中垣:はいはい。

人格というマスターデータがあれば、それが寝たきりであれ、機械を媒介して現実世界に影響力を行使することができるのです。
さらにそのマスターデータが今ここにいるフィジカルな「私」が保持する限りのものではなくなった場合、どういうことが起こるのでしょうか。話は続きます。

松田:もちろん今は、人間が普段している通りに世界を認識してそれを再現することは機械にとって非常に難しそうではあるねんけど、いずれそうではなくなるわけやん。それこそ今おれが触ってるこのテーブルの天板も、見た目とかテクスチャだけでなく、我々の感覚器官では認識できない化学的な組成も含めて認識することができるようになるわけ

中垣:はいはい。

松田:そういう全てを人間以上に知り得るのであれば、それに基づいて人が直接働きかける以上のリアリティをもって世界に影響力を行使することはできそうじゃない?

中垣:そういう意味で、人が来なくてもその効用を担保できるようになるっていうのは確かにあり得るよね。

太郎:うーん…

中垣:「おれの性感帯はここやったんか…」みたいな、おれの知らないおれを機械に教えてもらう日も近そうやね

松田:まあたぶんそういうことやな笑

太郎:…で、そういう世界では名前が失われるってこと?

松田:じゃないかな?って。そもそもなんで名前が大事かって話やねんけど、名前とそれに紐付けられた本人の記憶の連続性に担保された連続性のある人格がないと、いざというときに参照すべき私の原本とでも言えるようなものが失われるような気がするねん

太郎:原本?

松田:名前を根拠とする一貫性のある人格という原本がないと、ある人が昨日も今日も明日も一ヶ月後も同じその人であるっていうことを確信できなくなってしまうわけやん。でも仮に中垣が明日から高橋になって、人格の点でも具体的な行動の点でもそれまでとは非連続的な人生を歩み出したとしても、中垣のそれまでの人生の一挙手一投足が十分な解像度でマスターデータとして保管されてさえいれば、その人格の一貫性をマスターデータの内容で取って代えることができるというか…

太郎:あー…

中垣:今はいない中垣ってやつが過去に借金をしてたとしても、同じIDの人に請求すればいいもんね。でもそれって現時点でも実現可能ではないん? 中国がやってるんかは知らんけど、あらゆるログが記録されている住民のデータベースみたいなのを使ってさ。

太郎:人間の知覚の解像度を超えたマスターの話と名前の話がどうつながるのかが、いまいち分かってない。

松田:今中垣が言ったようなやつなら別にできると思うねん。つまり中垣の顔と名前が変わろうが、持ってるIDカードの番号は同じで、その番号に対しては死ぬまで責任を取らなければいけないというのはね。

中垣:うんうん。

松田:というより、さっき言ったような理想的な未来では、そもそもフィジカルの中垣なり高橋が人格に責任をとる必要がなくなるような気がするねん

中垣:あ、IDカードとの紐付けもなくしちゃうってこと? 「僕は中垣じゃないし、このIDも知りません」って言ってもいいってこと?

松田:実際、名前とか顔を変えることの理想ってそれやん? SNSのアカウントを作り直すみたいに、全く新しいスタートがいいやん?

中垣:うんうん。

松田:で、もし中垣の一挙手一投足が限りなく理想的にマスターデータに反映されていたら、中垣というフィジカルな実体が責任を負わんでも、さっき言ったような理屈でなんとかなりそうやん。

中垣:あー、はいはい。なるほどそういうことね。

松田:もはや中垣なり高橋がバックれても大丈夫やねん。中垣の実体はフィジカルな中垣じゃなくて、サーバー上のマスターデータとそれに基づいて世界に影響力を行使する機械群からなるわけ。フィジカルの中垣はその場その場の思いつきで生きていけばいいねん。

中垣:うわー、そういうことか…でもそれって確かにあり得そう。

松田:で、ここでインスタグラムの話をしたいねんけど、おれはインスタグラムのアカウントとかGoogleのアカウントとかを結構な頻度で作り直すねんな。これがなんでかって、今ここにおる生々しい自分が捨象されてアカウントに反映されている感じに耐えられなくなって、毎回そのギャップを清算するためにアカウントを消してるねん

c 強迫ピープルの生態

中垣:うんうん。

松田:なんでそうなるかって、アカウントに反映できる「私」の情報があまりに少な過ぎるからやねん。でも解像度の超高いマスターデータが取れるようになると、むしろ今ここにいるおれがアカウントになるわけ

中垣:そういうことやんな笑

太郎:あー、うんうん。

松田:だからいつでも「やーめっぴ」って言って、すぐに新しい試みを始められるようになるねん。

中垣:し、人間の価値は今ここにこそあるという価値観からすると、そっちの方がよりいいやんね。おれが昨日何か恥ずかしいことをしてしまったなんて、なかったことにしたいのならそっちの方がいいねん

c 『夜と霧』から知る、人生の豊かさと意味

松田:そう、その辺の辻褄合わせは最強のマスターデータと機械群に任せればいい

中垣:Google Earthって日時を指定して閲覧することができるやん。そういう感じで、一ヶ月前の中垣を期待している場合には個別具体的にそれが提供されるって感じやんな。

完璧なストリートビューがあれば世界は何度でも再建設できる説っていうのが commmon ではあってですね…

松田:まあそんな感じやと思う。だからフィジカルの中垣にとっては、ほんまのほんまに今ここのみが問題になるようになる。

中垣:そうやんね。

松田:しかもその線で言うとおれらがアカウントになるっていう例えもまだ不十分で、そのさらに一歩先、アカウントによる一回きりのポストに相似できるような存在に例えられるまでになるはずやねん

中垣:うんうん、そうやんね。ポストを一回しかしないアカウントって感じやんね

松田:そうそう。

中垣:やばいな。しかもそこで生まれるカルチャーってなると、これはもう分からんよね。TikTokどころの騒ぎじゃなさそうやもん。

中垣:しかも、次何かが流行るとしたらそいつはTikTokを乗り越えてくるわけやろ、これはもうやばいよ。

松田:それはすごいね。

中垣:もうあれやんね、5段階くらい先に禅が来てもおかしくないくらいに加速してるよね。

Source: commmon

c TikTokは禅への序章

松田世界のあらゆる地点あらゆるタイミングで最大瞬間風速が出続けることになると思うよ。これはもうすごいね。

中垣:理想論やけど、でもそんな気がするな。

太郎:なんかあれだな、そうなるとモラルハザードがとんでもない規模で発生するんじゃないかっていう…

もっと言ってやってください

中垣:モラルなんてね、豊かさが十分に蓄積される途上の産物やからね。

太郎:いやまあ、言ってることは分かるけどね笑

松田:もちろんエクスキューズさせてもらえるのなら、別におれだって、今言ったことの周辺で何が起こるかについてはまだまだ考えは及んでいないよ笑 ただ、おれが病的にアカウントを消したり作ったりする必要性は確実になくなるだろうなとだけ

今もないぞ

中垣:あとはまあ…現にじゃないけど、引きこもりのニートみたいな実体が弱い人って、既に今言ったような感じになってそうやんね

松田:あー、確かに。

太郎:なるほどな。

中垣:しかもそうなってこそさ、「おれはマヨネーズが好き」みたいな、そういうことに一層の意味が出てきそうじゃない?

松田:確かに。昨日マヨネーズが好きだったのか、明日も好きなのか、あるいはそのことが周囲の人に与える印象はどうなのかとか、そんなことは全部取っ払って、今ここでマヨネーズがすごく美味しいと思えていることだけにフォーカスできるようになるんやもんね。

藤原ヒロシのインスタアカウント、新しいポストのたびに直前のポストのこと忘れてそうな見た目してて好き

fujiwarahiroshi – Instagram

中垣:そうそう。それは最後まで、どうしても否めないもんね。

2020年12月25日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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