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TOKYO

六本木の本屋を案内するよ

3 years

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松田:この前六本木の蔦屋に行ってんけどさ、その途中でチームラボの新しい展示っぽいテントを見て、それがなんと、どうやらサウナらしいねんな

みなと:あ、それどこかで広告見たかもしれない。

松田:しかも、なぜかTikTokのロゴがチームラボのロゴの横に並んでるのね。サウナでチームラボでTikTok、これはなかなかにやばい雰囲気があるなと。

c TikTokは禅への序章

みなと:笑 なるほどね。

チームラボ サウナ
Image: teamlab/Instagram

teamLab – Instagram

松田:で、実際にどういう展示なのかをちょっと調べてんけど、やっぱやばくて、まず普通にサウナに入って、ほんで休憩のときにアートを見ましょう的なやつやねん。

みなと:うんうん。

松田ただしここで言うアートっていうのは、宣伝の動画を見る限り、完全にチームラボのあれやねん。キラキラキラ~みたいなやつ。しかもきっと、音もキラキラキラ~って感じのが流れたりするわけやん。これはもうあれですよ、LSDとか大麻とかそういう種類のやつですよ。

全然関係無いけど、昨日初めて舐達磨のストーリーのこと知りました

BADSAIKUSH – Instagram

みなと:うん、全く同じこと思ったわ。

松田:ただチケットが制限時間100分で4,800円とかするみたいで、ちょっともう高過ぎじゃんよって感じではあるねんな。だから行くかどうかは微妙やけど、でもおもしろそうだなとは思っちゃったっていう

みなと:なるほどね。

松田:で、それを横目に見ながら蔦屋に行ってんけど、そしたらその展示に関連した選書コーナーみたいなのがあったの。「茶の湯とサウナ」「禅・マインドフルネスとサウナ」「脳科学とサウナ」とか言ってね。

アートによって、自分と世界との関係と新たな認識を模索してきたアート集団チームラボは、日本に定着してきたこの「ととのう」という特殊な感覚に着目し、「ととのう」ことによって感覚が鋭くなり、頭はすっきりし、美しいものはよりいっそう美しく感じられ、普段の感覚では気がつかない体験をする場として、アートとサウナの新しい展覧会を開催します。

この度、六本木 蔦屋書店では、「チームラボ & Tiktok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木」開催の背景コンセプトに基づき、3つのテーマ~<第一章:茶の湯とサウナ><第二章:禅・マインドフルネスとサウナ><第三章:脳科学とサウナ>~に沿った書籍をご用意しました。
本を通して展覧会の本質をより深く理解し、体験が皆様にとってより強いものとなる手立てとなれば幸いです

Source: 六本木 蔦屋書店

【フェア】「チームラボ & TikTok, チームラボリコネクト:アートとサウナ 六本木」を読む – 六本木 蔦屋書店

松田:それを見て、これはどうやねんとか思ったわけ。前にも言ったように、サウナがサウナで心地良いのはそれは勝手にしてくれたらええねんけど、それと禅とを並べるなんておれはそんなの受け入れられないぜ、とか思って。

われわれがけっして見落としてはならない一事がある——すなわち、貧の平和(けだし、平和はただ貧においてのみ可能である)は、あなた方の全人格の力をつくしてのはげしい戦いをたたかい抜いてのちに、はじめて得られるものである。怠惰や、放任安逸な心の態度から拾い集めた満足は、もっとも嫌悪すべきものである。そこには禅はない。ただ懶惰と、無為の生があるのみである。戦いは、はげしく雄々しく戦われなければならない。これなくしては、そんな平和が得られたにしても、それはみな偽物である。そこには深い基盤がないから、ひとたび嵐にあえば、たちまち押しつぶされてしまう。禅はまったくこの点を強調する。

Source: 鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫

鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫

みなと:うんうん。この前も言ってたよね。

c サウナなぁ…なんか違和感あるんだよな

松田:だからちょっと拝見させてもらおうと思って選書されてる本を見てんけど…これがちょっと分からなくて。

中垣:はいはい。

松田:まず「禅・マインドフルネスとサウナ」のコーナーには15冊の本があってんけど、そのうちマインドフルネスの本が5冊で、残りの10冊が禅の本やったのね。しかもその10冊のうち、4冊が鈴木大拙っていう…

中垣:笑

みなと:すごいね。

松田:しかもその4冊にしても、なかなかいい4冊やったと思うねん。まずはちくまの『禅』と、その原文の『Zen and Japanese Culture』が入ってるわけ。あとはそれに加えて河出書房新社の『禅のつれづれ』もあってんけど、これもなかなかいいのよね。

Daisetz T. Suzuki(2019)『Zen and Japanese Culture』Princeton Univ Pr
Image: Amazon.co.jp

Daisetz T. Suzuki(2019)『Zen and Japanese Culture』Princeton Univ Pr

鈴木大拙(2017)『禅のつれづれ』河出書房新社
Image: Amazon.co.jp

鈴木大拙(2017)『禅のつれづれ』河出書房新社

中垣:はいはい。

松田:『禅のつれづれ』の帯の「禅とは一心不乱である」っていうのもなかなかいいよね。一般的には禅とか悟りって滅却的で虚無い印象もあると思うねんけど、それは全くの間違いなわけ。むしろそれとは逆で、悟りの平穏っていうのは生きるか死ぬかの先にある積極的なものでしかあり得ないんだけど、それを簡潔に表現しているよねっていう、はい。

みなと:笑

松田:しかもね、鈴木大拙の4冊に加えて、オイゲン・ヘリゲルの『弓と禅』があったことにもおれは注目したいのね。彼の本としては、岩波の青から出てる『日本の弓術』っていうのが一番有名じゃないかとは思うねんけど…

中垣:はいはい、それはなんか聞いたことあるね。

オイゲン・ヘリゲル(1982)『日本の弓術』岩波文庫
Image: Amazon.co.jp

c オイゲン・ヘリゲル(1982)『日本の弓術』岩波文庫

松田:それでこの『日本の弓術』やねんけど、結構やばめの中身やと個人的には思ってるのね。ドイツ人哲学者が日本にやってきて、どうせなら日本のマインドを学ぶために何かできることはないかということで弓術を習い始めました、的なやつで…

みなと:うんうん。

松田:そうやって先生のもとで弓術を学ぶことになってんけど、どうしても矢を的に当てることに対して目的的になってしまうというか、矢が的に当たるという結果のためには絶対に原因があるっていう発想から逃れられなくて、どのようにしたら的に当てられるのかを師に聞くねんけど、特に何かを教えてくれるわけでもなく、「無心になれとか言われても分かんねーよ」って感じで荒んでいくのね

みなと:笑

松田:で、そういう感じでふててたら、「本当はこんなことをしたくはないけど、お前は言うても分からんようやから見せたる」って先生が言って、ほんで真夜中にいつもの練習をしてる場所に連れて行かれて、全く的が見えない状況で、先生が二本の矢を射って見せてくれてん。

みなと:うんうん。

松田:それで二本の矢が的中したところを見に行くねんけど、一本目は的の中心に、二本目は一本目を裂くようにして全く同じところに的中してるのね

みなと:あー…

松田:それで先生は言うねん。一本射って的中したくらいなら「いつもここで練習しているんだからそれくらいなら…」と思うかもしれない。でも二本とも全く同じところに的中するんだから、それはもうそういうことなんだよと。狙うとかじゃないねん、心の目で見るんやで、的なね。

みなと:なるほどね笑

松田:まあ別に、それで納得できるわけではないねんけどな。

中垣:笑

松田:ただとりあえずのところヘリゲル君のモヤモヤに決着はついて、その後も修練を重ねて無事弓術を会得するみたいな、まあそういう話やねんな。

中垣:はいはい。

松田:で、この本の内容の重要なところは、その真実性がどうこうというよりは、それを肯定的に捉えることができるかという点で、まさにその態度にこそ、西洋的なるものに対置される東洋的なるものが現れる気がするねんな。

中垣:うんうん。

松田:ここまでちょっと長くなったけど、まあそういう人の本も置いてたりして…だから「禅・マインドフルネスとサウナ」っていうテーマ自体はどうしようもないけど、選書自体は結構いい線いってる気はしてんな

みなと:へー、なるほどね。

松田:あともう一個だけ話したい話があるねん。その日蔦屋を出た後に六本木の交差点のところのブックファーストにも行ってんけど、そしたらなんと、4月18日をもってあのブックファースト閉店するらしいねん

ブックファースト 六本木店 閉店
Image: ブックファースト

お知らせ – ブックファースト

中垣:え、嘘やん? まじ?

松田:でね、別に六本木には蔦屋があるからいいじゃないかっていうあほの声もあるとは思うねんけど、それは全然違うんですよ。ブックファースト六本木店っていうのはほんまに偉いんです

中垣:うんうん。

松田:まあ確かに場所が場所やから、GACKTの『勝者の思考』みたいな本があるとして、そういうのが平積みになってたりはするねんで。

あるかは知らん

みなと:笑

松田:なんだけれども、あそこは入り口入ってすぐ右手のところに「ROPPONGI LIBRARY」なる縦横2mくらいの棚があって、これがなかなかに優秀やねん。様々なジャンルの、確かに専門性は高いんだけれども、でも理想的にはみんながこれくらいの本を読んでいればいいよね、っていうくらいの感じの本が集まってるねんな

みなと:へー。

松田:それでやねんけど、前にあそこのブックファーストでミヒャエル・エンデの『モモ』を買おうとしたことがあってんな。

みなと:はいはい。

ミヒャエル・エンデ(2005)『モモ』岩波少年文庫
Image: Amazon.co.jp

ミヒャエル・エンデ(2005)『モモ』岩波少年文庫

松田:そのときに「岩波少年文庫の棚はどちらですか」って店員さんに聞いたのね。そしたら「岩波少年文庫は置いていないんですよね…ちなみになんていう本ですか」「ミヒャエル・エンデの『モモ』です」「あ、それでしたらこちらですよ」ってなって、「ROPPONGI LIBRARY」の棚に案内されてんな。これがもうほんまに忘れられなくて。

中垣:笑

松田:だってさ、たまたま声をかけた店員さんが、自分の店は岩波少年文庫は取り扱っていなくて、でも『モモ』に限ってはあの棚に置いているっていうことを全部把握していないと、あの対応にはならへんわけやん。

しかも買った一週間後には補充されてたっていう

中垣:はいはい。

松田:しかも店員さんに聞いたら、外注とかではなくその店舗だけで独自にやっている棚らしかってんな。あれは六本木の良心という感じがあってんけどなぁ…

c よいものが売れる vs 売れるものがよいもの

2021年3月15日
Clubhouse

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チームラボ サウナ
HeaderImage: teamLab

サウナとアートによる全く新しい体験 「チームラボリコネクト」 東京・六本木に2021年3月、半年間限定でオープン。サウナで、ととのい、超自然現象的アートと一体化し、世界と時間に再びつながる – teamLab