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思索 生きづらさ

雑誌も動画もあんま好きじゃないんだよな

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中垣:前にClubhouseで言ってた余暇の話、あれまとまったん?

松田:いやぁ…まだ特にまとまってはないねんな。

河東:なんかあれやんな、雑誌が余暇っぽくて読まれへんみたいな話やろ。洗濯物干しながら聞いてたわ。

中垣:そうそう。

松田:なんかさ…雑誌ってすごく余暇的に設計されている気がするねんな。

河東:はいはい。

松田:今までは、自分が雑誌を読めないのってインプットとアウトプットのバランスが取れていないからやと思ってたのね。つまり…たくさんインプットをする中で取り組むべきだと思えることが見つかっても、それを全部実践できるのではないわけでさ。

中垣:うんうん。

松田:それでなんか、以前は読んでた時計雑誌とか車雑誌も読めなくなっちゃってんな。クロノスとかエンジンとかも数年前までは楽しく読めててんけど、別にそれを読んで明日からの日々が変わるわけじゃないからさ

中垣:うんうん。

『クロノス日本版』2016年1月号, 東京カレンダー
Image: Amazon.co.jp

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『ENGINE』2021年2月・3月合併号, 新潮社
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待っててね僕の720S

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c 【聞いてください大森さん】説明可能性の高いデザインが嫌い

松田:で、それは別にPOPEYEも同じで、読んで楽しくはあるけどそれだけやねん。服の情報にしろ何にしろ、ほんまに必要なときはバックナンバーディグって入手するし、そうでないタイミングで新しい情報を目にしても役には立たんねん。

中垣:はいはい。

松田:あともうひとつ、それとはまた違う文脈の話として、動画コンテンツが見られへんっていう悩みもあってんな。それがなぜなのかについては、単位時間あたりの情報量は動画より文字コンテンツの方がはるかに多い…というか、動画からの情報ってかなりrawに近いから、その内容を受け手の側で抽象化しないことには建設的なインプットになり得なくて、そういう意味ではどこまでいってもエンタメ的にしか役に立たんと。

河東:うんうん。

これはこれで意味はあるんですけれど、それもあくまで、起こったとされることの真実性を担保する資料としてのそれに限られる気がしています。

松田:なんしかそういう違和感を雑誌と動画に感じてて…で、これはどちらも、余暇的に設計されている点において好きになれないと言えるんじゃないかと思ってんな。

河東:はいはい。

松田:ここで言う余暇的っていうのはつまり、平日5日間と休日2日間の二項対立のうちの後者的なるものというか、やらなあかんことがパンパンに詰まっていて反省の余地さえない平日5日間の慰みとして対置されている、何をしてもしなくてもいいブランクの時間というか…

河東:うんうん。

松田:休日2日間って言うたら何をやってもよくて、でも何もせずにいるのには耐えられないみたいな、そういう性格を持つ時間な気がするのね。

河東:はいはい。

鷲田清一(2011)『だれのための仕事』講談社学術文庫
Image: Amazon.co.jp

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松田:平日5日間は目的的かつ生産的な意識で過ごしているのに、そこでの目的とか生産性にそこまでフィット感を見出せていないから、休日2日間は溶かすように過ごしてまうわけやん。で、雑誌も動画コンテンツもそういう二項対立のうち後者にのみ向けて、具体的な内容はなんでもいいんだけれど十分な賑やかしにはなるような、そういうように設計されているものしか存在していない気がするというか

河東:うん。

松田:雑誌を読むと確かに新しい発見なりがあっておもろいねんけど、その発見って別に似たような他のものでもいいというか、同種の別のものに対して十分な排他性のあるものではないわけやん

河東:うんうん。

松田:それが気持ち悪くて、とりあえずのところ余暇的だと呼んだ次第。ただ、中垣には要は信念の話なんじゃないかとも言われていて、いずれにせよ何かしらしっくりくる説明があればと模索しているって感じ。

中垣:ちょっと紙とペン貸してくれへん?

河東:最近信念って言葉がよく出てくるけど、それはどういう意味で使われてんの?

松田:なんやろうな…自分のすべきことを主体的かつ排他的に決定してそれを実践しようと思っているくらいの意味で、信念があるとか無いとか言ってるかな。

「排他的」も「主体的」も、実はそろそろ飽きてます

c 持ってるジュエリー全部飽きました

河東:はいはい。

中垣:なんか最近四象限がマイブームやねんけど、これはどう? 横軸は生産性意識の強弱で、縦軸が緊張と弛緩で…

c 【図解】おとなの四象限

松田:はいはい。

中垣:まあ生産性意識というか、むしろ目的意識と言えばいいのかな。それが高くてかつ緊張している状態が右上で、これはいわゆるゾーン。で、その真逆の左下にあるのが目的意識が低くて弛緩してる状態、これは要はチルやと思うのね

Image: commmon

松田:うんうん。

中垣:それでこの2つは、どちらも心身が一致してる状態やねん。

松田:はいはい。

中垣:一方で松田にとっての雑誌はたぶん、目的意識はあるのに弛緩してる右下の状態やと思うねんな

松田:うん、なんかそんな気がするね。

中垣:…なんだけど、人々にとっての雑誌とか映画ってたぶん、チルと同じで目的意識なんて無いねん。ただ松田の場合はそこにも目的を見出していて、である以上のんびりやってるのは違うでしょ?ってなるんじゃないかな

松田:うーん、なるほどね。

中垣:そこのギャップはよく起こってる気がするで。そもそも誰も特に何も考えてないところでも、一人だけ目的的になってるというか

松田:まあ確かに、今言うところのチルはあんま好きじゃないかもしれない。

中垣:そういうことやんね。だから…サウナは左下やねんけど、たぶん瞑想は右上やねん。

松田:だからまあサウナでも何でもいいけど、ああいうフィット感を得ることが目的のそれは、主体性と積極性が要求される点が強調された方がいいんじゃないかと思うねん。

みなと:うん、そうだよね。サウナってかなり環境ありきなところがあるから、どうしても受動的になっちゃうんだけど、より主体的に経験しにいかないとダメだよね。

松田:せやねん。サウナ室と水風呂は、幼稚園児が箸の使い方を練習するためのガイド、あれと同じものでしかないねん。あくまでそれは補助線であって本質はそこにはないし、しかもかなり漸近できちゃう補助線だからこそ、それをもって体験の本質だと思ってしまうんだけど、でもそれは間違ってるねん。

みなと:確かにね。

松田:それこそ禅では、月を指す指をもって月だとしてはいけないって言うねんな。おれの言いたいのもそういうこと。

Source: commmon

c サウナなぁ…なんか違和感あるんだよな

松田:いやそれで言うと、目的意識の無いフォーカスという意味で瞑想は左上な気がするで

瞑想はJUST DO ITです。その目的によって肯定される手段ではなく、それ自体が目的だという方便さえ退けます。また、部分と全体の対立を超え無限遠方を円周とする円の中心に立つ体験は、弛緩に対置されるのではない究極の緊張とも言えるでしょう。

中垣:あー、なるほどね。確かに。

松田:だからあれや、おれは弛緩を認めたくないということや

河東:なるほどね。

われわれがけっして見落としてはならない一事がある——すなわち、貧の平和(けだし、平和はただ貧においてのみ可能である)は、あなた方の全人格の力をつくしてのはげしい戦いをたたかい抜いてのちに、はじめて得られるものである。怠惰や、放任安逸な心の態度から拾い集めた満足は、もっとも嫌悪すべきものである。そこには禅はない。ただ懶惰と、無為の生があるのみである。戦いは、はげしく雄々しく戦われなければならない。これなくしては、そんな平和が得られたにしても、それはみな偽物である。そこには深い基盤がないから、ひとたび嵐にあえば、たちまち押しつぶされてしまう。禅はまったくこの点を強調する。

Source: 鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫

鈴木大拙(1987)『禅』ちくま文庫

松田:でもなんか、それってちょっと神経質な気もするな。

中垣:いや、それは知ってたよ笑

c 強迫ピープルの生態

河東:でもさ、サウナって左下なん? サウナに目的意識はないん?

中垣:まあサウナは左下ちゃう? 河東の言うサウナの目的って、要は疲れをとるとか一日の緊張をほぐすみたいな話やんな?

河東:うん、単純にそういう話やな。

中垣:だから目的意識っていう言葉があんまり適切じゃない気はするよな…

松田じゃあ積極的目的意識っていうのはどう? 河東の言うサウナの目的って、どちらかというと消極的目的やと思うねんな。

中垣:あー、なるほど。確かにね、言い出したら別に旅行にだって目的はあるもんね。

松田:そうそう。つまり、いいところもあるくらいじゃだめなわけ。

河東:はいはい、なるほどね。

中垣:まあ…言うたら主体性が大事ってことになるんかな。

松田:だからおれの場合、雑誌を読み得るとしたら右上的に読むことになるのであって…つまりダウンジャケットを欲しいと思っているときにGO OUTの冬アウター特集を読むくらいしかないねんな

『GO OUT』2018年12月号, 三栄書房
Image: Amazon.co.jp

『GO OUT』2018年12月号, 三栄書房

中垣:そういうことやんね。

2021年3月28日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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