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ファッション 人生 思索

【シリーズ】今日のファッション #8

2 months

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松田:このショーツやねんけど…

みなと確かになんか珍しいの履いてるね。見た目かわいいよ、いい色だね。

松田:うん、これやっぱいい色やんね。今こういう色のパンツってあんまない気がするし、あとは裾がタイトなのもええねん。これは最近買った服の中では特に気に入っている…というか、「おれはこれをいいと思えるんだ」みたいな感触が特にあったやつやねん

みなと:はいはい。

J.Crew 9 Inc Cotton Chino Shorts Light Yellow – ILLMINATE

松田:これが何かって、待ち合わせに5分早く着いたからその5分でセカンドストリートに入って、一瞬で見定めて買った550円のショーツやねん

みなと:おおお…笑 すごいね。

松田:もうね、おれにとっては全てが最高やってん。今までずっと、同種の別の物の中から排他的に何かを選ぼうとしてきたわけだけど、これを選んだときはそれとは完全に違ったわけ

みなと:うんうん。

松田:ショーツが掛かっているラックをバーッと見て、一瞬でこれを手に取ってレジに向かったわけ。まあ結果としては意味分からん無名のパンツとかではなく、普通にJ.クルーではあってんけどね。

みなと:うんうん。

松田:個人的な印象としては、ラルフローレンとギャップの間くらいのブランドってイメージかな。まあアメリカ古着でよくいがちなやつやねん。アメリカらしさはありつつ、L.L.Beanとかほどにコテコテではない、結局はただの服って感じの。

みなと:なるほどね。

異論は認めます、松田は古着のこと何も知りません

コロナ禍で破綻したJ.クルーの、“あの時代のアメリカ”を表現したカタログは素敵だった。 – Pen Online

松田:なんしかおれは、元からただでさえ安い服が古着で叩き売られていたこれを着ることができて、すごく気分がいいねん。これはつまり、僕は今ラベリングを徹底的に捨て去る修行中なんですってことが言いたいねんけど…

みなと:うんうん笑

松田:要は『ファイト・クラブ』で家が爆発した彼の、「これはどこぞ家具で~」のシーンがあるやん?

みなと:あー…あったね。

Fight Club (字幕版) – Prime Video

c 人生の蓋然性

松田:あのシーンはもう見た目そのままにラベルが貼られていたけど、ああいうラベル集めのスタンプラリーというか、目の前の情緒とかディテールを捨象して単純化した世界で完全性を追求してる感じというか…まあ映画ではあれは無事爆発四散したけど、ああいうのが最近ほんまに気になるというか、もう嫌いで嫌いで仕方がないねん。

みなと:うんうん。

松田:あるいはそれこそシェーヌダンクルとか…おれの今の気持ちとしてはもう死んでくれって感じやねん。

みなと:笑

松田:あいつらは結局さ、どこまでも物が強過ぎるというか…もちろんクロムハーツにしてもシェーヌダンクルにしてもすごくいいとは思うねんけどね。

中垣:なんていうかその経済にコミットすることで、どこかで「ガハハ」と笑っているジジイがいる世界というか…まあ誰かの既得権益っぽいよね。

松田:そうそう。そんなものにコミットしても何にもならんというか、あれが良いっていうのは既に仕上がりきった価値観なわけ。まあ…確かに好きではあるねんけど、でもシェーヌダンクルにしたって、全てのサイズを厳密に着け比べてどれがベストかを模索したわけでもないし、やっぱちょっとね。

中垣:うんうん、分かる分かる

松田:だから結局ね、見城徹がバレンシアガを着て喜んでるのと本質的には変わらんのですよ。

Source: commmon

c 次はゴスい感じのジュエリー着けまくるわ

c シェーヌダンクルについて学ぼう

松田:なんなんやろうな…あとは前に住んでた赤坂の部屋とかもそんな感じやったな。ノイズの少ないCADみたいな部屋で、最低限の説明可能性の高い家具しか置いてへん感じ。

みなと:うん。

松田:でもね、ああいうのはもうちゃうなと。こんなことをしていても何にもならないというか…既にあるものの中から、予算配分の最適化の結果としてそれっぽいものを選んで手元に並べるみたいな、それをしてどうなるねんって話やねん。

c 人生はカタログギフトとちゃうんやで

みなと:うん、なるほどね。

松田:確かにもしかするとね、それによって見えるようになる世界は自分にとってはまだ見たことのない世界かもしれないけれど、人類単位で見たら誰かが既に見ている世界なわけ。既に存在するものしか選択肢にならない以上、バジェットの多寡で見える世界が決まってるからそれは当たり前やねん。

エストネーションの違和感はここです

みなと:なるほどね、うんうん。

松田:でもそうじゃないだろうと。既存の価値を追求してそれを手元に近づけて喜ぶんじゃなくて、もっと生々しい、具体中の具体を切り開いていくそのカッティングエッジに立って、まだ誰も見たことのないもの、誰も知らなかった価値を見出していくと。それが人生の本義じゃないのかと、最近もうほんまにそういう気持ち

みなと:なるほどね笑

松田:だからシェーヌダンクルなんてよくない…まあもちろんね、Āを指向するということは結局Aを指向するのに等しいから、それがなんであれ原理的に否定することはないんだけど。

みなと:まあそれはそうだね。

松田:こういうことを思ったきっかけっていうのがね…まあここしばらく、世間的にシェーヌダンクルが流行り散らかしているわけなんだけど。

みなと:うんうん。

松田:それでちょっと前に、Twitterで有名なファッションアカウントの人が、「やっぱりシェーヌダンクルは通っておきたいんだけど、純粋に物が好きだと言う自信も他人にそう思わせる達者さもないからどうしようか」みたいなことを言ってて…

sushiさんごめんなさい! ほんと許して! 悪意はない!

みなと:うんうん。

松田:ほんで「これにしましたぁ」とか言って、シェーヌダンクルのキーホルダーをアップしてたの。いやもうアホかと。

みなと:途中まではよかったのにね。

松田:せやねん。「そういう諸々込みで…でもやっぱ欲しいから着けます。なんと言われようと知りません」とかならよかったのに、これはレアだなんだと理由をつけてからにね。

みなと:笑

松田:しかもね、これは結構誰も知らんと思うねんけど、シェーヌダンクルのキーホルダーってかなり昔からあるモデルやねんな。なんなら白洲次郎だって同じシリーズを持っていたくらいで…

みなと:そうなんだ。

白洲正子(1999)『白洲次郎』(コロナ・ブックス)平凡社
Image: Amazon.co.jp

白洲正子(1999)『白洲次郎』(コロナ・ブックス)平凡社

c イギリスとかいうクソ階級社会

松田:ね、分かるでしょ? 数十年も前に、育ちが抜群に良くて学もある当時のドミーハーが身に着けちゃってるわけ。今さら2021年に誰が身に着けても、もう既に数十年遅れてるねん。

みなと:なるほどね。

松田:それを見てこうね、スタンプラリーみたいなファッションなんてクソだと思った次第なのね。まあ言いたいことはそんなところやねんけど…なんか発散的になっちゃったね。

みなと:まあまあ。

松田:でもなんしか、シェーヌダンクルやなんやと言ってラベルを追っかけ回すんじゃなくて、より手前の手前で自分がええと思ったジュエリーを、自分がええと思ったように着ける方がしっくりくるに決まってるねん。だからおれの右手は今東京で一番おしゃれやね。絶対に間違いない

それを言ったから今までの主張全部パーです

みなと:笑

松田:あとはそういう意味で、最近のアテリエ…まあなんか名前変わっちゃったけど、あそこのブログのバイブスはほんまええよね

みなと:なるほどね。

Wolf&Wolff

松田:あの「なんかもうファックなんですよね」って感じがすごくいい。だってやっぱおかしいもん、アガリの服なんて。そんなん、じゃあもう最初から服なんて着るなって話やねん。これは別に服じゃなくても、自分が真面目に取り組んでることでアガろうとするなんて、そんなんおかしいよ。

みなと:うんうん。

松田:なんかこうね、本当はもっと高い解像度でより生々しい人生にコミットできるはずなのに、その自由と責任を引き受けることなく、当たり障りのない選択をしてヘラーっとしてるのがね…まあ他人はともかく、自分はそういうことをしたくないと強く思ってるねん。

みなと:まあそうだよね。

松田:アガリとか「あとはこれさえあれば…」とかっていうのは、要は勝手に枠を決めちゃってるわけ。キャップがはまっちゃってて、そこで天井が決まっちゃってるわけやん。そういう、自分のポテンシャルを引き受けない感じは違うと思うというか…まあそういう感じ


みなと:そのTシャツ、前からよく着てるよね。

松田:うん。これはシュプリームが毎年ホリデーシーズンにいくつか出すTシャツの、それの2019年のやつかな。

みなと:へー。

Supreme holiday T-shirt 2019
Image: HIGHSNOBIETY

SUPREME’S PAISLEY BOX LOGO HOLIDAY T-SHIRTS DROP THIS WEEK – HIGHSNOBIETY

松田:まあなんやろう、子猫の柄かつアホでも分かるシュプリームっていう…つまり「これは大正義やん」とか思って買ったな。

みなと:笑

松田:これはね、慶応出身の人が着るラルフローレン、そういう感じで着るのがいいと思うねん。あの文脈で着られるラルフローレンって、わざわざディスるのもなんかちゃう感じあるやん?

みなと:制服みたいなね。

松田:そう、それはもうそういうもんやねん。だからこれも、そういう単純なものとして僕の人格を理解してくれと思っているとき、あんま複雑なことを考えたくないときに着るTシャツやね。このショーツと同じで「こういうのでいいんだよ」の気持ちで着てる。

みなと:笑

「猫じゃん可愛い〜」「でしょ〜」

松田:でもそう考えると今日の服装はちょっとすごいね。このTシャツはプロパーやけどそれでも7,500円とかやし、ショーツが500円でサンダルが4,000円…全身で12,000円やん

Image: commmon

みなと:大学生でもできるコーディネートだね…でもそのベルトは?

松田15万円くらいする笑

みなと:笑

松田:これはまだスタンプラリーをやってた頃に、「これさえ買えば…」とか思って買ったやつやね。

みなと:なるほど、でも結構気に入ってそうだよね。

松田:まあまあ普通に気に入ってはいるよ…てかこのやりとり、今日家出る前に姿見の前で一人でしてたわ。「全身ノリで買った服だけのプチプラコーデ、でもベルトこれしか持ってないんだなぁ」って。

みなと:なんだよそれ笑

松田:しかし15万円のベルトなんて意味分からんよな。そんな高いベルト買うなら、サイズ合ってるズボン買えよって話やねん。

みなと:笑

ズボン…

松田:何が550円のJ.クルーじゃって話やんね。そんなんじゃ贖罪できひんくらい重い罪を抱えてたわ

2021年7月31日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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白洲正子(1999)『白洲次郎』(コロナ・ブックス)平凡社
HeaderImage: commmon

白洲正子(1999)『白洲次郎』(コロナ・ブックス)平凡社からの1ページ。
ハーバード大学を卒業し綿貿易で巨万の富をなした父のもとに生まれ、旧制第一神戸中学校時代には父から買い与えられた外車を乗り回すなど、放蕩の限りを尽くしながら育った白洲次郎。写真のキーホルダーをはじめクロコダイルのアタッシュケースなどが、生前に使用していたエルメス製品として残されている。

白洲正子(1999)『白洲次郎』(コロナ・ブックス)平凡社