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個人と言っても二種類あってやな

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松田:ずっと前に言ってた「有名税…あるに決まってるやんけ」の話をしたいねん。

中垣:あー、その話聞きたかった。

松田:昨日、中垣が記事を送ってくれたやん。実存まで競争にかけたらあかん、ってやつ。

ネオリベの下では生きるために自分をどんどん追い込んでいかなくてはいけない。消費行動は貯蓄よりも投資。自分のスキルにしても、常に刷新していかなくてはならない。自己投資しないと生き残れないので、お金をかけます。エステに行ったり資格を取ったり、いい服を着たり、とにかく自分に投資をしなきゃいけない。不確実性をエネルギーにして競争に自分の実存までかけて打ち勝つこと。そういう行動様式がネオリベの時代に求められてきたのです。

Source: 幻冬舎plus

貧困に追い込むだけでなく、心まで蝕むのがネオリベの怖さ – 幻冬舎plus

中垣:あー、送ったね。

松田:全人格をマーケットに投入したらあかん、これほんまにそうやなと思ってん。

みなと:あー。

c 市場原理の競走馬の話

松田:それでさ、有名税なんておかしいとか言うけど、そもそも全人格を商品にしたお前も間違ってるぞ、みたいなことを考えててん

みなと:うんうん。

松田:確かに、有名税なんておかしいという主張にも一定の妥当性はあると思うんだけど、ちょっと順序がおかしいねん。まずはそこではないねん。

中垣:うん、そうやと思う。

もちろん、有名税という言葉によって、セレブリティに対して誹謗中傷をする側の権利を擁護する主旨ではありません。

松田:有名税なんておかしいっていう主張をセレブリティがしてるのを見てるのって…暴排条例で人権が侵害されているって言ってる暴力団関係者を見てるのと同じ気持ちやねん

みなと:笑

気の毒ではある

暴力団排除条例 – Wikipedia

松田:いやまあ分かるねんけど…でも順序がちゃうぞと。

中垣:うんうん、そうやんね。

松田:本来ネット上で叩かれたりするのって…今ここで思い出してるのは、ガイアの夜明け系の番組でユニクロが特集されたときに、ワイヤレスブラの商品レビューを分析して改良につなげている担当の社員さんが出ててんけど、そういう感じのことのはずやと思うねん。

みなと:あー、はいはい。

ユニクロ柳井会長の闘志に火がついた!新たな革命商品:ガイアの夜明け – テレ東プラス

松田:だから、芸能人が2chを見たときの気持ちもそれでいいはずやねん。レビューを確認してPDCA回す、それでいいんじゃない?って。

中垣:うんうん。

松田:…なんだけど、もちろんそうはいかないわけ。だって「私」の問題なんだから、全人格的な問題なんだから、それは当たり前やねん。つまりやっぱり、それを商品にしちゃってるのがそもそもの間違いやねん。

中垣:そうやね。ほんまその通りで…だからまあゴタゴタ言うなというか、そこで受けている批判というのは、マーケットに商品として並んでいる自分に対してのそれなんだっていう、そういう切り分けが必要だってことやんね。

松田:そうそう。で、そういう切り分けができないものをマーケットに投入しているのであれば、それは間違っているねん。ディスられてるのは芸名やし、フォトショで加工されたビジュアルやし…そう思えないのであれば、それはどこかでてめーが間違ってるのよ。

中垣:そうなんよね。なんか似たようなことをおれもそれすごい思ってて、ちょっと前から、今ここにいる「私」と、それが集まってできるローカル的な意味合いでの「みんな」と、もっと一般化された“““みんな”””の間にある隔たりとか…

みなと:うんうん。

c Nurture your own local

中垣:あるいは、基本的には個別具体的な今ここを生きればいいんじゃないかっていう前提がある中で、とは言え社会はそうはできていなくて、その社会と無関係には生きていけない以上、そこの接続をどうするかみたいなテーマがずっとあったと思うのね。

松田:はいはい。

c 好きなことだけしていたいんですが…

中垣:なんかね、福祉とか公共っていう言葉にも関わってくる話だと思うんだけど…それこそDaiGoの炎上の件とかも見ていて、れが良いだの悪いだのっていう話の中で、いい線いってる説明もあるねんけど、やっぱりどこまでも納得いかんところがあったのね。あれに対する批判としては、いき過ぎた個人主義がとかネオリベがみたいなことが言えると思うねん。

みなと:うん。

メンタリスト DaiGo – YouTube

中垣:…で、そこで言うときの「個人」って言葉、これが結構みそやなと思って。つまりそこで言われている個人は、社会に対置される個人やねん

松田:あー、はいはい。社会のn分の一としてのね。

我々はね、部分である前にひとつの全体なんですよ

中垣:そう、みんなその個人についてしか話せていなくて、実存としての個人については話せていないねん。だからDaiGoの言ってることも通用しちゃいそうになるわけ。

松田:はいはい。

中垣:で、それに対する批判もその意味でしか個人って言葉を使わないから、こっちとしてもいまいち納得できひんわけ。

みなと:なるほどね。

中垣:そういう意味で個人という言葉を使う以上、いき過ぎた個人主義もくそもないというか、そらそうなるだろうっていう。だって前提として社会の存在を想定する、そういう意味での個人って言葉の下では、個別具体的には知らないことについて話すことになるわけよ

松田:あー…うんうん。

中垣:それこそ前に禅の話でも出たけど、そういう意味での個人って、本当は問う必要すらないはずやと思うのね。なのになんで問題として立ち上がってくるんだろうって考えてて…

みなと:うんうん。

禅にとっては具体中の具体にこそ究極の抽象があるというわけだから、our people みみたいなものがあるとして、それは今ここをもって他にはないねんな

Source: commmon

c 禅に異議あり

松田:社会のn分の一としての個人と、いまここの私から始まる個人と…なんというか、射程を広げるためにその変換がどこかでおこなわれているんだけど、そのポイントをきちんと掴まないといけないよね。

中垣:そう。

松田:で…ちょっと話を戻すねんけど、例えば ピー はネット上ではまあディスられてると思うねんけど、中垣はそれを見てもなんとも思わへんわけやん?

中垣:思わへんね笑 でもそういうことやんね、別に実存をかけてあの仕事をしてたわけじゃないからね

松田:そうそう。それは社会のn分の一として取り組んでいたことだし…

中垣:それに言うなれば、そもそも実存は傷つかないわけよ

松田:あー、原理的にって話ね。そらそうやな。

みなと:なるほどね。

岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫
Image: Amazon.co.jp

岡本太郎(2017)『自分の中に毒を持て』青春文庫

中垣:おれ、すごいそれを思ってん。例えばおれが彼女を愛していたりいなかったり…まあ分からんけど、これは実存をかけた行為であったと。となるとそれを人からどう言われようが傷つかないわけ、だっておれの話だから。人からどう言われようがそんなこと知らんわけ。

松田:うんうん。

服装を2chでディスられた顔

中垣:で、悪意のあるディスに傷つくっていうのは、それは傷つくマーケット…って言うとちょっと変やけど、でも何か共有可能な場に出てきて、比較可能なものになるから傷つくわけ。

みなと:あー…そうだね。なるほどね。

c 肩書きはただのエンタメ、お前が何者であるかとは関係無い

中垣:だから実存は絶対に傷つかないと思うわけよ。

松田:私は傷ついたと思っている以上、そいつは実存を捉えきれていないと。

中垣:そうそう。それで ピー の自殺も結局はそういうことで、ただただn分の一の自分が傷つけられて、それで死んじゃったわけ。概念の上で殺されて、それがフィジカルにも及んだというか…

みなと:なるほどね。

中垣:だからそういう意味では、あれはほんまにえげつないなとも思うけどね。

松田:だから…まあ地に足が付いてなかったんやろうな。今ここじゃない方に完全に自己同一化をしていたというか。

中垣:ただまあね、あくまでその苦しさは想像を絶するとは思うよ。

c 虚構の人格

松田:でもそれで言うと、全人格的なものを商品としてマーケットに投入している以上、有名税はそらついてまわるでしょうということはもちろん言い得るんだけど、そもそもさらに手前の段階で、全人格的なものをマーケットに投入していない人だって自身の真相を捉えきれていないという点では、同様の危うさはあるよなというか…

中垣:うんうん、それは全然あるな。

2021年8月15日
Aux Bacchanales 紀尾井町

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